映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は563本目。タイトルはルネ・クレマン監督による、1974年日本公開作品「狼は天使の匂い」。特典としては、全10ページの映画批評家である須藤健太郎氏執筆によるブックレットが封入されている。本作は「禁じられた遊び」「太陽がいっぱい」「パリは燃えているか」「雨の訪問者」などで有名なルネ・クレマン監督による、クライムムービー。「さらば友よ」などを手掛けた脚本のセバスチアン・ジャプリゾが原作小説を大胆に脚色し、ルネ・クレマンがかなり自由に映像化したことで、今ではカルト映画としても高い人気を誇る一作だ。出演は「ワイルドバンチ」「ダラスの熱い日」のロバート・ライアン、「男と女」「フリック・ストーリー」のジャン=ルイ・トランティニャン、「情事」「好奇心」のレア・マッサリなど。ルネ・クレマン監督の後期作であり、代表作でも名作でもないかもしれないが、各場面が印象的な映画となっている。
作品としては、過去に犯した事故によってジプシーたちに追われる身となったトニーはカナダのモントリオールへ逃亡するが、万国博覧会場のアメリカ館で殺人事件を目撃してしまったことで犯人一味に捕らえられ、アジトのある島に連れ去られる破目になってしまう。そこでボスであるチャーリー率いる犯人一味によって囚われの身となったトニーだが、島から逃げるためには橋を渡らなければならず、外にはジプシーが待ち構えているという状況から当面は島に腰を落ち着けることを決意する。そしてトニーは一味の一人一人と信頼関係を築くことで、いつしか仲間として溶け込んでいく。やがてチャーリーから彼が計画している”ある誘拐”に誘われたトニーは、その犯罪を決行することになるというストーリーだ。ジャン=ルイ・トランティニャンが、3本のタバコを縦に立てて積むという遊びをロバート・ライアンに挑むシーンがあったり、冒頭に「不思議な国のアリス」の引用から始まることからも、本作ではまるで彼らの犯罪を”子供の遊び”のように演出している。いわゆる犯罪映画のようなスリルやサスペンスを狙った作品ではない上に、アクションシーンもほとんどない。後年のルネ・クレマンの作品群の中でも特にカルト映画の色合いが強く、鑑賞後には独特な感慨を覚える作品だ思う。
監督:ルネ・クレマン
出演:ロバート・ライアン、ジャン=ルイ・トランティニャン、レア・マッサリ、ティサ・ファロー、ジャン・ガヴァン
日本公開:1974年