映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は509本目。タイトルはピート・ドクター監督による、2015年日本公開作品「インサイド・ヘッド」。特典映像としては、「南の島のラブソング」「ライリーの初デート?」「ピクサーへの道:『インサイド・ヘッド』の女性キャスト&スタッフ」「感情たちをキャラクターに」「製作の舞台裏」「未公開シーン」「劇場予告編」で計107分が収録されている。「製作の舞台裏」ではピート・ドクター監督が「物語は不思議だ。本作に最初から関わっている僕にも、この物語がどこから生まれたのか分からないんだよ。全てのピースがうまく合わさると、初めから完璧な物語だったと錯覚しやすいが、実際は違うんだ。8~9歳ごろの娘は無邪気で何にでも興味津々だった。だが少し年上になると、車では無気力そうに窓にもたれているだけ。ため息や感情的な言動が増えて、頭の中で何かが起きてると思った。どういう訳か脳より心が気になったから”感情の物語”を作ろうと決めて、子供の成長と変化を内側から描いたんだ。初期の構想の段階から主役は”ヨロコビ”だった。キャラクターが何を求めてるか?が僕にとって最大の難題だったから、舞台設定も数えきれないほどやり直したが、主役はその比じゃない。キーポイントは、彼女の行動原理が自分ではなくライリーのためということだが、これは初期の設定からあった。だが単調というか、十分な説得力を感じなくてね。そこでひねりを加えて、ライリーを思う気持ちを攻撃的になるほど強調してみたんだ。」と答えている。
また「正反対の者と組むことで彼女自身が見えてくるから、様々な相棒を試した。最初は”バッド”というカナシミ系のキャラクターで、エネルギーの塊である”ヨロコビ”がドジな男を引っ張っていくという流れだが、結果はイマイチだった。次は”ビビリ”だったが、これもダメ。そこで成長物語でもあるから、空想の友達”ビンボン”と組ませたんだ。テーマが決まってもそれだけじゃ物語は動かないが、いくら考えても動かし方が分からず、催眠術にかかったようだったよ。好みの問題じゃなく、物語に説得力のある設定を徹底的に探したかったんだ。そして迷った時は主役の行動原理に戻ったね。ヨロコビがドン底まで落ち込んだ後、司令部に急いで戻る理由が弱かった。そこで散歩しながら何もかもを失うことを森で想像してみたんだ。頭に浮かんだのは人間関係だった。感情は人間関係のカギを握っているから、楽しい時を過ごした人たちや一緒に泣いた人、ケンカした人、一緒に怖い思いをした人など様々な感情を共有することで、絆は強くなる。だからやっぱりパートナーには”カナシミ”が必要だと思ったんだ。まさにひらめきだったが、実は振り出しに戻ってしまっていた。そこで僕らは新しい脚本化を招き、ストーリーを書きなおしたんだ。」
「”ヨロコビ”は最終的に”カナシミ”の役割を学び、豊かな人生には欠かせない感情だと気づく。これで物語にまとまりが出て分かりやすくなった。制作開始時はまったく手探りで、五里霧中だ。だが重要な設定がふいに生まれることもある。構想よりも人間を大切にすることによってね。物語が不思議なのは、その人間を変えてしまう事だ。徹底的なリサーチを重ね、瞑想に近い集中力であるテーマについて考え抜く。すると知識が自分の中に溶け込んで、物の見方が変わるんだよ。僕の最大の喜びは発信の場があることだ。人生を変えた経験や感動した出来事を、普段会う機会のない人に伝えられるんだ。劇場で観客が笑ったり泣いたりしてくれるのは、作品を通じての対話なんだと思うよ。」と答えている。
作品としては、「カールじいさんの空飛ぶ家」「モンスターズ・インク」「ソウルフル・ワールド」などのピート・ドクター監督が手掛けた、ピクサーによる長編アニメーション。第88回アカデミー賞では「長編アニメーション賞」を受賞した。人間の「感情」を主人公として描くという異色のコンセプトでありながら、高いエンターテインメント性と崇高なメッセージを伝えてくる傑作だ。同じくピート・ドクターが監督を務めた「ソウルフル・ワールド」と並んで、2010年以降のピクサー作品では群を抜いた完成度の作品だと思う。2024年にはライリーの思春期を描いた「インサイド・ヘッド2」が公開になっている。
監督:ピート・ドクター
声の出演:エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、リチャード・キング、ビル・ヘイダー、ミンディ・カリング
日本公開:2015年