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映画「視える」ネタバレ考察&解説 脚本の粗は感じつつも、映像や演出にセンスを感じるエンタメ作品として楽しいホラー映画!

映画「視える」を観た。

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アイルランドの新鋭ダミアン・マッカーシー監督がメガホンをとり、低予算ながらも長編2作目にして2024年のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭でプレミア上映され、ミッドナイターズ部門観客賞を受賞するなど高い評価を獲得した本作。アリ・アスター監督の「へレディタリー/継承」を想起させるとの声もある、超常ミステリーホラーだ。出演は「ユー・アー・ノット・マイ・マザー」のキャロリン・ブラッケン、「ボヘミアン・ラプソディ」でブライアン・メイを演じていたグウィリム・リー、「ビルド・ア・ガール」のタイグ・マーフィ、「マイ・フーリッシュ・ハート」でチェット・ベイカーを演じたスティーブ・ウォールなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ダミアン・マッカーシー
出演:キャロリン・ブラッケン、グウィリム・リー、タイグ・マーフィ、スティーブ・ウォール
日本公開:2025年

 

あらすじ

ある夜、郊外の屋敷で女性ダニーが惨殺される。容疑者は現場に現れた精神科病院の患者とされたが、事件は多くの謎を残したまま幕を閉じた。1年後、ダニーの双子の妹で盲目の霊能力者ダーシーは、不気味な木製マネキンを携えて、ダニーが殺された屋敷を訪れる。そこには、ダニーの元夫テッドと、その恋人ヤナが暮らしていた。ダーシーは姉の死の真相を探ろうとするが、そんな彼女を待ち受けていたのは、思いもよらぬ真実と恐怖だった。

 

 

感想&解説

期待した以上に、しっかりとした上質なホラー映画だった本作。監督はアイルランド出身の新鋭ダミアン・マッカーシーで、かなりの低予算映画ながらも長編2作目にして国際的な注目を集めた作品だ。2024年の「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)映画祭」でプレミア上映され、ホラー・スリラージャンルの深夜上映向け作品に特化したミッドナイターズ部門では、「観客賞」を受賞した他、アメリカの批評サイト「Rotten Tomatoes」では96%という高い支持率を記録している。メディアからの評価もアリ・アスター監督の傑作「ヘレディタリー/継承」と比較されたりと、ダミアン・マッカーシー監督にとってブレイクスルーとなった作品だと思う。ちなみに監督の1作目「Caveat(原題)」も、3作目となる次回作もホラーらしいので、ホラーというジャンルに魅せられたクリエイターなのだろう。

インタビューの中で監督は「両親がビデオショップを営んでいたので、80年代の名作VHSをたくさん観て育ちました。一番鮮明に覚えているのは『ポルターガイスト』です。あの家に”呪われた家族”が住んでいるという設定が、すごく気に入りました。怖いのに独創的だと感じたんです。」と答えているが、過去のホラーが本作にも影響を与えているのだろう。幽霊ものやスラッシャー、サイコホラーやホームインベージョンといったホラーのサブジャンルを組み合わせた、インディーズ作品を目指したとも語っており、中田秀夫監督の「リング」や、1973年度版のロビン・ハーディ監督「ウィッカーマン」などを見返して参考にしたというコメントからも、この映画の雰囲気は掴めるかもしれない。また本作の中心や郊外にある大きな屋敷なのだが、この屋敷の空間を活かした効果的なシーンの作り方なども含めて、センスを感じるクオリティの高いホラー映画に仕上がっている。端的に”エンターテインメント映画”として優秀なのだ。

 

ある夜、精神科医テッドの妻ダニーが、夫妻が新しく購入した郊外の屋敷で惨殺される事件が起こる。容疑者はテッドの元患者であるオーリン・ブールであり、彼は屋敷まで訪れて「家に見知らぬ者が侵入している」と警告していたが、その夜にダニーが殺されたからだ。さらに犯人だと考えらえれたオーリンは、更生施設の自室で頭を粉々に砕かれて殺されているのを発見される。それから1年後。ダニーの双子の姉妹であり、盲目の霊能者ダーシーのもとにテッドが訪れて、彼はオーリンの義眼を渡す。そしてそれを”透視”したダーシーは、贈り物として”不気味な木製のゴーレム像”が入った大きな木箱を送り、テッドが新しい恋人ヤナと暮らしている屋敷に現れて「泊まらせてくれ」と言いだす。テッドは夜勤のため病院へ出かけるが、ダーシーは車の鍵が無くなったために足留めを食らい、ヤナと二人きりの夜を過ごすことになる。夜が更けてゴーレム像に対して恐怖に抱いたヤナが像を調べ始めると、頭部にあいた5つの穴の中から、ダニーとダーシーの写真、髪の毛、歯、そして血の小瓶など、奇怪なものが次々と現れる。それを感じたダーシーに叱責され、ヤナはそれらを元に戻すが、その後ヤナはダニーの霊から「逃げて」と忠告されたことで、恐怖によるパニックのあまり家を飛び出してしまう。

