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映画「アイス・ロード」ネタバレ考察&解説 古き良きアナログ・アクション映画の良作!リーアム・ニーソン主演アクションでは屈指の出来!

「アイス・ロード」を観た。

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スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」や「96時間」シリーズのリーアム・ニーソンが主演を務め、「ダイ・ハード3」「ジュマンジ」「アルマゲドン」の脚本を担当し、監督としても2004年「パニッシャー」などを手掛けたジョナサン・ヘンズリーがメガホンを取ったアクション映画。事故により鉱山の地下に閉じ込められた26人の命を救うため、救出に必要な抗口装置を積んだ巨大トラックで、危険な氷の道を走り抜けるドライバーの戦いを描く。共演は「マトリックス」「ジョン・ウィック チャプター2」のローレンス・フィッシュバーン、「白鯨との闘い」のベンジャミン・ウォーカーなど。今回もネタバレありで、感想を書いていきたい。

 

監督:ジョナサン・ヘンズリー
出演:リーアム・ニーソンローレンス・フィッシュバーンベンジャミン・ウォーカー
日本公開:2021年

 

あらすじ

カナダのダイヤモンド鉱山で爆発事故が起こり、作業員26人が地下に閉じ込められた。事故現場に充満したガスを抜くための30トンもの救出装置をトラックで運ぶため、4人の凄腕ドライバーが集められる。鉱山への最短ルートは厚さ80センチの氷の道「アイス・ロード」で、スピードが速すぎれば衝撃で、遅すぎれば重量で、氷が割れて水に沈んでしまう。地下の酸素が尽きる30時間以内に装置を届けるべく、命がけでトラックを走らせる彼らだったが、事故には危険な陰謀が隠されていた。

 

 

感想&解説

上映時間109分の中に、これだけアクション映画として飽きさせない展開を盛り込んでくれれば、もう文句はない。リーアム・ニーソン主演のアクション映画ということで、近作だと「トレイン・ミッション」「スノー・ロワイヤル」「ファイナル・プラン」くらいのクオリティを想像していたが、本作はそれらの上を行くアクションの純度と濃度で楽しませてくれる”当たり作品”だった。ただし、VFXや観た事のないアクションシークエンスで魅せる作品というよりは、ポスターアートからも感じるとおり「80年代B級アクション映画」的な、アナログな手作り感がウリの映画だろう。俳優陣もリーアム・ニーソンローレンス・フィッシュバーンは有名だが、他の出演者はやや地味だし、ストーリー展開もいわゆる”ベタ”だ。だが劇場を後にする時には「面白いアクション映画を観た」という満足感が、十分に得られると思う。

本作は過去のアクション映画のオマージュに溢れているのも楽しい。その筆頭はジョルジュ・ルノー原作の「恐怖の報酬」だろう。過去に2回映画化されていて1953年のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督版と、1977年のウィリアム・フリードキン監督版がある作品だ。特にロイ・シャイダーが主演し、ウィリアム・フリードキンが監督したバージョンはアクション要素が特に強く、スリリングだ。500km離れた町から油田へと火災を消化する用途のニトログリセリンを運ぶため、2000ドルの報酬を目当てに4人の男たちが2台のトラックで出発するのだが、途中の山岳地帯やジャングルの中は悪路の連続。ニトロは少しの衝撃でも大爆発を起こしてしまう為、慎重にトラックを運転する一行だが、途中でボロボロの吊り橋や反政府ゲリラなどが現れ、彼らの行く手を遮るというストーリーである。本作「アイス・ロード」は”危険物を運ぶ”というよりは、凍った氷の道を重い積載量のトラックで走るという”運ぶルート自体が危険”というパターンではあるが、彼らが急ぐ理由が事故現場の救出であることや、悪路や危険な環境のためにトラックを飛ばせないという状況、複数人のチームでミッションをクリアしていくという設定など、脚本を書いたジョナサン・ヘンズリーは「恐怖の報酬」を確実に意識しているだろう。物語終盤に「吊り橋」が登場するオマージュシーンには、思わずニヤニヤしてしまった。

 

