映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「ゴーン・ガール」を観た

ゴーン・ガール」を観た。

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監督:デヴィッド・フィンチャー
日本公開:2014年

 

デヴィッド・フィンチャーが大好きだ。いきなりで恐縮だが、フィンチャーの過去作は全て必見だと言い切ってしまって良いと思う。(「パニックルーム」以外かも。いや、「ベンジャミンバトン」も個人的にはイマイチかな。。)思えば、デビュー作の「エイリアン3」から彼の独特のビジュアルセンスは爆発しており、良くも悪くもジェームス・キャメロンがアクション映画化したエイリアンシリーズを、世界観込みで「アート化」の方向に揺り戻したのが、フィンチャーであった。


登場人物のほぼ全員が囚人で丸坊主(シガニー・ウィーバーさえも!)という設定と、色濃い宗教観、画面全体の色調のダークさ含めて、フィンチャーの才能がそこかしこに開花した意欲作であったと思う。残念ながら一般的な評価は散々だったようだが。


その後の「セブン」ファイトクラブ」と続く一連の作品の素晴らしさは、僕なんぞが、わざわざここで述べる必要もないと思う。ただ両作共に、後味はハッキリ言って良くないので体調の良い時に観たほうが良いかもしれない。

 

という事で「ゴーン・ガール」である。

 

あらすじ 

夫のニック・ダンは、結婚記念日に妻のエイミーが失踪したことに気づき、警察に捜索を依頼する。彼女は著名な作家の娘だった事もあり、妻の失踪はメディアに大きく取り上げられ徐々に報道は過激化していく。夫の行動や結婚生活にまつわる嘘によって、世間や警察は妻はすでに死んでおり夫ニックが犯人ではないかと疑い始める。だが実は・・・。

 

感想

この映画は大きく4つの構成から出来ている。まさにお話の基本「起承転結」である。
冒頭から数々の意図的なミスリードにより、「これは完全に夫が犯人っぽいけど、さすがにそれはベタすぎだから無いな」と観客に思わせる作りになっているのだが、ストーリーの展開はそんな観客の想像のはるか斜め上を行く


そして、出演者のベン・アフレックロザムンド・パイクの演技が素晴らしい。
特にロザムンド・パイクは、今回完全な当たり役だろう。冒頭の登場シーンから、ものすごいインパクトを残す。この映画のテーマは「夫婦といえども所詮は他人。他人には幸せに見えてても、多かれ少なかれお互いを偽って騙しあいながら毎日過ごしてる。そうやって、なんとか生きて行くしかないのさ」という事であろう。

 

ニックとエイミーだって確実に最初は愛し合っていた。
フィンチャーの完全に計算された画面の中で、ため息が出るほどロマンチックな二人のキスシーンが描かれる。あのプロポーズシーンの夫ニックのセルフなど、悶絶ものである。だが、ある時はお金の事で、ある時は生活環境の変化で、ある時は浮気で、夫婦はだんだんとぶつかり合い、罵り合い、憎みあっていく。そして「どちらかの絶対に許せない一線」をどちらかが越えてしまった時に、離婚や暴力などの悲劇が起こる。世界中の夫婦の間で日常的に起こっている事だ。

 

だが、この「ゴーン・ガール」に登場する妻エイミーは、卓越した頭脳と行動力を持っており、それをフルに活かした行動を起こしたというだけ。そして、その夫ニックも実は見た目以上にしたたかだ。


ラスト30分の夫婦の会話と行動は、(もちろん映画なので極端ではあるが)「結婚という一般的な人生で起こる事」の闇の側面がすごい濃度で詰まっており、観ていて背筋が寒くなりながらも、まるでワイドショー的なエンタメ感さえ感じさせ、観ている者を引き込む。世間から見える素敵な夫婦という虚栄を背負って、二人はあの後どんな人生を歩むのだろうか。ある意味、ホラーである。


優れた映画には、観客の感情を揺り動かす要素が詰まっている。この映画を観終わった後の感想はさまざまだと思うが、映画として「面白い」事は間違いない。ストーリーテリングの見事さも併せて、やはりフィンチャーの新たな傑作だと思う。

 

さらにこの映画、全編完璧な画面構成もさることながら、特にライティングが素晴らしい。青や金、白などの色調と画面構図の絡まった、豊かな映画的映像を観ているだけで幸せな気分になる。次のフィンチャーの新作は、ヒッチコックのリメイクらしい。楽しみで仕方ない。