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映画「ズートピア2」ネタバレ考察&解説 ラストに舞い落ちる”アレ”は何なのか??描こうとしているテーマは重いが、軽やかな演出で描き切る続編!

映画「ズートピア2」を観た。

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第89回アカデミー賞で「長編アニメーション賞」を受賞し、ディズニー・アニメーションの中でも評価の高い「ズートピア」の続編が公開となった。監督は前作から続投の「ミラベルと魔法だらけの家」のジャレッド・ブッシュと、「塔の上のラプンツェル」のバイロン・ハワードの二人で、動物たちがまるで人間のように暮らす世界「ズートピア」を舞台に、夢をあきらめないウサギのジュディと、皮肉屋だが頼れるキツネのニックが再びバディを組み、ズートピアの謎に迫っていくストーリーだ。日本語版声優はジュディ役の上戸彩、ニック役の森川智之らが続投した他、下野紘梅沢富美男、山田涼介、水樹奈々柄本明、髙嶋政宏など声優と共に豪華なタレント陣も参加している。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ジャレッド・ブッシュ&バイロン・ハワード
吹替版の出演:上戸彩森川智之下野紘梅沢富美男、山田涼介、水樹奈々柄本明
日本公開:2025年

 

あらすじ

あらゆるタイプの動物たちが平和に暮らし、「誰でも夢をかなえられる」という理想の楽園ズートピア。ウサギで初めて警察官になるという夢をかなえたジュディは、以前にも増して熱心に任務にあたり、元詐欺師のニックも警察学校を無事卒業して警察官となった。再びバディを組むこととなった2人は、ズートピアに突如現れた指名手配犯のヘビ、ゲイリーを捜索するため、潜入捜査を行うことになる。ゲイリーは一体何者なのか。やがてジュディとニックは、ゲイリーと爬虫類たちが隠すズートピアの暗い過去にまつわる巨大な謎に迫っていき、その中で2人の絆が試されることとなる。

 

 

感想&解説

前作「ズートピア」が2016年公開だったので、約9年ぶりの続編となる本作。「ズートピア」は動物たちがまるで人間のように暮らす世界で、草食動物と肉食動物、身体の大小や種類などさまざまな動物をメタファーとして使いながら、人間の共生と差別意識を描いた、射程範囲の広いアニメーション作品だったと思う。多国籍文化のアメリカだからこそ、そしてディズニーだから生まれた映画だったと思うし、分断された現代から見ると説得力も強い。さらにウサギの警察官は前例がないと言われながら、夢のために頑張るジュディと、キツネというだけで差別されてきたニックのキャラクターは魅力的で、子供たちが観てもシンプルに娯楽映画としての見応えはかなりのものだし、大人が観れば深いメッセージ性に唸らされるというバランスが絶妙だった。

前作のネタバレになるが、動物の種類によってお店で買い物が出来なかったり、識字率の低さでバカにされたりといった直接的な差別描写もありつつ、肉食動物が野生化して凶暴化する「夜の遠吠え」とはアメリカに蔓延するドラッグのメタファーなのだろう。また元副市長が黒幕だったというオチも、草食動物が主導権を握るために肉食動物を貶める計画を虎視眈々と計画していたヒツジのベルウェザーが、権力者であるライオンハート市長にこき使われて、なかなか活躍の場が与えられない女性の立場を表現していて重層的だった。かと思えば「ゴッドファーザー」パロディや、「アナと雪の女王」などのディズニーいじりやカルチャーへの造詣も深く、前作はあらゆる意味で全年齢に向けたエンターテインメント作品だった気がする。

 

「お互いの違いを知り、深く理解し認め合うことで世界はより良くなる。みんな違ってみんな良い。」という普遍的なメッセージを、見事にストーリーを通じて表現した脚本だったし、実写ではなくアニメーションという手法だからこそのテーマを映像化した稀有な作品だった前作。第89回アカデミー賞で「長編アニメーション賞」を受賞しているだけの事はあるし、今後もファンに愛され続ける作品だろう。さて、そんな「ズートピア」の続編だけに、期待のハードルはかなり上がっての鑑賞になったが、結論やはり本作も素晴らしい作品になっていたと感じる。「1」にはなぜか魚や鳥、爬虫類はおらず、哺乳類だけの世界観だったが、本作はそこに踏み込んだ続編になっており、実はそこにも意味があったと描かれるのだ。

