映画「プレデター バッドランド」を観た。

「プレデター」シリーズとしては過去5作、「エイリアンVS.プレデター」で2作、さらに「プレデター:最凶頂上決戦」というアニメーション作品が公開になっているSFアクションの最新作が公開となった。監督は「10 クローバーフィールド・レーン」で長編デビューし、その後「プレデター ザ・プレイ」「プレデター 最凶頂上決戦」とプレデターシリーズの連作で高い評価を獲得したダン・トラクテンバーグ。最新作の今作はこれまで“狩る側”として描かれてきたプレデターが、逆の立場の“狩られる側”となる新たな視点で展開される。下半身を失ったアンドロイドの少女を、「マレフィセント」「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」などのエル・ファニングが演じている。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。
監督:ダン・トラクテンバーグ
出演:エル・ファニング、ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ
日本公開:2025年
あらすじ
掟を破った若きプレデターのデクは、生存不可能とされる最悪の地「バッドランド」に追放される。さらなる強敵を求めて戦い続けるデクは、その旅路の中で、思いがけない協力者となる謎のアンドロイドの少女と出会う。自分たち以外は敵だらけという世界で、デクと少女は生き残りをかけた過酷なサバイバルを繰り広げることになる。
感想&解説
「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督と製作ローレンス・ゴードン&ジョエル・シルバー、そして音楽アラン・シルヴェストリ、主演アーノルド・シュワルツェネッガーという布陣で生まれた初代「プレデター」は、1987年公開だったので今から38年前の作品だが、今でもシリーズで一番好きな作品だ。ダッチ率いる特殊部隊がジャングルの中で遭遇した、未知の生物”プレデター”と戦うという内容なのだが、残酷で透明になれる能力を持った戦闘民族であり、生物の体温を赤外線で感知しているというシリーズのルールがすべて含まれた完璧な1作目だったと思う。その後、舞台をロサンゼルスの市街地に移した「2」や、原点回帰的な各分野の戦闘のプロたちがジャングルに集まり惑星から脱出する戦いを描いた「プレデターズ」、「エイリアン」と「プレデター」がコラボしたスピンオフ作品「エイリアンVS.プレデター」シリーズの2作品、そしてシェーン・ブラックが監督を務めた「ザ・プレデター」を経て、マンネリ化が進みクオリティも落ちていたシリーズは、一旦休止期間に入ったと思った。
ところがその潮目が変わったのが、2022年の「プレデター:ザ・プレイ」だろう。劇場公開は見送られ、日本ではディズニープラスでの配信のみだったが、1700年代初頭のアメリカを舞台に、ネイティブアメリカンのコマンチ族の女性戦士ナルとプレデターとの戦いを描いた傑作であり、シリーズに新しい方向性を見出した作品だったと思う。そしてそれを更に押し進めたのが、アニメーション作品「プレデター:最凶頂上決戦」だ。「SHILD(盾)/SWORD(剣)/Bullet(弾)」と三章に分かれた物語は、それぞれ父親の復讐に燃えるヴァイキング、日本の武家のしきたりによって武将と忍者になった兄弟、そして第二次世界大戦中のパイロットなど、世界中の戦士たちがプレデターと戦う姿が描かれていたが、これがゴア描写も満載の見応えのあるアクション映画になっていた。ラストシーンでは過去シリーズとの関連も示唆されていたが、完全に”狩る/狩られる”という要素だけにフォーカスした、アクション映画としての純度を高めた力作だったと思う。この2作品は強くオススメしたい。
