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映画「ファイナル・デッドブラッド」ネタバレ考察&解説 14年ぶり仕切り直しの一作!元凶となるアイテムも新登場する、爆笑ホラーフランチャイズ最新作!

映画「ファイナル・デッドブラッド」を観た。

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「FREAKS フリークス 能力者たち」のアダム・スタイン&ザック・リポフスキーが監督を手掛けた、人気ホラーシリーズ「ファイナル・デスティネーション」シリーズ第6作。本国アメリカでは大ヒットしたにも関わらず、日本では配信&ソフト化での公開になりそうだったが、最終的には規模は小さいながらも劇場公開となった。予知夢によって大事故を回避した若者たちが、逃れられない死の連鎖に巻き込まれ、無残な死を遂げていく姿を描くというコンセプトはそのままに、今回はその「死の連鎖」の原点を描いていく。出演はシリーズを通して生存者に助言を与えてきた謎の男ウィリアム・ジョン・ブラッドワース役のトニー・トッドのほか、新人のケイトリン・サンタ・フアナ、「ウインド・リバー」のテオ・ブリオネス、「パペット・キラー」のリチャード・ハーモン、オーウェン・パトリック・ジョイナーなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:アダム・スタイン&ザック・リポフスキー
出演:ケイトリン・サンタ・フアナ、テオ・ブリオネス、リチャード・ハーモン、オーウェン・パトリック・ジョイナー、トニー・トッド
日本公開:2025年

 

あらすじ

大学生のステファニーは、自分と家族が悲惨な死を遂げる悪夢を繰り返し見て苦しんでいた。それがただの夢ではないと確信した彼女は、唯一の手がかりとなる人物を捜すため故郷へ向かう。やがて、50年以上語られてこなかった「死の連鎖」の原点にたどり着き、「運命には逆らえない」という不条理な法則がいまなお続いていることを知る。過去と未来が交錯する中、ステファニーはその血の因果と対峙することになる。

 

 

感想&解説

”逆らえない死の運命”という斬新な設定で、2001年日本公開の「ファイナル・デスティネーション」が大ヒットを記録し、その後の第二作目「デッドコースター」から「ファイナル・デッドコースター」、それからシリーズ初の3D公開となった「ファイナル・デッドサーキット」、「ファイナル・デッドブリッジ」と独特の邦題が付きながらも日本公開され続け、熱狂的なファンを生み出してきたシリーズの最新作が公開となった。6作目となる「ファイナル・デッドブラッド」は、前作から14年を経ての最新作であり「すべての“死の連鎖”はここから始まった」というキャッチコピーの通り、シリーズの起源が描かれる。日本では配信&ソフトスルーとなりそうだったが、最終的には小規模ながらも劇場公開となり嬉しい限りだ。6作目の大ヒットを受けて、すでに7作目の製作も決定しているらしい。

 

シリーズのお約束として、冒頭の大規模な事故死から主人公一行は一旦回避するものの、結局は様々な理由によって順番に死んでいくという、その”死に方”自体が面白いという”コメディ”ホラーシリーズであり、初代「ファイナル・デスティネーション」が生み出したフォーマットの秀逸さが本シリーズ一番の肝だろう。「ファイナル・デッドブラッド」の監督は、本作でメジャー作品デビューを果たしたアダム・スタイン&ザック・リポフスキーでインディーズの職人監督らしいが、いきなりデビュー作で有名フランチャイズ最新作を任されるのは、いかにもハリウッドのホラーシリーズらしい。出演者も誰もが知っているスターを起用するというよりも、まだ無名に近い新人たちを起用することによって、誰がどの順番に死ぬか分からないというスリルを生んでいるのもシリーズのお約束だと思う。

 

そして「ファイナル・デスティネーション」から25年を経ての第6作目「ファイナル・デッドブラッド」は、シリーズファンであれば確実に楽しめる良作だったと思う。まず過去作からの”差別化”を強烈に意識した作りになっており、ファンであればあるほど鑑賞していて何度も驚かされるタイミングがあるだろう。まず映画冒頭で描かれる時代が1960年代なのである。サプライズの為に目隠しをしたアイリスは恋人ポールの運転する車で、高層タワー「スカイビュー」最上階にあるレストランに向かっている。スカイビューはオープンしたばかりの建物であり、予定の”5か月”も前に完成したらしい。この時点ですでに事故が起こる予感が満載なのだが、レストランに着いた2人は、ポールからのプロポーズなどもありつつも、ガラスの床が砕けたことを皮切りに大惨事に巻き込まれてしまう。

 

 

