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映画「Michael/マイケル」ネタバレ考察&解説 音楽そのものよりもマイケルの人生にフォーカスした伝記映画!マイケル・ジャクソン入門編の映画として最適!

映画「Michael/マイケル」を観た。

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「トレーニング デイ」「マグニフィセント・セブン」「イコライザー」シリーズのアントワン・フークア監督がメガホンをとり、2009年に死去してからも絶対的な影響を与え続けている、「キング・オブ・ポップ」ことマイケル・ジャクソンのキャリアの一端を描いた伝記映画。主演のマイケル・ジャクソン役にはマイケルの実の甥であるジャファー・ジャクソンが役者初挑戦している他、幼少期のマイケルをジュリアーノ・クルー・バルディ、父ジョセフをコールマン・ドミンゴ、母キャサリンをニア・ロング、音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズをケンドリック・サンプソン、長年の弁護士ジョン・ブランカをマイルズ・テラーらが演じている。製作に「ボヘミアン・ラプソディ」のグレアム・キングが名を連ねていることでも話題だ。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:アントワン・フークア
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・クルー・バルディ、コールマン・ドミンゴ、ニア・ロング、マイルズ・テラー
日本公開:2026年

 

あらすじ

野心家の父ジョセフのもとで厳しいレッスンを受け、兄弟グループ「ジャクソン5」のメンバーとして幼くして成功を収めたマイケル・ジャクソン。やがて名プロデューサーのクインシー・ジョーンズと出会った彼は、ソロアーティストとして数々の歴史的名曲を生み出し、瞬く間に時代の寵児となっていく。しかしその栄光の裏には、早熟の天才ゆえの孤独感や、強権的な父の呪縛、家族への愛と自分の中にあふれるビジョンとの間で葛藤するひとりの人間の姿があった。

 

 

感想&解説

本国アメリカで公開されるやいなや、クイーンの音楽伝記映画で日本でも大ヒットした「ボヘミアン・ラプソディ」の初動を軽々と追い越し、音楽伝記映画の歴代No.1オープニング記録を樹立した他、公開から10日間で4.3億ドルを突破し特大ヒットしている「Michael/マイケル」が日本でも公開となった。日本でもマイケル・ジャクソンを演じた主演のジャファー・ジャクソン&ジュリアーノ・ヴァルディと、プロデューサーのグレアム・キングが訪れたレッドカーペットの様子がニュースでも報じられ、本作は凄まじい熱量でファンから迎えられている。2009年にマイケル・ジャクソンが亡くなってからすでに17年が経過しているが、彼が今なお世界最高峰のスターであることを改めて思い知らされる映画化だろう。今回はIMAXで鑑賞した。

本作「Michael/マイケル」は、とにかく特徴的で断片的なエピソードが繋げられていて、マイケル・ジャクソンについて知らない方には入門編の映画として最適だと思う。映画冒頭からアメリカ・インディアナ州で生まれた少年マイケルは、少年期からジャッキーやティト、ジャーメイン、マーロンらの兄たち4人とともに「ジャクソン5」で音楽活動を行っていたこと(エンドクレジットでは、2024年に亡くなったティトへの追悼があった)、その裏には父親ジョセフの体罰も辞さない厳しいしごきがあったこと、マイケルのボーカルとパフォーマンスによってソウルミュージックやR&Bの有名レーベル”モータウン”に見いだされ、デビューシングルの「I Want You Back」や続く「ABC」によってスターダムにのし上がっていったこと、マイケルの年齢が11歳から8歳に詐称されていたことなどが、矢継ぎ早に語られていく。

 

一方でグループ結成時には血縁関係のないバンドメンバーがいた事や、メインボーカルがジャーメインからマイケルにスイッチされたこと、1975年にはエピック・レコードに移籍したことを機にグループ名が「ジャクソンズ」に変更になった事などはほぼ描かれないし、プロデューサー”クインシー・ジョーンズ”が手掛ける以前のモータウン時代における4枚のソロアルバムについてはほとんど言及がなく、まるで1979年にリリースされた5枚目のアルバム「オフ・ザ・ウォール」からソロキャリアが始まっているような描かれ方だ。また1978年のシドニー・ルメット監督作「ウィズ」で音楽監督を務めたクインシー・ジョーンズとの出会いもオミットされていて、いきなり二人が蜜月の関係でリリースした傑作アルバム「オフ・ザ・ウォール」が大ヒットしている様子を描いていく。ちなみに劇中でマイケルは「もっと自分を表現したいんだ」と言っていたが、このアルバム収録曲では3曲の作詞/作曲を手掛けており、「今夜はドント・ストップ」がソロ作品では初めてマイケル自身による作詞/作曲となっている。