 

 

ここからネタバレになるが、その後テッドが帰宅すると家にはダーシーだけが残っており、ダーシーはテッドに「真犯人はオーリンではなく、テッドの病院の同僚であるアイヴァンであり、その依頼をしたのは貴方だ。」と驚きの告発をする。焦ったテッドは、盲目のダーシーに対して床の開くトラップを用意して殺害を実行し、アイヴァンにダーシー殺害隠蔽の依頼をする。落下して死にかけているダーシーを見つけたアイヴァンだったが、ダーシーが呪文を唱えて姉ダニーと”繋がり”、ゴーレムに命を吹き込んだことでアイヴァンを攻撃し気絶させる。その後、アイヴァンはテッドの精神病棟で、手足を拘束された状態で目を覚ます。テッドは人肉食癖のある患者を使ってイヴァンを殺させることで、証拠隠滅を図り帰宅する。だがテッドの屋敷にダーシーから荷物が届く。中にはダーシーの店にあった呪いのベルが入っていた。そしてテッドがベルを鳴らしてしまい、”死のベルボーイ”が現れたところで映画はエンドクレジットとなる。

 

序盤で妻ダニーが夫に「携帯電話が繋がる場所を見つけた」というシーンがあるが、あの2階の突き当りこそ、本作においては重要な位置なのだろう。ダーシーがテッドを告発する場面もあそこだし、落下して瀕死のダーシーが姉ダニーと”繋がる”場所も同じ地点だ。それにしても本作は、ホラー演出がとても巧い。妻ダニーが屋敷に誰かが侵入していることをカメラで知るシーンや、その後のテントをのぞき込む仮面の男の不気味さ、屋敷に残ったヤナがゴーレム像とダーシーに翻弄される前半のシーンの数々など、こちらにじっとりと恐怖を植え付けてくる。安易なジャンプスケアだけに頼らず、カメラワークと構図によってホラー映画としての質を高めているのだ。また画作りもまったく安っぽさを感じさせず、ゴーレム像の造形も含めて不気味で見応えがある。映像作品としては、素晴らしい出来の恐怖映画だと思う。

 

ただ若干残念なのは脚本だ。本作はミステリ仕掛けのホラー映画だが、登場人物が少なすぎて消去法で犯人が分かってしまうのだ。アイヴァンが精神病棟に捕まったオーリン・ブールに悪態を付くシーンなど、流れが唐突で違和感が残ってしまうし、そもそもアイヴァンがダニー妻の殺人を肩代わりする必要性も描かれない。元患者であるらしいことはセリフであったが、そこまでする二人の関係性が不明瞭だ。また、そもそもテッドが妻ダニーを殺したい動機もイマイチ釈然としない。すでにヤナと不倫関係にあり、ダニーとの離婚で屋敷を失うことを恐れてという事だったが、妻を殺すというリスクを採る理由としては、あまりに薄いだろう。また「羊たちの沈黙」オマージュであろう、”拘束具男”がアイヴァンの指をかじるシーンも、流石に無理がある。精神病院での殺人は医師の責任が問われない訳ではないし、誤ってオーリンを殺してしまったというダーシーの手法も不明だ。まずテッドの周りでは人が死に過ぎているので、彼に捜査の手が伸びるのは時間の問題だろう。またそもそもがテッドが犯人なら、霊感を信じないという設定は分かりつつも序盤でダーシーに義眼を渡す必要もない。”テッドが犯人”という前提で観返すと、シナリオに粗が目立ってくるのである。

 

ただ上記のような細かいツッコミどころは置いておいて、初見で観る時には十分に楽しめる作品だと思う。キャロリン・ブラッケンの姉妹一人二役も素晴らしかったし、本作でもっとも知名度があるであろう、「ボヘミアン・ラプソディ」でブライアン・メイを演じていたグウィリム・リーの冷酷な演技も良かった。上映時間も98分とタイトだが、本作についてはもう少し尺を使ってキャラクターの設定を肉付けしても良かったかもしれない。本作の原題「Oddity([意味:奇異])」の邦題が、9月1日に東京都内で行われた特別試写会イベント内で、“ギャル霊媒師”として活動する飯塚唯が霊視によって鑑定を行い、結果的に「視える」を選出したというニュースを見たが、他の候補としては「ゴーレムと女霊媒師」「アイズ・オブ・デス」などがあったらしい。配給会社も趣向を凝らした宣伝を考えるものだが、本作においてはそもそも都内でも一館しか上映されていないという状況こそが問題で、やはり勿体ないと感じてしまう。配信が始まるまでは観難い状況かもしれないが、ダミアン・マッカーシー監督の「視える/Oddity」は、ホラー映画ファンであればオススメできる一作であった。

 

 

6.5点(10点満点)