映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「オリエント急行殺人事件」を観た(感想&解説アリ)

オリエント急行殺人事件」を観た。

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監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナージョニー・デップペネロペ・クルスウィレム・デフォーミシェル・ファイファーデイジー・リドリージュディ・デンチ
日本公開:2017年

 

「ミステリーの女王」の名で知られるアガサ・クリスティーが書いた1934年原作の「オリエント急行殺人事件」が、1974年シドニー・ルメット監督作を経ての2度目の映画化がされた。監督・主演はケネス・ブラナー。共演は、ジョニー・デップペネロペ・クルスウィレム・デフォーミシェル・ファイファーデイジー・リドリージュディ・デンチなど錚々たる役者が集うオールスタームービーだ。今回はミステリー映画の為、ネタバレ無しで。

 

あらすじ

トルコ発フランス行きの豪華寝台列車オリエント急行で、アメリカ人富豪のエドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)が12ヶ所を刺された刺殺体で発見される。偶然列車に乗り合わせていた探偵のエルキュール・ポアロケネス・ブラナー)が、この密室殺人事件の解明に挑む。乗客のゲアハルト・ハードマン教授(ウィレム・デフォー)やドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)、宣教師のピラール・エストラバドス(ペネロペ・クルス)、キャロライン・ハバード(ミシェル・ファイファー)らに聞き取りを行うポアロだったが、徐々に過去に起こった凄惨な事件が浮かび上がってくるのであった。

 

感想&解説

極めて実直な映画化だと言える。リメイクやリブート作品の中には、テーマだけは踏襲するが設定やストーリーを大きく改変するパターンもあるが、さすがにアガサ・クリスティー原作にそれは難しかったという事だろう。(一例としては、ガイ・リッチー監督の「シャーロック・ホームズ」シリーズがあると思うが、かなり大胆なアレンジが加わっていた)多少の新キャラクターの登場や人種の変更はありつつも、「あのオチ」も含めて「オリエント急行」としてストレートな作りとなっていると思う。そういう意味では、原作もシドニー・ルメット版も未見の方なら、まずまず楽しめるだろう。

 

ケネス・ブラナー監督自らが演じる「エルキュール・ポワロ」は、イギリス出身の俳優デヴィッド・スーシェ演じるテレビ版「名探偵ポワロ」のイメージが強すぎて、正直最初は違和感があったが、今回は劇場版という事でスタイリッシュ且つ、「動けるポワロ像」を提示したかったのだと思う。途中、本作唯一のアクションシークエンスとして、列車外のチェイスシーンがあったが、今後のポワロシリーズはこういったシーンが増えるかもしれない。茶目っ気無しの、精悍なポワロ像として新鮮であった。

 

本作の評価ポイントは、やはり映像美だろう。セットを建設したという、大雪の山道を走るオリエント急行の迫力ある姿や、駅での車内を追っかけるロングショット。カメラワークもかなり独特で、面白い。この辺りの映像的な満足感は、やはり2017年度版だからこそだろう。スターキャストの演技も見応えがあり、ビジュアル的には映画館で観る価値はあると思わせるに、充分なクオリティに達している。

 

ただし、正直なところ演出はいかにも地味である。基本的には止まっている電車内での会話劇なので仕方ないが、特にポワロが順番に容疑者と話をしていくだけの中盤の展開は中だるみする。また、与えられた情報から観客が推理して犯人の目星をつけるが、主人公がそれを上回る推理を披露、そして意外な犯人にビックリ!という構成がミステリーとしては望ましいが、残念ながら本作はそうならない。これはオチの構造上仕方ないのだが、与えられた物的証拠や情報から結末を導き出す推理ではなくて、状況証拠と容疑者たちの関係から「消去法」で導き出す推理だからだ。事実、ポワロが推理に行き詰まり、途方に暮れるシーンがあるが、これでは推理劇として盛り上がるはずがない。という訳で、いわゆる「犯人探しモノミステリー」として本作を観るとガッカリするだろう。

 

この作品の真骨頂は、ラスト15分の人間ドラマにある。12ヶ所の刺し傷を付けて殺した犯人に対して、ポワロが最後に取る行動とは。人が人を裁くという行為に対し「この世には善と悪にはっきり分けられ、中間は無い」と断言する名探偵は、どう行動するのか?ちなみに12ヶ所の刺し傷の「12」とは、アメリカの裁判で一般市民が陪審員として参加する人数と同じ数である。

 

さて、世界では1億5000万ドルの興行収益を突破して大ヒット中の本作は、すでに続編が決定したらしい。劇中ラストで語られるように、次作は「ナイルに死す」との事だ。ケネス・ブラナー版ポワロの新作は、まだまだ観れそうである。