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映画「君のクイズ」ネタバレ考察&解説 「クイズ・ショウ」「スラムドッグ$ミリオネア」に並ぶ、和製”クイズ番組”映画!終盤までは最高に面白いミステリー作品の佳作!

映画「君のクイズ」を観た。

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直木賞受賞作家・小川哲が2022年に発表しベストセラーとなったミステリー小説「君のクイズ」を映画化。監督は「水曜日が消えた」「ハケンアニメ!」「沈黙の艦隊」シリーズの吉野耕平。出演は「あの人が消えた」「ラストマイル」の中村倫也、「Dr.コトー診療所」「ゴジラ-1.0」の神木隆之介、「新解釈・幕末伝」「アンダーニンジャ」のムロツヨシ、「ある閉ざされた雪の山荘で」「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」の森川葵、「交渉人 真下正義」「日輪の遺産」のユースケ・サンタマリアなど。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:吉野耕平
出演:中村倫也、神木隆之介、ムロツヨシ、森川葵、ユースケ・サンタマリア
日本公開:2026年

 

あらすじ

賞金1000万円をかけた生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝戦。お茶の間が注目するなか、「クイズ界の絶対王者」こと三島玲央と、「世界を頭の中に保存した男」といわれる本庄絆は、ともに優勝への王手をかける。そして迎えた最終問題の早押しクイズで、本庄はまだ問題が1文字も読まれていないにも関わらず回答ボタンを押す。どよめく会場をよそに、なんと本庄は正解を言い当て優勝を果たす。あり得ない出来事に、三島は困惑を隠しきれない。本庄はなぜ不可能とも思える「ゼロ文字正答」を成し得たのか。三島はその謎を解明すべく独自に調査するが。

 

 

感想&解説

予告編で流れた「君のクイズ」のトレーラーを見て、面白そうな邦画ミステリーだと感じ鑑賞。ちなみに原作は未読である。出演は「あの人が消えた」「ラストマイル」などの中村倫也、「Dr.コトー診療所」「ゴジラ-1.0」の神木隆之介、「新解釈・幕末伝」「アンダーニンジャ」のムロツヨシ、「ある閉ざされた雪の山荘で」「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」の森川葵、「交渉人 真下正義」「日輪の遺産」のユースケ・サンタマリアなど実力派の豪華キャスティングで、彼らの演技が本作を見応えのある作品にしていると思う。また吉野耕平監督は、2020年の「水曜日が消えた」で長編劇場監督デビュー後、2022年の「ハケンアニメ!」では第46回日本アカデミー賞では「優秀作品賞」「優秀監督賞」を含む10部門を受賞しており、高い演出力を持ったクリエイターだ。

クイズ番組をテーマにした映画といえば、ロバート・レッドフォード監督による1994年日本公開「クイズ・ショウ」や、ダニー・ボイル監督による2009年公開「スラムドッグ$ミリオネア」が有名だろう。「クイズ・ショウ」は、1950年代にアメリカで実際に起きたクイズ番組不正事件を扱った作品で、3ヶ月にわたり勝ち続け国民的英雄となった男は実は、番組制作側から事前に答えを授けられていたというストーリーで、アメリカ社会の影をメディアの不正というテーマで描いた社会派作品だ。一方で「スラムドッグ$ミリオネア」は、無学であるはずの貧しい青年が国民的なクイズ番組で次々に難問に正解したことで不正を疑われるが、実は自らの過酷な生い立ちと経験から答えを導き出していたというエンターテイメント作品だったが、この2作品はおそらく本作の内容に少なからず影響を与えたのではないかと想像する。

 

「君のクイズ」も上記2作品と同じく、テレビのクイズ番組を舞台にしている。まだ問題が1文字も読まれていないにも関わらず、正解を回答した”ゼロ文字正答”の謎に迫っていくというミステリー作品だ。ここからネタバレになるが、当然、神木隆之介演じる”本庄絆”は、問題を聞く前に正解を出した事でヤラセを疑われた上に失踪し、本作の主人公である中村倫也演じる三島玲央は勝負に負けたことに加えて、クイズそのものを愛するあまりこの事態に憤りを感じる。そして生放送クイズ番組の総合演出家である坂田泰彦が提案する”検証番組”に出演することで、他のクイズプレイヤーと共にこの謎を解明していくという展開になる。基本的には検証番組では決勝戦のVTRを観ながら、天才クイズプレイヤーは設問に対してどのように考えて解答まで行き着くのかを検証し、その過程でおかしな点はなかったかを検証していくのだが、まずこの展開が面白い。

