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映画「ロングウォーク」ネタバレ考察&解説 若者の”友情物語”の側面も強いサバイバルスリラー!志願した若者たちの集団が死に向かって歩き続けるというイメージは、まさに戦地に向かう兵士の姿のよう!

映画「ロングウォーク」を観た。

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『コンスタンティン』『アイ・アム・レジェンド』『ハンガー・ゲーム』シリーズのフランシス・ローレンス監督がメガホンをとり、『ストレンジ・ダーリン』のJ・T・モルナーが脚本を手がけたサバイバルスリラー。スティーブン・キングの別名義である”リチャード・バックマン”の著作として出版された、初期作『死のロングウォーク』の初映画化である。出演は『リコリス・ピザ』のクーパー・ホフマン、『エイリアン ロムルス』のデビッド・ジョンソン、『スター・ウォーズ』シリーズのマーク・ハミル、『ゲティ家の身代金』『ムーンフォール』のチャーリー・プラマー、『アントマン』『ハロウィン』のジュディ・グリアなど。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:フランシス・ローレンス
出演:クーパー・ホフマン、デビッド・ジョンソン、マーク・ハミル、チャーリー・プラマー、ジュディ・グリア
日本公開:2026年

 

あらすじ

戦争により国家が分断された近未来のアメリカでは、困窮する社会への光として「ロングウォーク」という競技が国をあげて開催されていた。ひたすら歩き続けるだけで破格の賞金と願いを1つかなえる権利を獲得できるこの競技に、選ばれた50人の若者たちが挑戦する。参加者に課されるのは「時速4.8キロをキープすること」「速度が下回ると警告開始」「3つの警告で即死」「最後の1人になるまで歩き続けること」という4つのルール。若者たちは装甲車に囲まれ、銃を向けられながら、休息も睡眠も許されない極限状態のなかで必死に歩き続ける。

 

 

感想&解説

本作『ロングウォーク』は『痩せゆく男』『ランニング・マン』『レギュレイターズ』などを発表した、リチャード・バックマンの1979年発表の原作『死のロングウォーク』の映画化だ。”リチャード・バックマン”とはアメリカの大作家スティーブン・キングの別名義であり、今年1月に『ランニング・マン』も日本公開されたばかりだが、この『死のロングウォーク』はリチャード・バックマンにとっての処女作であり、本作『ロングウォーク』は初の映画化作品となっているが、小説版とはオチが変えられており、映画版ならではのエンディングが用意されている。ここからネタバレでレビューしていきたい。

映画の内容としては、10代の若者たちがひたすらアメリカの道を歩きながら会話するだけというものなので、さぞかし地味な画面が続くかと思いきや、これが意外と飽きさせない演出が凝らされている。彼らにはいくつかのルールがあり、「歩く速度は時速4.8キロをキープすること」「その速度が下回ると警告される」「警告は1時間経つと1つ消滅する」「3つ警告が溜まると銃殺」「最後の1人になるまで歩き続けること」というもので、靴の中に石が入ったことで少し歩みを止めると警告が溜まったり、排せつ行為も命懸けだったりで、キャラクターたちは常に銃を突きつけられる恐怖と戦うことになる。序盤で最年少のカーリーが無残に銃殺されるシーンは、ショッキングそのもので、ゴア描写も容赦ないのも特徴だろう。

 

そんな中で友情を育むのはクーパー・ホフマン演じる”レイ・ギャラティ”と、デヴィッド・ジョンソン演じる”ピーター・マクヴリーズ”の二人だ。50人の参加者の中、あまりにも過酷なロングウォークはなんと5日間にも及び、中盤以降彼らはほとんど狂気の中で歩みを進めて行くことになる。他人と会話しない一匹狼や、他人に悪態ばかりをついて怒らせて殺してしまう悪役など、様々なキャラクターがいる中で、レイとピーターはお互いに肩を貸すことで歩きながら眠ったり、お互いの境遇を語り合ったりと苦しい時も励まし合いながら、常に助け合って進んでいく。本作はジャンルこそ”サバイバルスリラー”のようだが、実は男同士の”友情物語”の側面も強いのだ。

