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映画「ファンタスティック4 ファースト・ステップ」ネタバレ考察&解説 今後のMCUを担う重要作!アクションは少なく物足りないが、デザイン性の高さはマーベル作品の中でも突出した出来!

映画「ファンタスティック4 ファースト・ステップ」を観た。

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「グッド・ワイフ」「ゲーム・オブ・スローンズ」「ザ・ボーイズ」などのテレビシリーズを経て、MCUのドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」を手がけたマット・シャンクマン監督による、「マーベル・シネマティック・ユニバース」の第37作目の最新作。過去にはティム・ストーリー監督やジョシュ・トランク監督版の「ファンタスティック・フォー」があったが、今回はMCUの重要作品として満を持しての公開となっている。マーベル・コミックス初のヒーローチームである「ファンタスティック・フォー」のメンバーを演じているのは、「マンダロリアン」「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」のペドロ・パスカル、「ナポレオン」「ミッション:インポッシブル」シリーズのバネッサ・カービー、「テスラ エジソンが恐れた天才」のエボン・モス=バクラック、「クワイエット・プレイス:DAY 1」のジョセフ・クイン、「リチャード・ジュエル」のポール・ウォルター・ハウザーなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:マット・シャンクマン
出演:ペドロ・パスカル、バネッサ・カービー、エボン・モス=バクラック、ジョセフ・クイン、ポール・ウォルター・ハウザー
日本公開:2025年

 

あらすじ

宇宙ミッションのさなかに起きた事故で特殊能力を得た4人は、その力と正義感で人々を救うヒーローチーム「ファンタスティック4」として活躍している。チームリーダーで天才科学者のリード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティックは、ゴムのように自在に伸縮する体を操り、妻スー・ストーム/インビジブル・ウーマンは、透明化や目に見えないエネルギーシールドを使いこなすチームの精神的支柱。スーの弟ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチは、炎を操り高速で空を駆け抜ける陽気なムードメーカーで、リードの親友ベン・グリム/ザ・シングは、岩のように強固な身体と怪力を持つが、内面に葛藤を抱えた心優しい人物だ。世界中で愛され、固い絆で結ばれた彼らは、スーの妊娠という知らせを受けて、喜びに包まれる。しかし、リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵、宇宙神ギャラクタスの脅威が地球に迫る。滅亡へのカウントダウンが始まる中、ヒーローである前にひとりの人間として葛藤を抱える4人は、世界を守るために立ち上がる。

 

 

感想&解説

キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」「サンダーボルツ*」と続いてきた、2025年のマーベル・シネマティック・ユニバースだが、満を持しての重要作「ファンタスティック4 ファースト・ステップ」がいよいよ公開となった。過去に20世紀フォックス配給での映画版はあったが、その20世紀フォックスがディズニーに買収されたことで、遂にMCUと合流できたという”大人の事情”はありつつも、コミックとしてはマーベルの歴史においてスパイダーマンやアイアンマン、ハルクよりも前に登場している先輩格の作品だ。すでにルッソ兄弟がメガホンを取ることが情報公開されている、「アベンジャーズドゥームズデイ」の悪の天才科学者ドクター・ドゥームもこの「ファンタスティック4」に登場したヴィランだし、その後の「アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ」も、原作ではリード・リチャーズが重要な役割を担っていたので、今後のマーベルの命運を担う最重要作なのだと思う。

しかしそんな「ファンタスティック4」も映画が始まって数分から、いきなり驚かされる。この4人の主要キャラクターにおける誕生のストーリーは完全にオミットされ、番組の”紹介動画”という体で簡単に紹介されるのみなのだ。宇宙に行った4人が宇宙嵐による突然変異によって超能力を得て、地球を救い始めてからすでに4年が経過しており、この世界には他のヒーローはいないようだ。それもそのはず今までのMCUで描かれてきた、”アース616”とは違う世界線である”アース828”を舞台にすることで、本作は他のヒーロー作品とは干渉しない完全に独立したマーベル作品となっている。それにしても、「ファンタスティック4」のMCUデビュー作品であり、「ファースト・ステップ」と題されているにも関わらず、観客の感情移入させる重要なパートであるはずの”ヒーロー誕生譚”を省いたのはなかなか大胆な判断だと思う。何度も映画化されている上に大ヒットしている「スパイダーマン」や「スーパーマン」とは違い、本作でこのシリーズに触れる観客はかなり多いだろうからだ。

 

