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映画「オブセッション 災愛」ネタバレ考察&解説 あのラストシーンを解説!新鋭のYouTuber出身監督が放つ、怖くて楽しいホラー映画の傑作!

映画「オブセッション 災愛」を観た。

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YouTubeで配信した長編ホラー動画で注目を集めた、コメディアン&新鋭クリエイターのカリー・バーカーによる劇場映画監督デビュー作。新人監督による製作費100万ドル未満の作品でありながら、『スター・ウォーズ マンダロリアン&グローグー』や『スーパーガール』など超大作の興行収入を抜いて、社会現象を巻き起こした低予算スリラーホラーだ。公開からわずか24日間で製作費100万ドル未満に対し、200倍を超える驚異的な興行収入を記録した作品らしい。出演は『クルーガー 絶滅危惧種』などのマイケル・ジョンストン、テレビドラマ『スーパーマン&ロイス』や『トラップハウス』のインディ・ナバレッテなど。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:カリー・バーカー

出演:マイケル・ジョンストン、インディ・ナバレッテ、クーパー・トムリンソン、メーガン・ローレス

日本公開:2026年

 

あらすじ

孤独で内向的な青年ベアは、恋心を寄せている女性ニッキーと距離を縮めたいとの思いから、願いをかなえてくれるという不気味なまじない「ワン・ウィッシュ・ウィロー」に手を出してしまう。しかし、純粋だったはずの恋愛感情は次第に執着(オブセッション)へと変貌し、ベアは想像を絶する惨劇にのみこまれていく。

 

 

感想&解説

公開からわずか24日間で製作費100万ドル未満に対し、200倍を超える驚異的な興行収入を記録した他、『ゲット・アウト』や『WEAPONS/ウェポンズ』の興行収益も抜き去り、本国アメリカでは大ヒットを記録している話題のホラー映画『オブセッション 災愛』がいよいよ日本でも公開となる。あのブラムハウス・プロダクションズのジェイソン・ブラムが製作総指揮を執り、今年のアカデミーノミネートもありうるのでは?と言われている超話題作だ。監督したのはカリー・バーカーというコメディアン&YouTuberで、なんと本作が長編映画デビュー作となるが、近年でも2023年の『トーク・トゥ・ミー』で成功を収めたフィリッポウ兄弟がYouTuberだったし、近年のハリウッド映画製作現場へのYouTuberの躍進は目覚ましいものがある。

そして本作『オブセッション 災愛』は、恐ろしくも楽しいホラー映画の傑作だ。演出としての”ジャンプスケア”もかなり多いが、決してそれだけに留まらず、観客を精神的に追い詰めていくことで、これだけ生理的な怖さを感じさせる洋画ホラーは久しぶりだった。この映画では幽霊もゾンビも悪魔も登場しないが、とにかく理屈の通じない狂人を相手にしている時の怖さをたっぷりと感じることが出来る。そして恐怖の対象が誰でもが想像できる”人間の狂気”だからこそ、この映画は本当に恐ろしいのだ。大きなカテゴリーとしては、願いが叶うことで大事なものを失うという”猿の手”ジャンルであり、ストーリーとして目新しいものがある訳ではないと思う。だがYouTuber出身の監督らしく、観客を画面に集中させて興味を持続させる事に成功しており、各シーンの演出が効果的だ。ここからネタバレでレビューしたい。

 

物語の概要としては以下の通り。楽器店で働くベアは同僚のイアンとサラ、ニッキーと共に同じ店で働いているが、その中でもニッキーに恋心を抱いている。ダイナーでニッキーへの告白の練習をしたりと気持ちを伝えたいが、飼い猫のサンディが間違って薬を摂取して死ぬという想定外の事故が起こってしまいベアは落ち込む。その一方で、どうしても気持ちを伝えたいベアはニッキーへのプレゼントを探していたが、”願いの柳”という願いを叶えるアイテムを雑貨店で見つけて購入する。皆で集まって飲んだその夜、ベアがニッキーを家まで送っていくという展開になり、彼女から自宅の前で「私のこと好きなの?」と尋ねられるが、ベアは怖じ気づき本心を打ち明けられずにそれを否定してしまう。そんな自分に嫌気が刺したベアは”願いの柳”を折り、”ニッキーが世界中の誰よりも自分を愛してくれるように”と願ってしまう。

 

 

