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映画「アンチャーテッド」ネタバレ考察&解説 とにかく全体が軽くてスピーディだが、アンチャーテッドらしさに溢れた堅実な一作!トム・ホランドの肉体美も満喫できる!

アンチャーテッド」を観た。

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MCU版「スパイダーマン」シリーズで今や飛ぶ鳥を落とす勢いのトム・ホランドが主演を務め、プレイステーション用ゲームとして2007年からリリースされている「アンチャーテッド」を実写映画化した作品。トレジャーハンターである主人公ネイサン・ドレイクが、世界中の秘宝や古代都市の謎に挑むというアクションアドベンチャーシリーズだ。監督は「L.A.ギャング ストーリー」「ゾンビランド」「ヴェノム」などのルーベン・フライシャーで、近作では「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」の製作総指揮も務めている。共演は「ディパーテッド」「テッド」「トランスフォーマー」シリーズなどのマーク・ウォールバーグや、「デスペラード」「ペイン・アンド・グローリー」などのアントニオ・バンデラス、女性陣はソフィア・アリ、タティ・ガブリエルなどが出演している。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ホランドマーク・ウォールバーグ、ソフィア・アリ、タティ・ガブリエル、アントニオ・バンデラス
日本公開:2022年

 

あらすじ

ニューヨークでバーテンダーとして働くネイサン・ドレイクは、器用な手さばきを見込まれ、トレジャーハンターのビクター・サリバンから、50億ドルの財宝を一緒に探さないかとスカウトされる。ネイトは、消息を絶った兄のことをサリーが知っていたことから、トレジャーハンターになることを決意する。同じく財宝を狙う組織との争奪戦の末に、手がかりとなるゴールドの十字架を手にしたネイトとサリーは、500年前に消えたとされる幻の海賊船へとたどり着く。

 

 

感想&解説

ゲーム版「アンチャーテッド」は、PS3でリリースされていた第一作目の「エル・ドラドの秘宝」から「黄金刀と消えた船団」、「砂漠に眠るアトランティス」、さらにPS Vitaでリリースされた「地図なき冒険の始まり」、そしてPS4でのリリースとなった「海賊王と最後の秘宝」とスピンオフの「古代神の秘宝」まですべてプレイしている。そういう意味では、割と熱心なシリーズのファンだと思う。ゲーム一作目のキャッチコピーは「PLAYする映画」で、グラフィックレベルや演出、ストーリーとしても”アクション・アドベンチャー”として世界トップレベルでクオリティが高く、全世界で大ヒットしているシリーズだ。全編を通して世界中のジャングルや遺跡、砂漠などを冒険しながら、財宝を巡って歴史や秘宝、伝説の古代都市の謎を解明していくというゲーム内容で、TVCMにハリソン・フォードが起用されたこともあることから、作品の目指す世界観として「インディ・ジョーンズ」シリーズにオマージュを捧げているのは、明らかだろう。映画版の本作でも、飛行機で移動する際に地図に行先までの赤い線が出て、移動していることを表現する、”本家オマージュ”シーンがあるのは面白い。ゲームのプレイ時間としてクリアまでそれほど時間がかかるシリーズではないため、個人的にはいざ始めてしまうと面白すぎて止め時を失うのが唯一の難点という作品だった。

そんな「アンチャーテッド」が今度は”映画化”されるという事で、楽しみな反面、正直不安もあったのだが遂に公開となったので、初日に鑑賞。感想としては「あのゲームの世界観がしっかりと映画化された良作」だった。ただゲーム版の主人公ネイサン・ドレイクは、その容貌から30代後半~40代前半くらいの設定かと思っていたので、トム・ホランドでは外見が若すぎてミスキャスト、むしろサリー役のマーク・ウォールバーグがの方がしっくりくるのにと思っていたが、実際に映画化が企画された当初はその計画だったらしい。そもそも2009年ごろから映画化プロジェクトが動き始めたのだが、監督交代やコロナ禍の影響で実現化まで10年以上もかかった作品のようで、ルーベン・フライシャーが監督に決まり、主演がトム・ホランドだからこそ実現化した映画なのだろう。しかも本作は、どうやらゲームシリーズの前日譚にあたる内容だという事が解り、そういう意味ならトム・ホランドマーク・ウォールバーグのキャスティグも納得だ。ちなみにゲーム版サリーは"ポール・ニューマン"がモチーフになっている気がする。

 

ゲーム版「アンチャーテッド」の魅力は、絶体絶命のシチュエーションが何度も訪れる中、主人公ネイトが「ヤバイ、ヤバイ」と言いながらも圧倒的な身体能力でそれを回避していく気持ち良さと、マルコ・ポーロ」や「エル・ドラド」「アトランティス」といった史実の伝説をモチーフにしたストーリー設定、そして何と言ってもネイトとサリーといったキャラクター設定なのだと思う。お互いに軽口を叩きながらも、固い友情で結ばれている二人とそこに「エレナ」や、本作でも登場した「クロエ」といった女性キャラが絡み、財宝を狙う悪役たちと戦いながら謎を解いていくという、ある意味で”王道的な展開”と派手なアクションシーンが絡みあう快感だ。そして、そのポイントは映画化でもある本作でも十分に達成されていた。まずいきなりオープニングの飛行中の貨物機から荷物と一緒に空に投げ出されるシーンは、ゲーム3作目「砂漠に眠るアトランティス」のシーンからの引用だが、このいきなり大ピンチというシチュエーションは、シリーズ2作目「黄金刀と消えた船団」における”断崖絶壁で宙づりになった列車”で眼を覚ますオープニングシーンを強く想起させる。この始まって”いきなりピンチ”というシーンは、悪天候海上における船での銃撃戦から始まる4作目「海賊王と最後の秘宝」のオープニングなどにも引き継がれているため、猛烈に「アンチャーテッド」っぽい。ファンであればこの映画版のオープニングシーンの、「ヤバイ、ヤバイ」だけでもニヤリとできるだろう。

