映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は302本目。タイトルはジャック・ベッケル監督による、1962年公開作品「穴 LE TROU」。特典映像としては、特になし。作品としては、パリにあるサンテ刑務所で、1947年に実際に起きた脱獄事件を映画化した作品で、この事件の実行犯の一人であるジョゼ・ジョヴァンニが発表した小説を原作としている。またロラン役として出演している俳優もこの事件の脱獄囚ということで、作品内のリアリティは凄まじい。監督は「現金に手を出すな」「モンパルナスの灯」などが有名なジャック・ベッケル。フランソワ・トリュフォーをはじめとするヌーヴェルヴァーグの監督たちに敬愛された、名匠フランス人監督の一人である。公開前の1960年2月に亡くなっており、本作が遺作となっている。「穴 LE TROU」は脱獄映画の傑作とされているが、その評価通りに滅法面白い。
パリのラ・サンテ刑務所に収監されているある4人の部屋に、ガスパルという若者が5人目として入所してくる。そこには最年長のボスラン、脱獄のプロのロラン、無愛想なマニュ、そして寝てばかりのジョーという4人の個性豊かな男たちがいた。実はこの4人は前々から脱獄計画を立てており、最初はガスパルを警戒していたものの、協議の結果彼を脱獄のメンバーに加えることにする。こうして5人の男たちはひたすら部屋に穴を掘り進めていき、それに伴って彼らの絆は深まっていく、というストーリーだ。モノクロの画面の中、BGMはほとんどなく、ひたすら床下の土石を砕く映像と音だけが続く長回しシーンなどは独特の緊迫感があるし、全編を通して相当スリリングな作品だと思う。また単純な脱獄アクションになっていないのも特徴で、ラストのあの展開と最後のセリフからは色々な展開が深読みできるのも面白い。凝ったVFXや特殊効果などない60年代初頭のフランス作品でありながら、映画としての完成度はすこぶる高い傑作だ。
監督：ジャック・ベッケル
出演：ジャン・ケロディ、フィリップ・ルロワ、ミシェル・コンスタンタン、マーク・ミシェル
日本公開：1962年
