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映画「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」ネタバレ考察&解説 コメディ度が前作よりも大幅アップ!90年代リスペクトのコメディ娯楽映画!

ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」を観た。

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デッドプール」「フリーガイ」のライアン・レイノルズと、「パルプ・フィクション」「アベンジャーズ」のサミュエル・L・ジャクソンが共演した、2017年のアクションコメディ「ヒットマンズ・ボディガード」の続編。監督は前作に続き、「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」のパトリック・ヒューズ。共演は前作から続投の「デスペラード」のサルマ・ハエックや、「マスク・オブ・ゾロ」のアントニオ・バンデラス、「ミリオンダラー・ベイビー」のモーガン・フリーマンなど超豪華出演陣が揃っている。前作はNetflix独占配信で、”日本未公開”というやや不遇な扱いの作品だったが、本国アメリカではかなりのヒットを飛ばしており、今回は日本でも劇場公開に格上げされている。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:パトリック・ヒューズ
出演:ライアン・レイノルズサミュエル・L・ジャクソンサルマ・ハエックアントニオ・バンデラスモーガン・フリーマン
日本公開:2022年

 

あらすじ

以前とあるミッションでコンビを組んだボディガードのマイケルと殺し屋のダリウス。数年後、ダリウスの妻ソニアはマフィアに捕まった夫を救出するため、休暇中のマイケルを無理やり駆り出す。ダリウスの救出には成功したものの、彼らはなぜか謎のサイバーテロから世界を救う役目を負わされてしまう。新婚旅行気分のダリウスとソニアに対し、心身ともにボロボロのマイケルだが、彼らの前には大富豪アリストテレスが立ちはだかる。

 

 

感想&解説

前作「ヒットマンズ・ボディガード」は、コテコテの”アクション・コメディ映画”だった。ライアン・レイノルズサミュエル・L・ジャクソンの笑える掛け合いを聞きながら、大迫力のアクションも堪能できるといった、”80~90年代バディアクション”の要素が強い作品で、カーアクションやバイクアクション、爆破シーンも満載だ。しかもアクションシークエンスのレベルは、しっかりと2000年代以降でクオリティも高い上に、悪役はゲイリー・オールドマンが演じており、役者陣も文句ない。個人的には「リーサル・ウエポン」シリーズを思い出したが、主演がライアン・レイノルズサミュエル・L・ジャクソンだけあって、軽くて明るい作風の映画だったと思う。ストーリーもシンプルで、まさに”娯楽映画”という言い方がピッタリの作品だった。

思い返すと日本の2017年は、「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」「マイティ・ソー バトルロイヤル」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」など、アクション映画はシリアスでダークな路線より、笑って楽しめるポップなヒット作品が多い年だった気がするが、本作も確実にその流れにある作品だろう。ただそのあまりの安定感ゆえに、「引っかかり」があまりなく、監督パトリック・ヒューズの作家性が見えてくるような映画ではなかった。エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」の時にも感じたが、スター俳優をうまくコントロールしながら、おおよそ80点くらいを狙いに行っているような”職人監督”に徹した映画だと感じたのだ。もちろんそれは、こういうジャンルムービーにおいて悪いことではないのだが、やや印象に残りにくい作品だったのは否めないだろう。

 