 

 

ここからネタバレになるが、今回の続編はハッキリとある国が他国に攻め込み領土にしてしまう”植民地主義”について描いている。100年前には爬虫類と哺乳類は共存しており、ヘビのゲイリーのひいおばあちゃんが異なる種族が共存できる仕組みである、”ウェザー・ウォール”のアイデアを思い付いたが、その特許証をオオヤマネコのパウバートの祖父が上書きしたことが描かれる。さらにそれを目撃したカメの家政婦は毒殺され、ゲイリーのひいおばあちゃんの仕業に見せかけた事により、爬虫類たちはズートピアを追われることになったという訳だ。本作はヘビのゲイリーが元々住んでいた故郷を求め、ジュディとニックと共にこの特許証を巡っての冒険となる。過去を塗り替え、他者を犠牲にしてでも自国の領土を広げようと画策する、寒冷地域のツンドラ・タウンに住むオオヤマネコとは、”どこの国”のメタファーなのかは明らかだし、パレスチナ問題にも踏み込んでいるのだろう。またあえてゲイリーをキリスト教においては、不吉な象徴である”ヘビ”という設定にすることによって、前作からのテーマである種族に対しての偏見というテーマも取り上げているのだと思う。

 

そしてもうひとつの重要なテーマは、”パートナーシップ”についてだ。冒頭のジュディとニックは、前作の大手柄のおかげで世間から一目置かれるバディとなっている。だが密輸入摘発の成果を焦るあまりに無理な追跡をして、ボゴ署長からパートナーセラピーを受けさせられる。そもそも二人はウサギとキツネである上に育った環境も違うため、そもそもの性格は大きく違うのだ。中盤に、警察に追われるニックはジュディに対して、「事件解決は命をかけるようなことではない」と主張し、これに対して正義感の強いジュディは「やはりふたりは違うのかもしれない」と呟くシーンがある。ニックとジュディの生き方の違いがはっきりと可視化された瞬間だが、本作は「それでも良いのだ」という結論に行きつく。それはニックとゲイリーの活躍で心臓に解毒剤を打たれたジュディは復活し、ジュディはニックを助けることで、二人がそれぞれの存在の重要さを認め合うシーンだ。

 

今まで思っていても口にしてこなかったストレートな言葉を伝え、世の中でもっとも大事な存在だと相手に伝え合うニックとジュディの姿は本作の白眉だろう。お互いが違っててもいい、分かり合うには気持ちを素直に言葉で伝えることだという、”世界には色々な人たちが共存している”というテーマから、更にもう一歩吹き込んで、”では分かり合うにはどうしたら良いのか?”を描いてみせた見事な脚本だったと思う。またその対極の存在として、種族が同じでしかも家族でも分かり合えないという”オオヤマネコ”の家族を描き、父親に認められるために暴走する息子”パウバート”というキャラクターを設定することで、本作の主題がハッキリと浮かび上がっていると思う。では”植民地主義”や”パートナーシップ”というテーマの為に重苦しい作品になっているかといえば、まったくそんな事はなく、前作「ズートピア」と同じように、風通しが良い上に軽妙なテンポ感で108分の上映時間はあっという間に過ぎてしまう。

 

しかも前作にもあった映画オマージュもあり、親世代の観客への目配せも抜かりはない。特に終盤の雪の迷路はあきらかにスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」だし、Mr.ビッグの屋敷にいたピンクの服のネズミたちは「パディントン2」の囚人を思い出させる。さらには「レミーのおいしいレストラン」や「塔の上のラプンツェル」のパロディシーンもあったりと、全編に作り手の遊び心が感じられるのだ。前作のラストではニックはジュディに「俺を好きだろ?」と聞くが、今作では「好きだぜ、相棒」と言葉にする。二人の関係はかなり進歩しているのだ。ラストカットの”鳥の羽”は、明らかに次回作への伏線だろう。哺乳類、爬虫類ときて、次回作はまだ描かれていない”鳥類”が登場するのだろうが、世界中でこれだけ特大ヒットしているのだから3作目は9年も待たされないかもしれない。何度も「ハグしてもいいかい?」と聞くゲイリーには近年ディズニーのポリコレを感じるし、前作のインパクトは減少しセリフによる説明が増えた感はあるが、それでも高いクオリティを保った、十分に面白い作品だったと思う。

 

 

7.5点(10点満点)