映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.353:「クローズ・アップ」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は353本目。タイトルはアッバス・キアロスタミ監督による、1995年日本公開作品「クローズ・アップ」。特典映像としては特になし。イランの映画作家であり、「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」「トスカーナの贋作」などで知られるアッバス・キアロスタミ監督が、実際に起きた”映画監督のなりすまし詐欺事件”をテーマに、実際の事件の当事者たちをキャスティングして作った異色作。さらに詐欺事件の公判の様子を、映画公開を前提として撮影するなど、日本では考えられないような内容になっており驚かされる。実際の犯人であるサブジアン、被害者家族のアーハンハー家、名前を騙られた映画監督のマフマルバフまでが実名で本人出演しており、さらにそのサブジアンとマフマルバフが対面する場面さえある。

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映画青年サブジアンはバスで隣に座った年配女性から話しかけられ、思わず自分は有名な映画監督のモフセン・マフマルバフだと偽ってしまう。女性はその嘘をすっかり信じ込み、彼を自宅に招待し家族一同で彼を歓迎する。サブジアンは辛い日常を忘れる為に、自分が有名映画監督という嘘が止められなくなってしまい、ついには不審に思った家族の通報によって詐欺罪で逮捕されてしまうというストーリーだ。この実話に興味を持ったキアロスタミ監督は、事件の顛末を当人たちに演じさせることにより、当時の心境や状況を克明に描いていく。終盤の”あるシーン”は、完全にドキュメンタリックな撮影をしており、隠しマイクによる録音が失敗して音声が途切れたりと、非常に生々しい。監督はあまりに特殊な内容の作品であるため、出演陣がいつ「もう降りたい」と言ってくるか心配で撮影中は眠れなかったらしいが、アッバス・キアロスタミ監督の作品群の中でも非常に特殊でありながらも、評価の高い作品だろう。

 

 

監督:アッバス・キアロスタミ
出演:ホセイン・サブジアン、ハッサン・ファラズマンド、モフセン・マフマルバフ、メフルダード・アーハンハー
日本公開:1995年