 

ストーリーの概要としては、少年時代に生き別れた兄サムを思いながら、ニューヨークでバーテンとスリをしている主人公ネイトに、以前サムと冒険をしたと語るサリーが近づき、「一緒に50億ドルの財宝を探さないか」と持ち掛けることで、二人の冒険の旅が始まる。財宝を手に入れる為に必要な「十字架」がオークションに出されるという事で、手始めにこれを盗む作戦に出るが、同じく財宝の行方を狙うモンカーダと、その手下ブラドッグが立ちはだかる。会場で大騒ぎを起こすネイトに乗じて、十字架を盗んだサリーは、もう一つの十字架を持っている女性クロエとバルセロナで合流し、クロエに十字架を盗まれたことで追跡劇を経ながらも、目的が一致した3人は手を組むことになる。手帳に書かれたヒントを元に目的の教会の地下と地上、二手に分かれて宝の在り処を詮索するが、途中でトラップの水責めにあったりブラドッグが現れたりとピンチに陥ってしまう一行。だがなんとか財宝のありそうな広間に到着するが、そこには塩の入った2mの壺があるだけだった。壺を割る事で新しい地図を発見するネイトだったが、クロエの裏切りにより殴られ気を失ってしまう。

 

ここからネタバレになるが、目が覚めるとサリーがおり、兄サムはすでに死んでいて見殺しにして逃げたと語られる。当然サリーに怒りを覚えるネイト。そして、この冒険から手を引くことを決意するが、クロエは実はモンカーダの手下であり、ネイトはもう一度サリーと共に兄の意志を最後まで継ぐことを決意する。そして、モンカーダの輸送機に忍び込む二人。ブラドッグはモンカーダを輸送機内で殺しクロエも殺そうとするが、なんとか地図を盗み出したネイトと共に、海上に脱出できたことでフィリピンの島に漂着した二人。そして兄サムから送られてきた大量の絵葉書の文字と地図、そして二つの十字架から本当の宝の場所を探し当てたネイトだったが、クロエはやはりネイトを裏切り先に宝の元へと出発してしまう。だがそれもすべてを読んでいたネイトのトラップであり、クロエはまったく別の場所を目指すことになる。そしてネイトは遂に宝の眠る海賊船へと向かい、追跡アプリのおかげでネイトに追いついたサリーと共に財宝を発見する。だがまたもブラドッグに追いつかれ、海賊船を空輸するヘリの上で最後のアクションバトルが始まる。ラストでは絶体絶命のネイトを、サリーが自らの宝を投げ出し救う事により、二人の間に友情が生まれ映画は終わる。

 

 

とにかく全てにおいて、カットが早くて軽くてテンポが良い。冒頭の兄サムとの別れのシーンや、サリーと決裂してから回復するまでの流れなど、全体的に人間関係の描き込みは相当アッサリしていて、ドロドロとした愁嘆場とはまったく無縁の作品だ。キャラクターが悩んだり悲しんだりするシーンは最低限に抑えられており、ほとんどの時間はアクションシーンに注がれている。これはヒロインとの関係においても然りで、なぜかフィリピンの島に漂流したネイトとクロエがいかにも高級そうなホテルに泊まるシーンがある。ネイトはなぜか上半身裸な上にクロエもかなり薄着でソファに座るショットを観て、「ここでまさかのトム・ホランドのラブシーンか?」と思いきや、ネイトはキスひとつしないで謎解きに熱中し、クロエは「寝落ちしそう」と広いダブルベットで先に寝てしまう。インディ・ジョーンズ」や「ロマンシング・ストーン」ではヒロインとのロマンティックなシーンが定番だけに、これは逆に新鮮だった。またアントニオ・バンデラス演じるモンカーダが、ナイフで首を掻っ切られる場面があるのだが、これもほとんど血の出ないマイルド演出になっており、このあたりはゲーム原作のビックバジェット映画の宿命なのだろう。また悪役のブラドッグも出演シーンが多い割には、極めて印象が薄い。モンカーダも含めて彼女たちの目的や背景などがまったく描かれないので、”よくある悪役”の域を全く出ていない。

 

だがこの「アンチャーテッド」という作品の中では、これくらいのバランスが良いのだと思う。本当にゲームをプレイしている感覚に近く、116分の上映時間の間はあっという間に過ぎるし、エンターテイメント映画としては十分に楽しい作品になっている。また久しぶりに明るくシンプルな”冒険映画”でもあり、鍛えられたトム・ホランドの肉体も含めて「スター映画」としても、とても魅力的だ。サリーがシンボルマークである髭ありで登場したり、兄サムの生存がほのめかされるエンドクレジットからもすでに続編は意識しているだろうし、本作は既に世界中で大ヒットしているので、ほぼ確実に続編は制作されるだろう。次回作はシリーズのヒロインである「エレナ」も登場するのではないだろうか。トム・ホランドの”老い”がゲームのネイトの設定に追いつくくらいに、息の長いシリーズになると良いと思う。ちなみに吹替はゲーム版と同じキャストらしいので、ファンにはそちらも好評のようだ。アンチャーテッド」の映画化としては、まずまず無難で堅実な一本だと言えるだろう。

7.0点(10点満点)