さて、そして第二作目にあたる「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」なのだが、基本的には前作の路線を踏襲しつつも、個人的には前作よりもかなり好きな作品になっていた。前作を観ておいた方が、キャラクター設定やお約束のギャグは飲み込みやすいと思うが、本作だけで楽しめるのも良い。もちろん今回は映画館の大きなスクリーンで観たということも影響していると思うが、前作よりも更にコメディに振り切れていて、全編に亘ってギャグ満載の作品なのだ。特に本作のMVPは、サルマ・ハエックだろう。前作でも短い出番ながらも、強烈な印象を残した彼女が演じる”ソニア・キンケイド”だが、本作では主演男性2人を食わんばかりの活躍を見せる。とにかく本作の肝は、ライアン・レイノルズ演じるマイケルを、味方であるはずのサミュエル・L・ジャクソン演じるダリウスとソニアが、ひたすら肉体的に追い込む展開だろう。冒頭からマイケルがカプリ島でバカンスを楽しんでいると、ソニアによって訳も解らず銃撃戦に巻き込まれ、ダリウスの救出を依頼される。ダリウスが「マイケルを呼べ」とソニアに告げたらしいことから強引に巻き込まれ、それでもなんとかダリウスを救出したと思ったら、なんと「言い間違い」だったことが判るという展開は、いきなりバカバカしくも楽しい。ソニアがとにかく「Fワード」と下ネタ連発のキャラクターで、過去にサルマ・ハエックが演じた役柄の中でも、特に強烈だ。

 

例えば、新婚旅行の最中に仕事の電話をしているダリウスめがけて車で突進したかと思えば、たまたまその前にいたマイケルを躊躇なく轢き、そのままトランクに放り込まれるシーンには爆笑してしまうし、他にはソニアを銃弾から命がけで助けて気を失っていると、死んだと思われそのまま海に放り込まれたり、痛み止め薬だと思って飲んだら”抗うつ薬”のリチウムだったりと、その度にパターン違いのライアン・レイノルズによる「キレ芸」が見れて楽しい。他にもマイケルから自分の父親だと紹介されたのが、なんとモーガン・フリーマン演じる伝説のボディガードで、それをサミュエル・L・ジャクソンがツッコもうとすると、ライアン・レイノルズが爆笑のボケで返す展開は、ほとんどコントのようだ。前作からお約束の「フロントガラスぶち破り」も抜群のタイミングで入るし、ジェラートが”トラウマ”のマイケルを慰めに来る、ソニアのリアクションにも笑いが止まらない。アメリカンコメディ映画としても、とにかくクオリティが高いのである。

 

 

あとは80~90年代作品のサンプリングが随所に見られるのも本作の特徴で、アントニオ・バンデラスサルマ・ハエックの過去が表現されるシーンは、バンデラスの髪型が完全にロバート・ロドリゲス監督の1995年作品「デスペラード」(サルマ・ハエック出世作!)だったし、散弾を受けたマイケルにまったく弾が当たらない時の「弾が俺を避けている!」のセリフに対して、サミュエル・L・ジャクソンが「俺のセリフだ!」と返すのは、1994年「パルプフィクション」の”ジュールス”を意識してのシーンだろう。ゲイリー・マーシャル監督の1988年「潮風のいたずら」のパロディは、何度もセリフとして劇中で出てくるし、敵が頭から突っ込んだジュークボックスから流れる楽曲は、エイス・オブ・ベイスの「The Sign」で、まさに90年代を代表するポップソングだ。マイケルが「俺の好きな曲だ」と言うのも、曲に対してのリスペクトを感じる。

 

エンドクレジットの最後まで「ギャリーとヨハン」の不謹慎なギャグで笑わせてくるし、サービス精神満点で満足感は高い。ただ下ネタや流血・不謹慎ギャグも多いので合わない人がいる可能性もあるし、正直ストーリーに関してはほとんど覚えていないくらい無茶苦茶な上に、物語の強い推進力がある作品ではないので、本格アクション映画だと思うと期待ハズレかもしれない。ただ、本作はコメディ映画だと思って観るくらいがいちばん良い気がする。アクションシークエンスが印象的な作品は他にも山ほどあるのだが、逆にこれだけ笑わせてくれるコメディ作品は貴重だと思う。テンポが良いのと出演者の演技がとにかく楽しいので、エンタメコメディとしては十分に楽しめる作品だ。パトリック・ヒューズ監督の演出力は、本作によってコメディ方向に開花したと思うので、ぜひとも同じキャストとスタッフ陣で第三作目が観たい。

7.0点(10点満点)


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