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映画「ジュラシック・ワールド3/新たなる支配者」ネタバレ考察&解説 今までの作品で良かった点が全て消滅している、残念過ぎる最終章!あの終わり方には怒り心頭!

ジュラシック・ワールド3/新たなる支配者」を観た。

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スティーヴン・スピルバーグが監督し、1993年から始まった世界的メガヒットシリーズ「ジュラシック・パーク」の遂に最終章が公開となった。本作の監督は2015年「ジュラシック・ワールド」に引き続き、コリン・トレボロウが再登板。「ジュラシック・パーク」初期3作でアラン・グラント、エリー・サトラーというキャラクターを演じた、サム・ニールローラ・ダーンが21年ぶりに再登場することも話題になっている。もちろん「ジュラシック・ワールド」シリーズの主演クリス・プラットブライス・ダラス・ハワード、イアン・マルコム役のジェフ・ゴールドブラムらも全員出演し、シリーズのラストを締めくくっている。シリーズ生みの親であるスティーブン・スピルバーグは製作総指揮を担当。若干ネガティブな意見も多い本作だが、個人的な感想はどうだったか?今回もネタバレありで感想を書いていきたい。


監督:コリン・トレボロ

出演:クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードサム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラム

日本公開:2022年

 

あらすじ

ジュラシック・ワールドのあった島、イスラ・ヌブラルが噴火で壊滅し、救出された恐竜たちが世界中へ解き放たれて4年。人類はいまだ恐竜との安全な共存の道を見いだせずにいる。恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女、メイジーを守りながら、人里離れた山小屋で暮らしていた。そんなある日、オーウェンは子どもをつれたブルーと再会。しかし、その子どもが何者かによって誘拐されてしまい、オーウェンはクレアとともに救出に向かう。一方、ある目的で恐竜の研究をしている巨大バイオテクノロジー企業のバイオシンを追っていたサトラー博士のもとには、グラント博士が駆け付け、彼らはマルコム博士にも協力を求める。

 

 

感想&解説

2015年の「ジュラシック・ワールド」とその続編「炎の王国」は、2001年に「3」で終わった”パーク”のシリーズを、見事に蘇らせた良作だったと思う。それはアクション演出の既視感はありつつも、恐竜を”娯楽や戦争兵器”として利用しようとする人間への警告というメッセージと、オーウェンとブルーという人間と恐竜との友好関係を対比することで、異種族間の友情というポジティブな面が描かれていたからだ。特に「炎の王国」は、エンディングに”恐竜が世界に放たれる”という意外なサプライズが用意されており、娯楽大作として素晴らしい作品になっていたと思う。それだけにその続きを描く完結編は楽しみにしていたのだが、残念ながら個人的には大いに不満が残る映画だった。あの終末感のあるダークな終わり方の続きを本作では、まったく描いてくれていないからだ。おかげで上映時間147分中、ほとんど心が動かない作品であった。

まず「ジュラシック・パーク」初期3作で登場したアラン・グラント、エリー・サトラー、イアン・マルコムというキャラクターを演じた、サム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラムが21年ぶりに共演することが本作の大きなウリになっているが、当然「ジュラシックワールド」シリーズの続編でもあるため、オーウェンとクレアを演じるクリス・プラットブライス・ダラス・ハワード、メイジー役のイザベラ・サーモンらも登場する。よって、描かなければいけない主役級のキャラクターが単純に増えたことにより、彼らの見せ場を作るためにストーリーが分岐し過ぎてて、全体として映画が散漫になってしまっている。さらに特に序盤は話が良く分からなく、前作のラストで恐竜たちを野に放ってしまった為に、「人間」と「恐竜」が混在する世界になり、それにより人間が被害に遭っていることは冒頭に説明されるのだが、「バイオシン社」という大会社がイタリアのドロミーティ山脈に恐竜の保護施設「バイオシン・サンクチュアリ」を設立したというのはわかったが、どの程度その施設に恐竜たちが集められており、世界中ではどうなっているのか?が分からず、いきなり頭が混乱してくる。この世界においてオーウェンとクレア以外の人間にとって、恐竜の存在とは敵なのか?保護すべき対象なのか?が不明確なのである。