そして、この「プレデター:ザ・プレイ」と「プレデター:最凶頂上決戦」を手掛けたのが、本作「バッドランド」の監督であるダン・トラクテンバーグだ。今や”プレデターの申し子”となった感のあるダン・トラクテンバーグだが、なんと今作では初めてプレデターが”狩られる対象”になるという逆転の発想で作られており、まずコンセプト自体が面白い。さらにその若きプレデター”デク”の相棒となるのが、エル・ファニング演じるアンドロイドの少女ティアなのだが、このアンドロイドが”ウェイランド・ユタニ社製”であることが公開前から話題になっていた。ウェイランド・ユタニは、「エイリアン」シリーズで常にトラブルを起こす利益至上主義で悪名高い企業なのだが、このリンクは「エイリアンVS. プレデター」という前例はありつつも久しぶりの設定であり、これをトラクテンバーグ監督が取り入れたことにより、プレデターの世界観が広がっていくのを感じる。そして本作は思った以上に、ウェイランド・ユタニ社が重要な設定になっていたと思う。
主人公デクはヤウージャ一族の落ちこぼれだったが、過去に兄クウェイの命を救ったこともありクウェイからは可愛がられていた。ゲンナ星に行って、”カリスク”という最強の生物を狩って戻ることで自分の価値を主張しようとするデクに対して、それを止めるクウェイ。しかし凶悪な父から弱さを理由に処刑を言い渡されてしまったデクを、クウェイが命を懸けて守ったことで、そのままデクを乗せた宇宙船はゲンナ星へと発進してしまう。デクはカリスクを狩って帰ることが兄への弔いと強さの証明になると信じ、ゲンナ星で狩りを始めることになるが、その過程ででウェイランド・ユタニ社製のアンドロイド”ティア”と猿のような生物”バド”に出会い、一緒に旅進めることになる。だがウェイランド・ユタニ社は”テッサ”というアンドロイドも送っており、身体を再生させられる能力を持つカリスクの捕獲に向けて動いていた、というストーリー概要だ。
ここからネタバレになるが、本作はプレデターの”ポップ化”を目指したような作品だったと思う。デクは今までのプレデターシリーズでは考えられないくらいに心情や成長が描かれており、主人公として愛着が湧くように設定されている。またエル・ファニング演じるティアは、アンドロイドでありながらよく笑い、お喋りで人間味が強く可愛らしい。さらに”バド”という猿のような生物もデクから食べ物をもらったり、子供のように動作を真似るようなシーンもあり、観客がキャラクターとして”可愛い”と思うようなデザインと設定が貫かれている。またストーリーもシンプルかつ、冒険によって成長した主人公が復讐に戻ってくるという古典的な話になっているし、過去のプレデターシリーズとの関連もほとんど無いので、今作から観るのもまったく問題ない。ウェイランド・ユタニ社や「エイリアン2」のパワーローダーといった要素は、あくまでファン向けのサービスであり、知らなくても楽しめるバランスになっているのだ。
またこの「プレデター バッドランド」が、過去シリーズやダン・トラクテンバーグ作品と違う点はバイオレンス&ゴア描写の弱さだろう。「プレデター:ザ・プレイ」ではプレデターが人間を容赦なく殺していく様子が描かれていたし、「プレデター:最凶頂上決戦」ではアニメーション作品であるにも関わらず、序盤のヴァイキング同士の闘いから四肢欠損描写だらけで血まみれだった。ところが本作は、敵は人間ではなく全てユタニ社のアンドロイドなので、”ロボットが破壊されている”という表現になっており、残虐性はかなり抑えられている。これもプレデターの入門編として計算された演出なのだろう。”バド”も実は最強のモンスターだと思われていたカリスクの子供だったという設定も入って、親子の愛情を感じさせるシーンもあり、初代「プレデター」から続いている硬派でゴア描写多めのややマニアックな作風から、もっとSF娯楽大作の方向に意図的に変更をかけた作品だと感じる。
「Predator: Badlands」と大写しになるタイトルの出方やアクションシーンの構築力など、作品を通してケレン味たっぷりで、107分というタイトな上映時間も含めて楽しい作品だったと思う。ラストも巨大な宇宙船が飛来したかと思えば、デクは「母上だ」と明かし続編を感じさせたが、今回のウェイランド・ユタニ社の登場により、今後は更なる「エイリアン」と「プレデター」のクロスオーバーもあるかもしれない。そういう意味で、”プレデター新章”として大役を果たした作品だと思う。ただし個人的に”安定感はあるけど、意外性はない”といった内容で、「プレデター:最凶頂上決戦」の時のような興奮を感じる作品でなかったのは、やや残念だ。大好きなバンドの新曲が、いわゆる”売れ線”に走った時に感覚に似ているかもしれない。とはいえ1本のアクション映画としては、とても良く練られて作られた良作だろう。
6.5点(10点満点)