だがそれにも、作り手の明確な理由があるのだと思う。ここからネタバレになるが、本作で重要だったのは息子である”フランクリン”の誕生なのだろう。ジョニーやベンの生い立ちやキャラ紹介から始めていては、到底フランクリン誕生までは間に合わない。エンドクレジットでも描かれていたが、ドクター・ドゥームもフランクリンに接触していたし、そもそも本作も”世界を喰らう者”ギャラクタスがフランクリンを求める物語だった。フランクリン・リチャーズは最強クラスのスキル”現実改変能力”を持っており、何でも想像とおりに実現できるという能力ゆえに、原作でもヴィランに狙われてきたが、本作のラストでも一度は死んだスーを死から蘇らせたのはこの能力だ。このフランクリンが「ドゥームズデイ」以降のMCUの鍵を握ってくるのだと考えられる。

 

 

「サンダーボルツ*」のポストクレジットでは、ファンタスティック4の宇宙船が登場した為に、どこでリンクしてくるのかと楽しみにしていたが、本作では結局”アース616”とはリンクしなかったため、このあたりは完全に「ドゥームズデイ」に丸投げされた形だ。では「ファンタスティック4」本編としてはどうだったか?という感想になるが、60年代アメリカの宇宙開発が全盛期の時代を舞台に描いていることもあり、明るく多幸感に溢れた作品だったと思う。もちろん地球にギャラクタスが襲ってくるという内容なので、ストーリー上はシリアスな場面も多いが、映画の”トーン”としては軽くて明るい。それは作品の冒頭からいきなりスーの妊娠が発覚して、喜ぶ二人のシーンから始まることからも示唆されていたと思う。いわゆる”レトロ・フューチャー”な世界観をベースに、明るく希望に満ちた古き良きアメリカの側面を描いた作品なのだ。

 

流線型の機体がカッコ良すぎる”ファンタスティックカー”は空を飛びまくり、アシスタントする”ハービー”は料理から宇宙船のメンテまでこなす優秀なロボットが登場する。だが作品の世界観はあくまで60年代であり、ジョニー・ストームの部屋にはアンディ・ウォーホール的な自画像が貼られていたりする。ハービーは顔の”カセット”を交換することで、業務スキルを変更できる仕様なのが古めかしいが、この最新鋭とレトロなデザインの融合が本作で最高にクールな点だろう。正直、本作でもっとも評価したい点がこのプロダクション・デザインだ。彼らのユニフォームの”青”が一番映えるように、セットや衣装のすべての配色が構成されている上に、ターンテーブルや机に至る小道具までデザインが本当にカッコいい。今回はマーベルのロゴまで「ファンタスティック4」仕様になっていたが、このデザイン性の高さは過去のマーベル作品と比べても突出していたと思う。

 

また本作は他のヒーローは一切出てこないので全く初見でOKのMCUだが、今までのマーベル作品と比較すると、アクションヒーロー映画としてかなり地味な部類だと思う。基本的な悪役はシルバーサーファーとギャラクタスだけだし、どちらも能力としてはチート級に高いため、ヒーローの能力を発揮することで”戦って倒す”という内容にはなっていないからだ。ギャラクタスに至ってはデザインは最高だが、あまりに巨大すぎるために”絶対に勝てない相手”だと一目でわかる。だからこそ瞬間移動させられるテレポーテーションのポータルへと誘導するという方法を取るのだが、フランクリンを囮にして、ポータルに誘い込むという作戦はいとも簡単に見破られ、彼らは絶体絶命になってしまう。最後はスーがフォースフィールドによって強引に押し込むのだが、これも結局は力技になってしまう為にアクションシーンとしてはかなり凡庸な出来になってしまっている。各人の超人能力を活かして協力することで、あの強敵を倒すというカタルシスが圧倒的に足りないのだ。

 

このアクションシーンは本作で最大の不満点だが、代わりドラマ性は担保されていたと思う。フランクリンを差し出すことによって地球を救えるという事実を知った市民は、それをしないリードとスーを非難する。だが子供を犠牲にはしないが、必ず地球は守り抜くこと、そしてそれは団結によって得られるのだというスーの宣言は美しかったし、本作が”家族の物語”であることを象徴した場面だったと思う。ただし本来は”天才”という設定のはずのリードの言動には、バカ正直な記者会見の場面も含めて先が考えられておらずいろいろと不満が残った。そしてラストは、チャイルドシートの取り付けでアタフタする彼ららしい姿が描かれて、この楽天的な映画は幕を閉じる。次回のアベンジャーズでは、サムやエレーナたちと合流し”アース616”を舞台に戦うことになるのだろう。「デッドプール&ウルヴァリン」「ブレイブ・ニュー・ワールド」「サンダーボルツ*」と積み重ねてきたMCUは本作によって、いよいよフェイズ6に入ったらしい。そしてすでに発表されている「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」と、それに続くアベンジャーズ2作品によってMCUの今後の方向性は大きく決まる気がする。いよいよ「X-MEN」と「ファンタスティック4」も合流した総力戦の行方は、しっかりと見届けたいと思う。

 

 

7.0点(10点満点)