ここからネタバレになるが、他の作品を感じさせる場面としては、ダイヤモンド鉱山の掘削企業が実は”本当の悪”で、ラストに会社の重役に突然顔面パンチするシーンは「ダイ・ハード」における奥さんのホリーが、子供を危険にさらしたレポーターを殴る場面を思い出したし、重要キャラっぽく登場するローレンス・フィッシュバーンが序盤でいきなり死ぬ展開は、94年公開のスチュアート・ベアード監督「エグゼクティブ・デシジョン」のスティーヴン・セガールのようだった。また、どこまでも追ってくるニセ保険屋の暗殺者は、86年公開ロバート・ハーモン監督「ヒッチャー」のルトガー・ハウアーか、コーエン兄弟ノーカントリー」のアントン・シガー、はたまた初代「ターミネーター」あたりがモデルか?と妄想してしまうし、車両の連結がポイントになる場面などは列車アクションではあるが、トニー・スコット監督の「アンストッパブル」を思い出した。とにかく良い意味で、過去のアクション映画のエキスを凝縮したような作品になっているのである。

 

 

またリーアム・ニーソン演じるマイク・マッキャンの弟である整備士のガーティが、イラク戦争でのPTSD失語症を患っており、この兄弟が職場を転々としながら肩を寄せ合って生活している設定というのも良い。今回の仕事の報酬で兄弟は新しいトラックを購入して、もう一度人生をリスタートしようとしているのだが、劇中で彼らに次々と災難が降りかかるたびに、こちらは手に汗握って彼らを応援したくなる。また弟が天才整備士という設定なのも活きていて、劇中ではトラックが横転したり、氷の穴にハマったり燃料が漏れたりと、考えられるほとんど全てのトラブルが彼らを襲うのだが、この兄弟はいつもチカラを合わせて困難な局面をクリアしていく。中盤で兄マイクが怒りに任せて弟ガーティに手をあげてしまい、その後ガーティが氷水に落ちてしまうシーンで躊躇なく水に飛び込むマイクの「兄弟愛」には思わず胸が熱くなった。本作のリーアム・ニーソンは過去作のような「暴走する変人」ではなく、人間らしい感情を持つキャラクターなのである。

またリーアム・ニーソンがインタビューに応えているが、本作ではほとんどCGは無くスタジオ撮影もまったくない、カナダのウィニペグ湖を使っての100%ロケ撮影だったそうだ。アイス・ロードや雪も本物で、18輪トラックを実際に使っての撮影だったようだが、氷の下に潜るシーンもドライスーツを着ながらリーアム・ニーソン自らが行ったそうで、来年70歳を迎える俳優とは思えないアクティブさには驚かされる。またスクリーンで初めて観たが、アメリカ先住民の血を持つ「タントゥー」という役を演じたアンバー・ミッドサンダーの凛とした表情がエキゾチックで、他の役を演じている彼女もぜひ観てみたいと思わされる。またベンジャミン・ウォーカーが演じる悪役が本作では非常においしい役で、崖から車ごと突き落とされても、次のシーンではケロッとして爆薬を設置するような男で”悪役(ヒール)”として最高なのだ。アクションシーンと役者の演技がしっかりかみ合っているのも、本作の特徴だろう。

 

ただ、さすがに服のまま氷点下のカナダの氷下に潜ったら二人とも無傷はないでしょとか、ダイナマイトが近くで爆発したのにその時は氷は割れないのねとか、会社側は26人も仕事中の事故で犠牲者にしたらとてつもない補償金と調査になるけど、結局なにを隠蔽したかったんだっけ?、あとガスの警報機器を切ってた事実?とか、枝が刺さって重傷だったはずのタントゥーが最後はけっこう元気とか、地下に閉じ込められた作業員たちもほとんど息も絶え絶えだった割に事故現場から普通に歩いて出てくるし、吊り橋が落ちた後に兄マイクはどうやって合流したの?とか、よく考えたら正直突っ込みどころは満載ではある。ただ鑑賞している間はそれが気にならないくらいに映画に熱中させてくれるし、いい意味でこの”ユルさ”が、往年のB級映画っぽい雰囲気を醸し出しているの気がする

 

来年1月には「マークスマン」という新作が公開されるリーアム・ニーソン。予告編を観ると、年老いた元海兵隊の狙撃兵とメキシコ人少年がメキシコ麻薬カルテルから逃げるという、クリント・イーストウッドが作りそうな題材だと思ったら、監督はイーストウッドの製作会社マルパソ・プロダクションズに所属し、「人生の特等席」で監督デビューを果たしたロバート・ローレンツらしい。リーアム・ニーソンワーカホリックぶりには驚かされるが、この作品も楽しみだ。本作「アイス・ロード」は、”古き良き洋画アクション”が好きな方は、確実に楽しめる映画だと思う。個人的にはニーソン主演アクション作の中では、2009年「96時間」一作目に次いで面白い映画であった。特にシンプルなアクション映画を楽しみたい方には強くオススメしたい。

 

 

7.0点(10点満点)

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