 

 

ここからネタバレになるが、本作はマイケルの音楽的な才能や曲作りの苦悩、曲が生まれたエピソードといった観点よりも、とにかく”マイケル・ジャクソン”という人間そのものに寄り添った作品なのだと思う。モータウン時代の恩師であるダイアナ・ロスとの関係や、ポール・マッカートニーやスティービー・ワンダーといったアーティストとのコラボレーションについても語られず、クインシー・ジョーンズがプロデュースし、ビリー・ジョエルやライオネル・リッチーなど当時のトップスターが参加した、1985年のアフリカ飢饉救済を目的としたチャリティソング「ウィ・アー・ザ・ワールド」についても一切描かれない。1982年リリースの「スリラー」製作シーンで「ビート・イット」のギタープレイが”エドワード・ヴァン・ヘイレン”であることも、クインシー・ジョーンズによる一言のセリフだけで処理されている位だ。

 

その代わりに描かれるのが、”父親ジョセフとの確執”と”マイケルの自立”の物語だ。少年期にジョセフから「目を見ろ」と言われ続けてしごかれたマイケルが、”ヴィクトリー・ツアー”の最後にジャクソンズから脱退することを、ステージ袖にいる”父親の目を見て”告げることで、自分自身の人生を生きることを宣言するシーンは感動的だった。劇中でも弁護士のジョン・ブランカを雇い、マネージャーとしての職を解雇し二人の間に軋轢が生まれるシーンがあったが、後年でも子供の頃から父親から指導という名の元に、虐待され搾取されてきたと告げていたマイケルにとって、本作最大のヴィラン(悪役)は父親ジョセフだと描かれており、彼からの脱却は本作の大きなテーマになっている。チンパンジーであるバブルスを飼うシーンや鼻の整形などに結構な尺を使って描かれていることからも、本作は”音楽”そのものではなく、マイケルの辿った人生を描きたい作品なのだろう。CM撮影中の事故も描かれていたが、この火傷の後遺症を和らげるために服用していた薬によって、薬物中毒になってしまった事も有名だ。

 

マイケル自身については映画の「雨に唄えば」を愛し、どんなに大物スターになっても、母親とチャップリンの映画を見ながらポップコーンを食べるような人物だと描かれる。劇中で何度も登場するのは”ピーター・パンとネバーランド”だが、本作のマイケルは子供の心を持ち続ける無垢な人物だと表現されるのだ。マイケルは88年にカリフォルニアにネバーランドを購入し、93年には児童性的虐待で起訴を起こされるが、すでに無罪と示談が確定しているにも関わらず、このあたりの顛末は本作では全く描かれない。どうやらアメリカのメディアからはこの点を批判されたようだが、本作はあくまでもジャクソン5を経て、父親と反目しながらも「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」「バッド」という音楽史に残るモンスターアルバムをリリースし、表現者としてアーティストとして最盛期にあった時期のマイケル自身にフォーカスを当てた映画化なのだ。これはこれで観客が求める、美しいマイケル・ジャクソンの映画化だと言えるだろう。

 

それにしてもマイケル・ジャクソンは、映像化につくづく向いているアーティストだと思う。ここが過去に映画化されたエルトン・ジョン、ブルース・スプリングスティーンなどとの最大の違いだろう。黒人であるがゆえにMTVでの放送を渋られるが、レコード会社から圧力をかけて放映させたことによって爆発的な人気を博したことが描かれていたが、「今夜はビート・イット」のMVではロサンゼルスのギャングとの共演や、映画「狼男アメリカン」における監督ジョン・ランディスとリック・ベイカーによる「スリラー」のMVなどは、今でも伝説的な作品として名を残している。それもこれも楽曲のみならず、マイケルのダンスが超絶的に魅力的だからこそだろう。これについては主演のジャファー・ジャクソンが特に素晴らしく、特にラストシーンにおける「Bad World Tour」のパフォーマンスは、マイケルが乗り移ったようなダンスシーンで圧巻の一言だったと思う。全体的にはやや薄味でマイケル・ジャクソン入門編の側面が強い作品だと思うが、それでも大画面のスクリーンで再び彼のパフォーマンスが観られることは嬉しい体験だった。

 

 

7.0点(10点満点)