映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.575:「欲望のあいまいな対象」

映画好きが購入したブルーレイの映画情報をブログに残していく記事で、今回は575本目。タイトルはルイス・ブニュエル監督による、1984年日本公開作品「欲望のあいまいな対象」。特典映像は無しだが、特典として遠山純生氏による”12p特製ブックレット”が封入されている。第50回アカデミー賞では「脚色賞」「外国語映画賞」、第35回ゴールデングローブ賞では「最優秀外国語映画賞」にノミネートされたルイス・ブニュエルの遺作である。一人二役という作品はよくあるが、本作はヒロインのコンチータ役をフランス女優のキャロル・ブーケと、スペイン女優のアンヘラ・モリーナの二人の女優が演じる”二人一役”という珍しいキャスティングがなされている。キャロル・ブーケにとっては本作が映画デビュー作となり、その後「007 ユア・アイズ・オンリー」ではボンドガールに抜擢され国際派として活躍する女優となった。またコンチータに翻弄される紳士マチューは、「フレンチ・コネクション」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」などのスペイン人俳優フェルナンド・レイが演じており、非常に印象的な演技を見せている。

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物語としては、セルビアからパリ行の電車に乗り込んだ老紳士が、駅のホームまで追いかけてきた若い女性にいきなりバケツで水をかぶせたことから、その理由を同じ客室に乗り合わせた乗客たちに語り始めるところから始まる。ここから過去回想シーンとなり、ブルジョワの老紳士マチューが若くて美しい小間使いのコンチータにたちまち夢中になるのだが、コンチータは突然マチューの前から姿を消したり、その気にさせておいて突然夜を拒んだりするため、マチューの欲望は一向に解消されない。それでも金銭的にも精神的にもコンチータに尽くすマチューだったが、彼女はマチューを弄び続けるという内容だ。ある時は天使のように、ある時は悪魔のようにふるまうコンチータキャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナがそれぞれ演じていて、まさに”二人一役”が活かされている。権力者の老いらくの恋とその気持ちを振りまわす若き女性というテーマは今観ても相当に面白いし、特にフェルナンド・レイ演じるマチューの情けない姿には、同情すら感じてしまう。正体不明のテロ事件という伏線が回収されるラストの展開も含めて、ルイス・ブニュエルの遺作として相応しい奇抜な作品だったと思う。

 

 

監督:ルイス・ブニュエル
出演:フェルナンド・レイキャロル・ブーケ、アンヘラ・モリーナ、バレリー・ブランコ、エレン・バル
日本公開:1984