映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「アトミック・ブロンド」を観た(感想&解説アリ)

アトミック・ブロンド」を観た。

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監督:デヴィッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロンジェームズ・マカヴォイジョン・グッドマン
日本公開:2017年

 

アトミック・ブロンド」は、今年秋に第2作目が公開された「ジョン・ウィック」の製作/共同監督を務め、次回作はあの「デッドプール」続編に抜擢されたというデヴィッド・リーチ監督が仕掛けた、スパイアクション映画である。主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で、女戦士フュリオサを演じたシャーリーズ・セロン。共演は、M・ナイト・シャマラン監督「スプリット」で主演を演じたジェームズ・マカヴォイ。思った以上に、凄まじい完成度の作品であると同時に、監督のシネフィルぶりを感じる快作だった。今回はネタバレ無しで。

 

あらすじ

1989年のベルリン。世界情勢に大きな危機を及ぼす極秘リストが奪われ、イギリス秘密情報部の凄腕女性エージェント、ローレン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)にリスト奪回の指令が下る。リストを巡って繰り広げられるイギリスMI6、アメリカCIA、ソ連KGBが繰り広げる裏切りと奪い合いの中、果たして彼女は任務を成功させられるのか?

 

感想&解説

スパイアクション映画といえば「007」シリーズを筆頭に、「ミッション:インポッシブル」シリーズ、マット・デイモン主演の「ボーン」シリーズ、「キングスマン」「コードネームUNCLE」など、近作でも枚挙に暇が無いが、やはり男性スパイが活躍する作品が主流だったと思う。だが、この2017年にやっと女性スパイアクション映画の金字塔が生まれたと言っていいだろう。2010年のアンジェリーナ・ジョリー主演の「ソルト」や、2012年のスティーブン・ソダーバーグ監督「エージェント・マロニー」などとはレベルがまるで違う、傑作の登場である。

 

正直、ストーリーはかなり混乱する。ブライアン・シンガー監督の1996年公開「ユージュアル・サスペクツ」を思わせる、主人公が「過去の出来事」を回想しながら、ストーリーを追っていくスタイルな上に、東西冷戦時代のベルリンを舞台に、各国の諜報部員が裏切りや裏工作を繰り返すストーリーの為、登場人物の複雑さも相まって、映画に集中していないとすぐに置いていかれる。

 

このあたりは2012年公開のトーマス・アルフレッドソン監督「裏切りのサーカス」を彷彿とさせる。画造りもクオリティが高く、抑揚も効いている為、アクションだけに依存し過ぎていない、ノワールタッチのスパイ映画という格式を感じさせて、このストーリーの難解さも含めて非常に出来が良い。ラストのオチのキレ味も最高だ。

 

舞台が冷戦時代の為、80'sテイストも強く、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の2012年「ドライヴ」に通じる、クールで硬質な画面に映えるライティングと構図の中に、2006年マーティン・キャンベル監督「007 カジノロワイヤル」のオープニング格闘シーンの様なガチの肉弾戦が繰り広げられ、シャーリーズ・セロンが歯を2本折りながら挑んだという、とてつもないアクションシーンが全編にわたり堪能出来る。

 

特に映画を観た人は、ほとんどの人が印象に残るであろう、あのビルの階段で行われる7分半の長回し格闘シーンの凄さたるや。もちろん、周到にカットは割ってはいるだろうが、あれだけのアクションシークエンスを、自ら演じたシャーリーズ・セロンは凄い。優雅なアクションでは無く「女性が男たちを相手に本当に戦っている」と思わせる説得力がこのシーンにはあり、他のアクション映画には無い強烈な個性を放っている。

 

更に長回しと言えば、車内カメラでキャラクターを捉えながら、フロントガラスから車外の混乱をワンカットで描くカーチェイスシーンは、2006年公開のアルフォンソ・キュアロン監督「トゥモロー・ワールド」を思い出したりしたし、劇中に、主人公が紛れ込んだ映画館でスクリーンに映っているのは、アンドレイ・タルコフスキーの1979年作品「ストーカー」。もちろん、時代感表現なのだろうが、あえてこの映画をチョイスするデヴィッド・リーチ監督のセンスの良さが表れていると思う。

 

音楽も、映画開始早々にNew Orderの「Blue Monday」が大音量で流れ、David Bowieの「Cat People」が続くという最高の80年代選曲だし(George MichaelDepeche Modeもかかる!)、エンディングはQueen & David Bowieの「Under Pressure」で〆る辺りは相当な確信犯で、これでアガるなという方が無理というものだ。

 

とにかく、シャーリーズ姐さんのスタイリッシュな衣装や佇まい、アクションシーンの数々を観るだけでも眼福なのに、デヴィッド・リーチ監督の映画作りのセンスが半端ない為、ちょっとビックリするくらいに高い完成度に仕上がっていた「アトミック・ブロンド」。とりあえずブルーレイが発売されたら、もう一度観直すのは間違いないし、また同じ監督とキャストで続編が観たいと思わせる、素晴らしい一作だった。