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映画「おさるのベン」ネタバレ考察&解説 飛び抜けたドジっ娘たちがチンパンジーに追いかけられるだけの、シンプルなB級動物パニック映画!

映画「おさるのベン」を観た。

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「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」「V/H/S 99」「海底47m」などのヨハネス・ロバーツが監督/脚本を手がけ、狂犬病にかかり狂暴化したチンパンジーに襲われる恐怖を描いた、動物パニックホラー。出演はドラマ「デクスター ニュー・ブラッド」のジョニー・セコイヤ、「コーダ あいのうた」のトロイ・コッツァー、「リトル・マーメイド」のジェシカ・アレクサンダーの他、ジア・ハンター、ビクトリア・ワイアントなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ヨハネス・ロバーツ
出演:ジョニー・セコイヤ、トロイ・コッツァー、ジア・ハンター、ビクトリア・ワイアント、ジェシカ・アレクサンダー
日本公開:2026年

 

あらすじ

大学生のルーシーは友人たちとともに、ハワイの森の中にある高級別荘地にたたずむ実家に帰省する。幼い頃から家族として一緒に暮らしてきたチンパンジーのベンとの再会に心躍らせ、プールにパーティと楽しい休暇を満喫するルーシーだったが、いつもは賢くてかわいいベンの様子がどこかおかしいことに気づく。やがて、豹変したベンは人間たちを次々と襲いはじめる。

 

 

感想&解説

2022年日本公開の「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」がゲームファン、映画ファンともに物議を醸したことでも記憶に新しい、ヨハネス・ロバーツ監督による最新作。ヨハネス・ロバーツ監督の代表作といえば、「海底47m」になるかと思うが、個人的には大味なジャンル映画の作家というイメージだ。今作でもマングースに噛まれて狂犬病にかかったチンパンジーが襲ってくるというシンプルな動物パニックホラーだが、本国アメリカでは若い観客を中心にスマッシュヒットしているらしい。日本ではこのタイプの作品は興行的に苦戦しているから、これはパニックホラー映画に対しての国民性なのかもしれない。ちなみに邦題の「おさるのベン」は、アメリカのテレビアニメ「おさるのジョージ」からの引用だろう。

ペットが狂犬病にかかって襲ってくるというプロットは、スティーヴン・キング原作で映画化された1984年日本公開の「クジョー」を思い出す。この映画の場合はコウモリに咬まれてしまったセント・バーナード犬が、飼い主の務める自動車整備工場の中で、たまたま車の修理依頼に来た母子に襲い掛かるという話だった。限定的な空間の中で動物に襲われる映画はたくさんあるが、本作は特に「クジョー」からの影響が強いと思う。予告編でも使われているが、「おさるのベン」の終盤で車の中にいる女性キャラクターが襲われるシーンは、まるで「クジョー」のオマージュシーンのように感じられる。

 

それにしても、本当にシンプルな”B級動物パニック映画”だ。まさにポップコーンムービーという感じで、ホラー映画ファン同士のデートや、飲んだ帰りに深夜の映画館で皆んなで観るには楽しいタイプの作品だろう。深遠なメッセージや考察要素などは微塵もなく、89分という短い上映時間でサクッと終わる。レーティングが「R15+」ということもあり、思った以上にゴア描写はふんだんにあるし、やたらと上映時間が長くて小難しい映画が多い昨今の中では、アレクサンドル・アジャ監督の初期作「ピラニア3D」などと同じ匂いを感じる、潔いくらいの”B級っぷり”は好感が持てる。ただし個人的には、正直ストーリーもキャラクター設定もガバガバなので何度も観たくなるタイプの作品ではなかった。

 

 

主人公の女子大生ルーシーは2人の友人とともに、父と妹のいる実家に帰省するところから映画は始まる。トロイ・コッツァー演じる”ろうあ”の父親は、今度映画化の話があるくらいのベストセラー小説家であり、実家はハワイの森の中にあるプール付きの大豪邸だ。ルーシーは母親を病気に亡くしているが、妹も含めて家族関係は良好であり、幼い頃からペットにはベンというチンパンジーを飼っている。そのベンがある日、マングースに噛まれて狂犬病を発症したことから、ルーシーの家族や友人に襲い掛かるというストーリーだが、まさに往年のホラー映画におけるティーンの主人公たちを思い出させるダメっぷりで、観客をヤキモキ&イライラさせてくる。とにかく本作の主人公たちは、飛びぬけて”おっちょこちょい”なのだ。

 

ここからネタバレになるが、ベンに追いかけられてプールに飛び込んだ挙句、下には断崖絶壁しかない事を知っているはずなのに、海に向かって助けを求める謎の行動から始まり、ベンが狂犬病にかかっていて噛まれたり引っかかれると致命傷になると知りながら、棒などを探す事もなく、いきなり突進して突き落とそうとするイケメン君の無謀な行動や、ベンのスキを突いて逃げるべきなのに、全員がプールで仲良く寝落ちするメンタリティや、やっとケータイを手に取って後は静かに部屋から出れば良いだけなのに、爆音で鳴るテレビのリモコンを踏んでしまうおっちょこちょい加減や、車のキーを手に取り死に物狂いで屋敷から抜け出して車に乗ったは良いけど、ちゃんと違う車だったり、挙句、ガラスの破片がいっぱいの床を躊躇なく歩いて思いっきり踏んで怪我したりと、このシーンでは「君はダイハードを観ていないのか?」と説教したくなる。

 

作劇としても、序盤に描かれるはずのチンパンジーが愛する家族だった頃の描写が少な過ぎるため、ベンがモンスターに変化したことへの恐怖と驚きがなく、序盤から冷血な殺人鬼が暴れるだけの既視感が強い、ただのモンスター映画になってしまっている。家族として人間と仲良く暮らしていたチンパンジーに、まさか命を狙われるというハプニング性の演出が薄い上に、中盤以降はルーシー側にもほとんどベンを殺すことへの葛藤もないので、この”家族同然のペットから襲われる”という設定自体にあまり意味がなくなってしまっているのだ。さらに主人公たちが金持ちの甘やかされた若者たちでイマイチ感情移入できないし、トロイ・コッツァーの父親は良い役柄だったと思うが、彼の耳が聞こえないが故に映画が無音になるという描写は、彼の出世作である「コーダ あいのうた」そのままで新鮮味がない。

 

緊迫したシーンで都合よくなり出すケータイは、過去のホラー映画で何度観たか分からないし、破った扉から殺人鬼が顔を出す通称”シャイニングごっこ”も、流石にあざとすぎて白けてしまう。ベンは「ハロウィン」のマイク・マイヤーズオマージュなのかと思わされるほど、音楽はジョン・カーペンター監督の「ハロウィン」ぽく、ラストに死んだと思ったらもう一回襲ってくるというお約束展開もしっかり踏襲し、ほとんどホラーパロディ映画を観ている気分にさせられる。唯一、男の子のアゴを引き裂いた後、彼の目の前でそのアゴをしゃぶる場面はフレッシュなゴアシーンで良かったが、ホラー映画としてはもう少し新しい表現を見せて欲しかったと感じる。89分という上映時間なので観ている間はそれほど退屈しないが、恐らく1週間後にはすっかり内容を忘れてしまっているだろう作品だった。

 

 

4.0点(10点満点)