映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイレビュー&感想Vol.325:「太陽はひとりぼっち」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は325本目。タイトルはミケランジェロ・アントニオーニ監督による、1962年日本公開作品「太陽はひとりぼっち」。「情事」「夜」「欲望」などで有名な、イタリアの名匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督による恋愛映画だが、鑑賞後に奇妙なインパクトを残す作品でもある。ちなみにアラン・ドロンが出演していた「太陽がいっぱい」とはタイトルが似ているが、何の関係もない。監督のミケランジェロ・アントニオーニは、「恐怖の報酬」「悪魔のような女」で有名なフランスの監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーに続いて、世界三大映画祭全ての最高賞を獲得した史上2人目の映画監督でもあり、本作は1962年の第15回カンヌ国際映画祭で「審査員特別賞」を受賞している。主演は「太陽がいっぱい」「サムライ」のアラン・ドロンと、60年代アントニオーニ監督による「愛の不毛三部作」の主演女優モニカ・ヴェッティ。モニカ・ヴェッティは2022年に90歳で死去している。オープニングでミーナが歌う主題歌「太陽はひとりぼっち」は、日本でも大ヒットした。

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冒頭、モニカ・ヴェッティ演じるビットリアが婚約者と延々と別れ話をするシーンがなんと18分も続き、いきなり困惑させられるのだが、このビットリアがなぜ彼と別れたいのか?は説明されず、本人も「理由は解らない」というセリフがある。ただ毎日が退屈で満たされない女性なのだ。そんな彼女が、投資家である母が通う証券取引所で株式仲買人の青年ピエロと出会い、彼と親密な関係を築こうとするが、というストーリーだ。アラン・ドロン演じるこのピエロという男は、とにかく金への執着が強く、ビットリアとは対照的に描かれている。そして本作をもっとも特徴付けているのは、なんといってもラスト7分間の描写だろう。今までストーリーを引っ張っていたキャラクターたちがまったく登場せず、ひたすら無人の寒々とした風景だけを映したシーンである。株の暴落シーンにおける世界の不安定さや、直前に「核戦争の恐怖」について書かれた新聞記事が登場していたが、60年代という冷戦時代における危機感、そしてビットリアの人生における虚無感などが見事に表現されており、このラスト7分でこの映画の印象を一変させている。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「情事」も素晴らしい作品なので、いつか紹介したい。


監督:ミケランジェロ・アントニオーニ

出演:アラン・ドロン、モニカ・ヴェッティ、フランシスコ・ラバル

日本公開:1962年