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映画「RRR」ネタバレ感想&解説 最先端のインド映画としてラストの決着だけが惜しい!問答無用の超娯楽大作の力作!!

「RRR」を観た。

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大作インド発アクションの代表作となり、日本でもロングランヒットとなった「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督が手掛けた、超大作アクション。公式サイトには2022年インド映画世界興行収益No.1、インド映画歴代3位、インド映画史上最高の製作費97億円とド派手な文句が並んでいる上に、フィルマークスの評判もすこぶる良い。出演は「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.、「マガディーラ 勇者転生」のラーム・チャラン、「ガリーボーイ」のアーリアー・バットなど。他にも「ザ・ウォーカー」「マイティ・ソー」のレイ・スティーブンソンや、「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」でエルザ役だったアリソン・ドゥーディが、英国側の悪役を憎々しげに演じているのも注目だ。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:S・S・ラージャマウリ
出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr.、ラーム・チャラン、アジャイ・デーブガン、アーリアー・バット、レイ・スティーブンソン
日本公開:2022年

 

あらすじ

1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。

 

 

感想&解説

S・S・ラージャマウリ監督の「バーフバリ」シリーズ(「伝説誕生」「王の凱旋」)は、アクション映画史上に名を残す傑作だと思う。個人的にも大好きな作品で、劇場でも”応援上演”も含めて3回鑑賞しているし、もちろんブルーレイも購入した。「マハーバーラタ」というインドの大叙事詩を基に組み立てられた「王位継承」を巡って争う兄弟の話なのだが、インド映画らしい歌と踊りの要素を追加しながら、ファンタジー要素と痛快なアクションをじっくり煮込んだ様な映画で、ド直球なエンターテイメントとして誰もが楽しめる作品になっていた。さすが年間で2,000本ちかくも映画が公開されるインドで、歴代最高の興行収益を叩き出した作品だけのことはある。主人公のバーフバリだけではなく、カッタッパや暴君バラーラデーヴァ、国母シヴァガミといった忘れられないキャラクターたちの設定やセリフも素晴らしく、鑑賞後はしばらく「バーフバリ」の世界観から抜け出せなかったのを覚えている。以前はインド映画といえば、「きっと、うまくいく」「PK」「ムトゥ 踊るマハラジャ」など”ヒューマンドラマ&踊り”のイメージだったが、この「バーフバリ」によって強烈にアクション映画の印象が刷り込まれた訳である。

そんなS・S・ラージャマウリ監督の新作である、「RRR」(アール・アール・アール)が日本で公開になったのだが、これは「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字から取ったタイトルらしい。ただ一説によると、監督のS・S・ラージャマウリ(Rajamouli)、主演のラーム・チャラン(Ram Charan)とNTR Jr.の名前にある、「R」を3つ重ねた仮タイトルとして企画がスタートしたという話もあり、監督のプロジェクトへの愛着を感じるエピソードだ。本作「RRR」も主人公であるラーマ・ラージュとコムラム・ビームは、どちらも独立運動における実在の英雄として、今でもインド国内では有名な人物のようだ。ただ史実ではこの2人は直接出会うことはなく、キャラクター造形のかなりの部分は創作のようだが、「バーフバリ」も含めてインド史実からインスパイアされて映画を作るのが、S・S・ラージャマウリ監督の持ち味なのだろう。また、それだけインドには長い歴史と語るべき人物が多いのかもしれない。本作のエンドクレジットにも、ラージャマウリ監督自身がカメオ出演しつつ、インド各地における歴史上の人物たちが順番に紹介されていたのが印象的だ。「RRR」の時代考証は滅茶苦茶らしいが、世界中の観客に向けて強烈に”インド映画の勢い”をアピールをする作品になっていると思う。

 

では作品の内容はどうだったかと言えば、やはり「バーフバリ」の延長線上にある、ド直球のアクション映画で凄まじい熱量の作品だった。相変わらず、重力や物理法則などは完全無視で、キャラクターたちはどんなに高い場所から落ちても平気だし、ジャンプ力も半端ない。虎とは素手で戦ってしまうし、回転しながら宙だって舞える。もちろんハリウッド映画でもマーベルやDCコミックスのヒーロー映画で同じような描写はあるが、本作はもっとアニメやゲームの表現に近い気がする。画面のエフェクト効果も含めて、全体的に派手で大仰なのだ。いわゆるクリストファー・ノーランが手掛ける一連の映画のように、フィクションでありながらも映像的なリアリティや現実感を追求する方向ではない。上映時間はなんと179分と3時間近いのだが、それでも本作においてはそれがマイナスになっていないのも、すごい。作り手がやりたいことを全部ツッコんだら、結果的にこの時間になってしまったという感じで、退屈する暇がまるでないのである。かといって、ストーリーの起伏やツイストで引っ張る作品ではなく、すべてアクションだけで強引に観客の興味を持っていく。2人の人物がバストアップで切り返すだけといった退屈な画面は、1カットもないのである。

