映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.542:「英雄の条件」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は542本目。タイトルはウィリアム・フリードキン監督による、2000年日本公開作品「英雄の条件」。特典映像としては、「メイキング」で約24分が収録されている。「メイキング」ではウィリアム・フリードキン監督が「友情と忠誠、政府の腐敗を題材にし、軍隊の使命にも迫った。私は多くの娯楽作品を撮ってきたが、この作品では深刻な問題を提起したつもりだ。軍人の生と死に光を当てたんだ。ハリウッドのエキストラとは違い、本物の海兵隊を撮影したよ。治安上の問題があって本来の舞台であるイエメンでの撮影は避け、モロッコの北部にある村でロケを行った。クアルザザテという数百年の歴史ある土地だよ。実際の戦闘のように撮影するために、ニュースやドキュメンタリーを手本にして画面を無理に整えず、荒っぽく仕上げたんだ。殺人と英雄的行為の差異はおぼろげで紙一重だ。国家が兵士を顧みないという事態を、突き詰めて描いてみた作品で、危険地帯に兵士が送り込まれ不幸な事態が生じた時、たいてい現状は兵士が責任を負わされるんだ。観客は陪審員として結論を委ねられる。チルダースは有罪なのか観客各自が考えるだろうね。」と語っている。

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サミュエル・L・ジャクソンは「戦場で培われた絆と友情を描いた物語だ。軍事アドバイザーの指示に従って訓練を積むにつれ、みんなと打ち解けたよ。国を守るために働く若者たちとずっと過ごしていると、彼らの愛国心と信念が自然に伝わってくる。僕も制服を着た時には身の引き締まる思いがしたよ。」と言い、トミー・リー・ジョーンズは「現実に起こった紛争を彷彿とさせる。大勢の海兵隊員に接して感心した。とても協力的で親切に指導してくれたよ。サミュエル演じるチルダース大佐は、軍法会議にかけられて過剰暴力の行使を裁かれるんだ。規則は必要なものだし守るように努力すべきだが、軍が規則を重んじる一方で不測の事態が起こる。そこでホッジス大佐がイエメンに行って真相を調査するんだ。自分が学生時代に初めて舞台に出たのが、学生演劇の人気作品『ケイン号の叛乱』という法廷劇だった。男しか登場しないので男子校には好都合だったよ。印象深い作品だったから、今回の撮影中に奇妙な感慨を覚えた。この年になっても同じことをやってるとね。」と答えている。

 

作品としては『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』『恐怖の報酬』『L.A.大捜査線/狼たちの街』など、主に70~80年代に映画史に残る傑作を残してきたウィリアム・フリードキン監督の2000年公開作品。イエメンで発生した米国大使館包囲デモ事件で、米国大使館員の救出に向かった海兵隊が民衆に銃撃し、一般市民の死傷者を出したという事件の裁判が描かれる作品だ。サミュエル・L・ジャクソンが銃撃を指揮した軍人で、トミー・リー・ジョーンズがその戦友であり弁護を担当する軍人を演じている。公開後、作品が描いたメッセージと群衆デモシーンのアラブ人描写については多くの非難が殺到し、メディアでは「露骨に人種差別的で、風刺漫画の悪役のようにアラブ人を利用している」などと評されている。改めて鑑賞するとアメリカ軍の非道さを強調した作りにはなっているが、事件のもっとも象徴的な群衆デモシーンの表現では完全に民衆を暴徒として描いており、映画化するには難しいテーマだったという印象だ。今でもフリードキン作品としては低評価な一作だろう。

 

 

監督:ウィリアム・フリードキン
出演:トミー・リー・ジョーンズサミュエル・L・ジャクソンガイ・ピアースベン・キングスレー、アン・アーチャー
日本公開:2000年