映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は253本目。タイトルはアラン・レネ監督による、1964年公開作品「去年マリエンバートで」。特典映像としては「予告編」だけだが、封入特典として遠山純生氏執筆による「8Pブックレット」が付く。作品としては「夜と霧」「二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)」で有名な、フランスの映画監督アラン・レネがメガホンを取ったサスペンスだ。1961年ヴェネチア国際映画祭では、「金獅子賞」を獲得している。ストーリーとしては、凝った装飾の施されたブルジョワジーが集まる豪華なホテルで、”主人公の男X”が”女A”と再会する。Xは「去年マリエンバートで会いましたね。」とAに語りかけるのだが、Aはその事をまったく記憶していない。しかもXは彼女に駆け落ちを提案していたというのだ。しかしXが執拗に去年の出来事を聞かせることによって、Aはおぼろげな記憶を思い出していく。だが女AにはMという夫がいたという内容で、これだけ聞くとシンプルな作品に思えるかもしれないが、本作はとてつもなく難解な映画としても有名で、僕も一度観ただけではまるで理解できなかった。
脚本のアラン・ロブ=グリエが、黒澤明監督の「羅生門」に触発されて作られた作品ということだが、とにかくシーンとシーンが繋がっておらず、キャラクターが着ている服装もコロコロ変わるため、時系列が理解できなくなってくる。映っているこのシーンが、”回想なのか?現実なのか?”が分からないのだ。さらにセリフ回しも独特で、意図的にリフレインが続く。クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」は本作から影響されているらしいが、「夢や虚無」をテーマにしているのが共通点かもしれない。ただ本作に比べれば、「インセプション」の方が100倍わかりやすいだろう。あまり理屈やロジックで鑑賞する作品ではないのだと思う。ただ、画面構成はため息が出るほど美しく、ココ・シャネルが衣装をデザインしたことでも有名だが、衣装やセット、カメラワークなどは洗練されている。特に「4Kデジタル修復版」のブルーレイだったこともあり、ウットリとこの迷宮のような世界観を眺めていたら、いつの間にか映画が終わっていた感じだ。極めて前衛的だが、不思議な魅力のある作品である。
監督:アラン・レネ
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジョルジオ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ
日本公開:1964年