 

 

序盤から1万人対1人というメチャクチャな格闘シーンはあるわ、ジャングルで野生の虎に追いかけられるチェイスシーンはあるわ、燃えながら落下する列車から子どもを救う空中スタントはあるわで、今までに観たことのないレベルの”インフレ・アクション”が続き、常に驚愕させられる。10分に一度、クライマックスシーンを入れるというのが監督の狙いだったらしいが、本当にその通りの映画になっているのである。それにしても、このアイデア量と観客を楽しませようというサービス精神には感服するしかない。明らかに前半の大きな見せ場であろう、イギリス総督府で開催されるパーティで披露される”ナートゥダンス”の場面は、あまりの幸福感に顔がニヤケっぱなしであった。身体が躍動している映像を観るという映画的な快感に溢れており、エンドクレジットのダンスシーンも含めて何度も観たくなる。終盤の爆笑”肩車”シーンなど、あまりのバカバカしさに良い意味で呆れてしまうだろう。本作もブルーレイ購入は確定だ。しかもこの驚きと快感が、文字通り3時間ノンストップで続くのである。こんな作品は他には観た事がない。

 

もちろん、不満がないわけではない。ここからネタバレになるが、こういう大味な娯楽作品であることを加味しても、ストーリーはかなりご都合主義で、細かい突っ込み所を挙げていけば本当にキリがない。本来は英国側のジェニーが叔父を含めて全員を殺され、領事館も破壊されているにも関わらず、ラストはビームと何事もなかったようにくっ付いているし、冒頭のマッリ誘拐のシーンで殺された(ように見えた)、マッリの母親が最後では普通に生きていたり、ラーマの許嫁であるシータとビームたちがあまりに都合よく出会ったりと、大味だなぁと思う場面は多い。だが、最も気になるのはラストの決着かもしれない。ビームが公衆の面前でむち打たれながらも、暴力で支配しようとするイギリスに屈服することなく、絶対に膝をつかずに母国を讃える歌を歌うシーンがある。それを見ていた民衆は、暴力だけではない体制への反抗もあるのだと気づくシーンは、インドを独立に導いた「マハトマ・ガンジー」の思想を思わせる。

 

第一次大戦時に、インドにおける言論や政治活動の自由を奪った「ローラット法」を制定したイギリスに対して、「非暴力、不服従」を宣言して民衆を導いたのがガンジーだった訳で、この場面はそれを想起させるのだ。だが実際は、"非暴力"を感じさせる場面はその後では登場せず、ラストもあっさりと英国スコット総督を銃によって撃ち殺している。もちろん、ここまでイギリス側の非道な行いの数々が描かれている為、こういう決着が求められるのは当然だとは思うが、前述の歌による非服従のシーンが素晴らしかっただけに、この暴力での安易な解決方法はやや惜しいと感じてしまった。ほんの少しでも良いので、理不尽な暴力に打ち勝つ方法は、単なる暴力による復讐だけではないというメッセージがあると、さらにインドが発信する最先端のエンターテイメント作品になったと思う。「インド人の命は一発の弾丸の価値すらない」というスコット総督のセリフがあるが、その弾丸でスコット本人を射殺するという展開には、少し危うさを覚えたのは事実だ。

 

とはいえ細かいところを気にしなければ、娯楽映画としては相当のクオリティだし、確実に楽しめる作品だと思う。3時間の上映時間も鑑賞前は躊躇してしまうが、上映が始まればあっという間に過ぎていく。とにかくこれだけのアイデアの濃度と熱量で、ひたすら観客を圧倒してくる作品は、ハリウッド映画の超大作にもないだろう。これこそ劇場で鑑賞すべき作品だと思うので、できるだけ大きなスクリーンでの鑑賞をオススメしたい。S・S・ラージャマウリ監督渾身の最新作でもあり、インド映画業界の総力戦という意味でも、本作は大いに観る価値のある一作になっていると思う。

 

 

8.0点(10点満点)