するとニッキーが再び車の前に現れ、突然ベアの家に泊めてほしいと言ったかと思うと、強引に家に転がりこんでくる。そしてベッドでキスした後にいきなり奇声を発したりと、全くいつもと違う様子を見せ始める。そしてその夜から、明らかに彼女の言動が異様になっていく。その後、二人は正式に付き合いだすが、ニッキーの父親は癌ではなく彼女が嘘を付いていたことが発覚したり、ゴミ袋から猫サンディの死体を取り出し、その肉でサンドイッチを作ったり、ドアにテープで目張りをしてベアを家から出さないようにしたり、夜中に暗がりから寝顔を覗いてベアの髪を切ったりと、ニッキーの奇行がエスカレートしていきベアは困惑する。パーティでも友人の前でいきなり自傷したりと常軌を逸していくが、そこから友人だったイアンとサラの命も巻き込みながら、ベアは地獄のような日常を余儀なくされていく。

 

序盤のニッキーは浮浪者にお金を恵んだり、お酒を自ら奢ったりと自立した女性として描かれる。また将来は作家志望で、”ロマンスではなく、ラブストーリーが書きたい”という明確な夢を持っている。可愛くて魅力的な女性だが、冒頭からベアの友人であるイアンは彼の告白が上手くいかないことを願っているような言動を取る。告白のシミュレーションをしているダイナーの場面では、目の前の女性には響いている”真摯な言葉”を彼は全て否定して、あえてニッキーの嫌いな言葉を言わせようとする。その姿に冒頭から違和感を覚えるが、これは後半の展開の伏線になっている。イアンとニッキーはいわゆるセフレの関係だったらしい。そしてもう一人の女性サラはベアに好意を寄せているという、若者らしい複雑な”四角関係”の中、ひとつだけ願いが叶うとされている「願いの柳」の効果で、突然ベアはニッキーから猛烈に好意を寄せられる事になる。この一見、仲の良さそうな人間関係の中で、実は彼らはお互いの腹の内を見せていないのだ。

 

とにかく本作はニッキーを演じた、インディ・ナバレッテが最高だ。特にパーティシーンにおける「左隣の人とキス」の顔芸にはこの映画の特徴が詰まっていて、傑作ホラー映画の特徴である”恐怖と笑い”が混在している名シーンだった。この映画のニッキーの行動は、どれも心底怖い。特に車の中でサラがブロックで顔面を殴打して殺されるシーンには、心底震え上がってしまったし、家を出るというベアに対してニッキーの挙動がおかしくなり、遂にはナイフを持ち出すシーンには背筋がゾクゾクさせられた。また突然大声を出したり、セリフを言うニッキーの表情を闇で隠してしまうことで、彼女が今どんな顔でこの言葉を言ってるのか?が分からずに気味悪いのだが、これらは理屈の通じない相手への生理的な恐怖感だ。恋人が突然ヒステリックになったり、突拍子もない行動に出たり理不尽なことを言われる事に対しての、絶望感や恐怖心を表現しているのだろう。先ほどの人間関係の複雑さと相まって、この映画がアメリカの若年層にウケているのは分かる気がする。そしてニッキーのカーペットの上で放尿したり、ベアの匂いに敏感だったりトイレまで着いてくる行動の数々は、猫を彷彿とさせる。ベアは死んだ飼い猫のサンディを心底愛していたので、ニッキーはその代わりになろうとしていたのかもしれない。序盤にニッキーがサンディの死体を持ち出し、供え物をして祀っていたシーンがあったが、彼女は猫のサンディとシンクロしていた可能性はあると思う。

 

ニッキーが度々、自傷するのは身体の中に別人格がいて、自らを殺して欲しいからだと想像する。ベッドの中で寝ているシーンで、彼女が「私を殺して」というのは、本来のニッキーが意識をコントロールしているからだろう。優柔不断で意気地なしのベアが起こした行動によって、ニッキーも被害を被った犠牲者なのだ。ラストでベアは銃で自殺を試みるがどうしても死にきれず、猫が死んだ薬を自ら飲んで自殺しようとするが、それでも途中でそれを吐き出して生きようとする。ところが突然、何かにとりつかれたように立ち上がるとリビングにいるニックの元に行き、微笑みあいながら二人は抱き合う。机の上に折られた”願いの柳”があったが、これはニッキーが閉じこもってしまったベアに対して、”すぐに自分を愛してくれるように”と願ったのだろう。それによってベアは即座に部屋を出てしまうことで、死を遂げてしまう。そしてベアが死んだことによって、正気に戻った悲痛なニッキーの泣き声でこの映画は終わる。まったく救いのないバッドエンドだが、本作にはそれが相応しい気がする。それにしても新世代の監督から、これだけ怖くて面白いホラー映画が生まれたことは素直に嬉しい。カリー・バーカー監督は、どうやら名作『悪魔のいけにえ』のリブートにも抜擢されたらしいが、早く次回作が観たい監督だ。

 

 

8.5点(10点満点)