映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は516本目。タイトルは黒沢清監督による、1997年日本公開作品「CURE」。特典映像としては、「CORE OF CURE」「インタビュー:黒沢清/役所広司/萩原聖人」「プロデューサー対談(土川勉×下田淳行)」「第31回東京国際映画祭ティーチ・イン」「第10回東京国際映画祭会見/初日舞台挨拶」で計196分が収録されており、24Pのブックレットも同封されている。「インタビュー」では、黒沢清監督が「『羊たちの沈黙』に感銘を受けたことが撮影の動機です。一番の悪役レクターが、序盤から逮捕されて捕まっているという展開にすごく感銘を受けたんですよ。観終わった直後に、犯人が捕まった後が一番怖い映画が作れないかなと思いましたね。正直、”催眠術”という手法はやや投げやりで取り入れたんです。捕まったあとに犯人に何をされると怖いかなと思った時に、すごいアイデアを思い付いたというよりは、消去法で決めた感じですね。刑事とその奥さんという設定も決断も悩みました。日常描写を取り入れるとスイートになり過ぎて恐怖感が薄まるから、より恐怖を高める方向で夫婦を使ったんです。それ以来、僕の映画には度々夫婦という設定が出てきますね。」と言い、「”この瞬間に突然キレる”みたいな演技プランは、役所広司さんが考えてくれました。脚本に書かれていないキャラクターの内面みたいなものは、特に僕から役所さんには説明しませんでしたね。ただ高部刑事は、最終的に”怪物”になってしまうんだという説明だけした気がします。いまだに『CURE』みたいなホラーサスペンスを求められることもあるんですけど、こんなに長回しが多くて訳の分からない作品は今は撮れないですね。この作品を超えることは難しいです。幸せな時代でしたよ。」と語っている。
俳優の役所広司は「最初に頂いた台本のタイトルは『伝道師』でした。監督の最初の印象は学校の先生みたいでしたよ。台本はほとんど説明を省かれたドライなものだったので、何日間かファミレスで監督と語り合いましたね。ストレスを抱えた刑事がストレスを解消して、”怪物”になっていく過程は表現したいなと思いました。監督は芝居でも説明を嫌うタイプですし、カメラテストも好まないので、長い1カットの場面でもすぐに本番に行きたがりました。長いカットの中で、何か予定と違うことが起きることを面白がってるところがあると思います。『CURE』は僕の代表作だと思いますし、俳優として育ててくれた映画です。初めて自分の出演作を映画館で観た数少ない作品ですし、いつまでも古びない映画ですね。」と言い、萩原聖人は「時を越えて反響がある作品ですが、オファーされて脚本を読んだときに”この役は無理だ”と思いました。そしたら黒沢監督から、アッバス・キアロスタミ監督の『そして人生はつづく』を見せられて、こういう映画にしたいんだと言われました。この映画の撮影の時は、僕は完全に”無”で実は撮影の時の記憶もほとんど無いんです。本当にノープランで自由に演じてましたから。最初の砂浜のシーンもカメラが遠くにあって、完全にほったらかし状態でしたよ。なにも考えてない人が一番怖いですし、まるで黒沢清監督の催眠術にかかってた感じですね。」と答えている。
作品としては、「カリスマ」「アカルイミライ」「トウキョウソナタ」「クリーピー 偽りの隣人」など、日本を代表する映画監督の一人である黒沢清のサイコホラーで、今でも黒沢監督の最高傑作という声も多い。出演は役所広司、萩原聖人、うじきつよしなどで、特に萩原聖人による記憶障害の演技は今でも新鮮な驚きがあると思う。萩原聖人は本作で、第21回日本アカデミー賞で「助演男優賞」にノミネートされている。「羊たちの沈黙」に影響された作品だが、より理に落ちない恐怖感が強い作品で、特に中盤以降の展開には心底ゾッとさせられる。長回しの使い方も効果的だし、音楽も素晴らしい。これからも邦画史に燦然と残り続けるホラー映画だろう。