映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.405:「RUN/ラン」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は405本目。タイトルはアニーシュ・チャガンティ監督による、2021年日本公開作品「RUN/ラン」。特典映像としては、「インタビュー:サラ・ポールソン/キーラ・アレン/アニーシュ・チャガンティ監督」「劇場予告編」で計31分が収録されている。「インタビュー」では、サラ・ポールソンが「原案を読んですぐに興味をそそられたわ。出てくるのは名もなき母と娘だけで、それ以外の登場人物は1人か2人しかいなかった。謎めいていてユニークで興味深い、独特の語り方だと思ったの。キャラクターが気に入ったし、母と娘の関係もストーリー展開の意外性も面白かったから、ぜひ演じたいと思ったわ。私は実際の自分とかけ離れた役を演じるのが、好きなのよ。物語の中心はすぐに娘クロエのサバイバルになるから、観客はクロエの脱出劇をハラハラしながら見守ることになる。裏の顔を持つキャラクターを演じるのは、最初から素性が分かっている役を演じるより面白いわ。ダイアンの行動はとても怪しく、動機も含めて何をしているのか気になるから、観客も惹きつけられるはずよ。監督は長い時間をかけて、クロエ役を探したと思う。今の映画業界では、名の知れた女優を起用すべきという考えもあるけど、監督はそういう考えには興味を示さなかった。まだ駆け出しの監督なのにすごいと思うわ。」と言い、アニーシュ・チャガンティ監督は「本作の制作にあたり、影響を受けたものはヒッチコックM・ナイト・シャマランの映画だ。彼らの作品の舞台裏やたくさんのインタビュー映像を観て、撮り方を研究したんだ。それらに匹敵する作品にしたくてね。冒頭から彼らの作品のような雰囲気を意識したよ。徹底的にデザインした映像で、多くの情報を伝えてるんだ。撮影を始める時にクルー全体にはどういう映画を作るのか、はっきり宣言した。極めて”意図的”な映画を作りたいんだとね。メインの人物は2人だけで、観客が息抜きできるような脇道のストーリーはない。クロエの物語から決して逸れないんだ。とても面白い挑戦だが、精神的にはきつかったね。脚本を書く上では、メリハリがつくから息抜きできる場面も欲しいんだが、本作ではクロエの物語と1軒の家の中だけでどうやって緊張感を高めて描くかを考えた。そして、とにかく無駄を省くことにしたんだ。」と語っている。

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また「主人公が車椅子生活というスリラーは珍しいと思う。冒頭を観た観客はすぐに主人公は身体が不自由と知り、その障害だけに注目しがちになる。だから彼女が非常に頭の良い人間であることを最初に明確に描いたんだ。身体が不自由でも頭脳明晰な彼女だからこそ、信じられないほど素晴らしいヒロインになる。人生で闘い続けてきた彼女だからこそ、悲惨な現実にも立ち向かえるんだ。クロエ役には実生活でも車椅子を使っている人が良かった。健常者に演技をさせるのではなくてね。だから身体の不自由な人の集まりやSNSを通じて、大々的にオーディション募集したよ。そしたらハリウッド女優ぽくない、普通の若者のキーラからテープが送られてきた。キーラ・アレンとサラ・ポールソンの配役がこの映画の成功した要因だね。」と答え、さらに「最初に2つのテーマカラーとその意味を具体的に決めた。作中で使われているのは紫と緑で、緑はダイアンの独善、紫はクロエの自立心の象徴だ。この2色をうまく織り交ぜ、2人の心情や関係性を現わしたんだ。ラストシーンでは紫の服を着たクロエが印象的だ。シーンごとにこれらのカラーを使い分け、あちこちに散りばめたよ。それで緊張感や深刻さを表現したんだ。前作「Search/サーチ」よりも予算はあったけど、大胆なことをするのではなく凝縮された映画を作りたかったんだよ。」と語っている。

 

作品としては、新機軸サスペンスとして評判を呼んだ「search サーチ」を手掛けたアニーシュ・チャガンティ監督が撮った、娘への歪んだ愛情を持った母の暴走を描いたサイコスリラー。前作のPC上の画面ですべてを表現するというような、ギミックに凝った作品というよりは90分というタイトな上映時間からもわかるように、よりシンプルな”ジャンル映画”になっている。主演のクロエ役はオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレン、母ダイアン役を「それでも夜は明ける」「キャロル」「オーシャンズ8」などのサラ・ポールソンが演じており、作品はほぼこの二人の演技合戦と言っても良いだろう。確かに過去の多くの名作からインスパイアされたような映画なのだが、肝心のストーリー展開が弱いのがやや残念だった。

 

 

監督:アニーシュ・チャガンティ
出演:サラ・ポールソン、キーラ・アレン
日本公開:2021年