 

 

まずは前提となる問題文を読んでおいて、その後に関連する質問をする「ですが問題」や、答えが確定する分岐点の前に賭けで回答する「ダイブ」といったクイズ業界のテクニックや専門用語を挟みながら、観客に分かりやすく且つロジカルに解説していく手法は見事だし、彼らの頭の中をビジュアルで見せていくVFXも映画らしい演出で観ていて楽しい。そのうち本庄が勝ち続けた番組は、すべてプロデューサーの坂田が手掛けた番組だったことが発覚したことで、一気にヤラセ疑惑が強くなる展開や、坂田の”視聴者が観たいのは演者が極限状態で魅せる表情なんだ”というセリフが、後半に伏線になっていたりと練られた脚本にも唸らされる。全体を通してミステリー作品として破綻がないので、安心して観ていられるのだ。

 

結局、本庄が”ゼロ文字正答”できたのはヤラセではなく、坂田が全ての問題を過去の番組から引用し、本庄と三島のどちらかが必ず答えられるような内容にしていたこと、さらに坂田が過去の番組出演時の二人のリアクションから、感情が揺さぶられて”魅力的な顔”が撮れるような最終問題を出題していたこと、さらにそれを本庄が先読みしたことで、”ゼロ文字正答”が達成できたという答えに行き着いた三島。本庄は学生時代にイジメにあっており、それによって橋から飛び降りさせられ大怪我を負った経験があったが、「ママ、クリーニング小野寺よ」という解答は、イジメに遭っていた山形県に実在するクリーニング店だったのだ。”あれは本庄の魔法だった”という解答で番組をうやむやにして終わり、再びテレビ局内で隠れていた本庄と対峙する三島。そして、ここから映画はクライマックスとなっていく。

 

正直、ここまでは最高に面白かった本作だが、ここから失速していく。まず過去の番組内で「ママ、クリーニング小野寺よ」という解答をした後、感情的にしゃがみ込んでしまったように見えたのは、入院中に隣のベッドにいたおじいさんの下手な歌を思い出して、笑いが堪えられなかった為だという理由はかなり無理があるだろう。またこの”ゼロ文字正答”を行うことで世間が大騒ぎし、ひらすら正解を出し続けるだけの人生だったが、やっと雲隠れできると思ったと今回の動機を語り始める本庄。一方で三島にも流産した彼女と別れたことを後悔しており、「これまでの人生、どこで間違えたんだ?」と悩んでいたことが劇中を通して語られる。人生において間違った選択をしてしまった二人が、明確な答えがあり正解することで他人から肯定される”クイズ”に没頭し、ここまでの人生を歩んで来たことが描かれるのだが、どうにも前半の快調だったミステリ部分に比べて、映画がウェットで鈍重になってくるのだ。

 

感傷的なナレーションと共にクイズプレイヤーたちが大家族の父親だったり、痴ほう症の母親を抱えていたり、コンビニでクレーマーに対応している姿が描かれていたが、クイズにリンクさせなくてもそれぞれに人生があって、自分なりに正解を選びながら生きてるなんてことは観客も分かりきっていることなので、わざわざ結構な尺を使って描かなくても良かったと思う。ラストの再び彼女に会いに行くシーンだけで、十分に意図は伝わるし成立するので、終盤の15分がどうしても蛇足に感じてしまったのは否めない。謎解きパートのテンポ感が素晴らしく、ミステリとしても面白かったので、感傷的でウェットなシーンでヒューマンドラマ色を足してしまったのは勿体なかった。冒頭からSwitch版「UNDERTALE」のパッケージが大きくフォーカスされ、これがエンドクレジットの最後まで続くので、プレイスメント広告なのかと思ってしまったが、なにかタイアップでもあるのだろうか。これもややノイズだった。ただクイズ問題をテーマにしたミステリは新しい切り口だったし、終盤までは本当に先の読めない面白いミステリ作品だったと思う。

 

 

7.0点(10点満点)