 

 

だがその一方でスティーブン・キングらしい、一般市民の”選択肢のない閉塞感”を描いた作品でもある。政府や体制が人の生き死に完全にコントロールしており、そのサバイバルを同じ市民が娯楽として消費するという構造は、キング原作の『ランニングマン』とテーマは同じだ。『ランニングマン』がTVリアリティショーを舞台に、懸賞金狙いの視聴者や殺人ハンターの追跡から逃げ切ることができたら莫大な賞金がもらえ、捕まったら殺されるというデスゲームだったのに対して、本作は歩くのを止めた時点で軍人に殺されるという違いだけで、ほとんどこの2作品は同じ線上にあるストーリーだろう。『死のロングウォーク』という原作が描かれたのは、アメリカがまだベトナム戦争の影響下にいる時代で、若者たちの集団が死に向かって歩き続けるというイメージは、まさに戦地に向かう兵士の姿に重なる。

 

本作の設定としてアメリカは内戦による分断があり、国民は飢えて疲れているからこそ、娯楽として”ロングウォーク”を見せることによって、市民の労働意欲を高めることを目的としているという説明があるが、このイベントにはアメリカ中の若者が応募するらしい。”再び、強いアメリカを!”とマーク・ハミル演じる少佐が若者たちを鼓舞させていたが、この作品で描いていることは2026年の現代に観ても絵空事ではなく、リアリティがあるのが恐ろしい。敬礼する警官、ぼんやりと道端で見守る住人たちのいる世界はディストピアそのものだ。また一方で、多額の賞金や夢のために”歩き続けないと死ぬ”というのも、YouTuberやSNSインフルエンサーを想起させる現代的なテーマであり、これが60年代に書かれたことに驚かされる。

 

それにしてもストーリーの設定としては、参加者はたったの一人しか生き残れない状況でお互いに励まし合って助け合う姿は美しいが、やはり違和感は残る。このゲームは最後の一人になるまで、ゴールはないのである。このルールは事前に出場者に共有されているという説明があったので、最初に皆が集まってくるシーンであれほど和気あいあいとはならない気がする。事前に49人は絶対に死ぬことが分かっているゲームなのだから母親はもっと止めるべきなのだろうが、やはりこれも戦争に自ら志願する若者の姿が重ねられているのだろう。アメリカは若者の志願兵が多いと言われているが、彼らは軍で何年か務めると奨学金が支給されるという金銭的な目的や、愛国心や自尊心などによって自ら戦地に向かったらしい。それにしてもクーパー・ホフマンはちょっとポッチャリし過ぎで、5日もぶっ続けで歩けるようには見えないし、ラストのマーク・ハミル演じる少佐もあの状態で、さすがにマクヴリーズに実弾入りの銃をあっさりとは渡さないだろうと思う。

 

レイ・ギャラティの夢を引き継ぎ、多額の賞金を捨ててピーター・マクヴリーズは少佐を殺すが、また暗闇に向かって歩き出す場面で映画はエンドクレジットとなる。彼の”ロングウォーク”という地獄は何も終わってないのだ。ちなみに小説版ではレイと少佐の息子であるステビンズの二人が残り、最終的にはレイが勝つのだが、彼はすでに正気を失っていて暗闇に向かって走り出すという救いのない展開となる。映画版ではやはり友情物語としての側面を強調しているのだろう。”瞬間を生きる”青年たちの姿を描いた、スティーブン・キングらしい一作だったと思う。それにしても夢を持つ若者たちが、一人一人射殺されていくシーンはかなり嫌な気分になるし、排せつ系の汚いシーンも多く、確実に観る人を選ぶ作品だと思うが、『ハンガー・ゲーム』シリーズを手掛けたフランシス・ローレンス監督は、このデスゲームを手堅くまとめたと感じる。

 

 

6.5点(10点満点)