まず本作は、この冒頭のディザスター描写が素晴らしい。シンプルに前作から14年を経過したこともあり、VFXも見応えがあるし、ピアノが滑り落ちてくるシーンの演出なども緩急が付いていて、パニック描写としても秀逸なのだ。婚約指輪で間一髪の演出も「アビス」を思い出したが、使い方が巧い。冒頭で”噴水の泉”から少年が拾っていたコインがディザスターの大きな原因となるのだが、このコインは本作では大きな意味を持たされており、恐らく次作以降のキーアイテムにもなるのだろう。そして最後に残ったアイリスと黒人の少年も結局はタワーから落下し、”いつものように”主人公が目が覚めるシーンがあるのだが、なんとこれが現代の大学の教室であり、夢を見ていたのもステファニーという先ほどとは別の女性であることが分かる。この時点で今までのシリーズとは趣向が違うのだ。そして、ここからステファニーの夢に出てきたアイリスとは自分の祖母であり、彼女がタワーで多くの命を救ったことが分かる。

 

ステファニーがアイリスの家を訪れるシーンでは、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督による2019年日本公開のリブート版「ハロウィン」における主人公ローリーを猛烈に思い出す。マイケル・マイヤーズから生き残ったローリーは、マイケルが再び現れることを警戒するあまり、要塞のような自宅から滅多に外に出ない生活をしていたが、まさに本作のアイリスも同じだ。スカイビューで救った多くの命も結局は”死神”からは逃れられず、恋人ポールも含めてほぼ死んでしまっており、そしてアイリスは死神から逃れる方法を本に残して今まで生き延びている。ところがステファニーに本を渡すために家の外に出たアイリスは即座に死んでしまい、原題の通り「BLOODLINE(血筋)」の順番に人が死んでいくという展開となる。ここからのバーベキューやゴミ収集車、病院などでの”死のピタゴラスイッチぶり”はいつも通りにアイデア満載で、観ていて幸福感しかない。ガラスの入った氷や破れかけたトランポリン、お菓子の出てこない自動販売機など、絶妙にこちらの予想をハズシてくる演出の数々も楽しいし、ゴア描写も満載だ。

 

特に本作のMVPはタトゥーショップで働く長男のエリックだろう。ここからネタバレになるが、天井のファンが鎖に絡まっての鼻ピアス引っかかりシーンから、MRIルームでの金属吸引シーンまで彼の見せ場だらけだ。「え?そこも金属が入ってるの?」と2重3重に驚かされるし、”悲しい時のプレイリスト”も含めて大いに笑わせられる。母親の浮気で出来た子供だったため、本来は血縁から外れているはずのエリックだったが、死神を欺こうとした罰で結局は殺されてしまうという、これぞ「ファイナル・デスティネーション」シリーズらしい最高のコメディシーンだった。そしてもうひとつのお約束展開としては、トニー・トッド演じる”ウィリアム・ブラッドワース”の存在だ。本作でのブラッドワースは癌を患っているという設定だったが、実際の俳優トニー・トッドも末期癌だったそうで、このシーンにおける彼のセリフには非常に含蓄があった。そして過去にアイリスが救った黒人少年はこのブラッドワースであり、彼も死神に追われ続けていた人生だったことが描かれるのだ。ブラッドワースから「デッドコースター(2作目)」のラストで救急車で湖に突っ込み、仮死状態から一命を取り留めることで生き残ったキンバリーのエピソードが語られ、ここからステファニーは弟チャーリー、そして疎遠だった母親と生き残るために、再びアイリスの家に向かう展開となっていく。

 

どうやらシリーズ全ての起源はこのスカイビューの事件、しかもこの少年の拾った”コイン”に起因しているらしい。アイリスが残した本には過去シリーズの飛行機事故や高速道路の事故などにも触れられていたし、血が繋がっていれば死神の効力は有効らしいので、過去シリーズの犠牲者たちは、このスカイビュー事件で生き残った人たちの遠縁に当たる人たちだったという事だろう。The Isley Brothers」の楽曲における不穏な歌詞に乗せてダンスするシーンでは、かなりの人数が確認できたのであながち無理な設定でもないのかもしれない。最終的には60年代から再び現代に”例のコイン”が現れたことにより、シリーズのお約束として主人公であるステファニーとチャーリーも死んでしまうことで、今作でも死神の勝利で幕を閉じる本作。エンドクレジットでは、コインが血筋のような赤いラインを転がっていき画面の奥に消えていく演出があったが、これからまた違う主人公の物語が語られるのだろう。久しぶりのシリーズ最新作として、そしてジャンル映画としても十分に面白かった本作。特に改めての仕切り直しの要素も多いので、ホラー好きなら観ておいて損のない一作だったと思う。

 

 

7.0点(10点満点)