また、14歳になったメイジーの行動をオーウェンとクレアが制限している描写があるのだが、これも良く解らない。「人間は信用できない」というオーウェンのセリフがあったが、これは前作で恐竜を兵器のように扱おうとした組織がいた為だろうが、だからといってオーウェンとクレア以外の人間に会わせないという理由にはならないだろう。メイジーがクローン人間だからかもしれないが、その秘密がバレる事の影響度もこの時点では謎だ。また、かつてオーウェンと共にラプトルを調教した同僚のバリーがいきなりCIA局員になっていた流れも性急だし、さらわれたメイジーを追って訪れた地中海のマルタ島における闇市場でのドタバタや、女性パイロットであるケイラがいきなり仲間になる展開も、「これ今、どうなってるんだっけ?」と理解が追いつかない。とにかく話運びが雑で、彼らの行動に説得力がないので感情が映画の中に入っていかないのだ。更にその後、飛行機が墜落しても雪の降っている氷点下の氷に落ちても、傷ひとつ負わない上に全く寒がりもしないオーウェンは、いくら何でも無敵すぎる。


これらのシーンがあるお陰で、その後で主役級のキャラクターがどんなに窮地に陥っても全くスリルを感じなくなる。「どうせ助かるだろう」と思ってしまうのだ。また飛行機が墜落する際にオーウェンとクレアは一旦別れてしまうが、またあっさりと合流できるご都合主義な展開も、彼らが行動しているのがほとんど裏庭くらいの範囲の話に感じてしまい、とても世界が狭く感じられる。それと同時に、バイオシン社が巨大イナゴ発生の原因になっている事を突き止めるアラン、エリー、イアン側の話が平行して語られる為、ストーリーがあっちこっちに飛んでしまい、観ていてどうにも集中力を欠くのも問題だ。恐竜が跋扈しているこの世界においてバイオシン社のやろうとしている目的も、映画を最後まで観ても良く解らない。恐竜を捕獲し施設に集めた結果、イナゴに襲われない種子を作って拡販したかったということなのだろうか??繰り返しになるが、”恐竜”の存在が人間に与える影響をまるで描かないので、前作で広げた”ジュラシックワールド”という大きな規模の風呂敷に対して、誘拐された少女と恐竜の子供を助けるだけの、非常に”小さな作品”になっていると感じるのである。

 

 


とにかく構成している設定のひとつひとつに説得力がないし、登場キャラクターの性格的な色付けも変化が無いために意外性もなく、最後までドキドキも驚きもない。最初に登場した通りのキャラクター設定がずっと続くので、悪い意味で観客への裏切りがまるでないのである。ここからネタバレになるが、ラストの巨大恐竜二体が闘う展開も、果たしてシリーズ何回目なのだろう?と感じる。そして、最も納得がいかないのはラストの着地だ。結局、巨大イナゴが繁殖しなくなったから問題解決のようなエンディングだったが、恐竜たちが世界に放たれた事への解決がまったくされていないのは、どういう事だろうか?「人類は恐竜と共存していくべき」というような論調だったが、それが成立するような人間側の具体的な対策が示されないので、「それは無理だろ」と素直に思ってしまう。恐竜は理屈も話し合いも通用しないからこそ、シリーズ過去5作に亘って何百人もの犠牲者が出ていたのではないだろうか。唯一ブルーと友情を交わせたオーウェンが、人間側の代表として解決方法を導いていくなどの展開がないと、これでは完全に”投げっぱなし”の終わり方に感じてしまう。「炎の王国」のラストで感じた、ダークなワクワク感がすべて台無しだ。厳しい言い方になってしまうが、こういうジャンル映画でスリルが無くなってしまったら、存在価値がないのでは?と思ってしまう。


恐らくこの「新たなる支配者」を持って、「ジュラシック・シリーズ」は映画としての寿命が来たのだと思う。素直に恐竜の存在感で驚けたのは、1993年の初代だけで、それ以降は見せ方や設定を変えながら延命してきたが、本作を観てそれももう限界だという気がした。さらにこれはある程度は仕方がないが、基本的には恐竜でしかスリルが作れないという縛りも演出のマンネリ化を促進させている。いつも観客を驚かすのは狂暴な恐竜の登場だけだ。ただ多種多様の恐竜が登場するので、”恐竜好き”の方だけは楽しめる作品なのかもしれない。そもそも邦題である「新たなる支配者」というのも、何を指しているのかピンとこないし、原題である「Dominion」も「人間と恐竜は共存できる」というメッセージの作品のタイトルとしては、齟齬があるような気がする。何か全体的にチグハグな映画だと感じてしまうのだ。この夏の超大作だったが、正直個人的にはかなり厳しい感想になってしまった。期待していた作品だっただけに残念であった。

4.0点(10点満点)