映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

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「マンハント」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

マンハント」を観た。

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監督:ジョン・ウー
出演:福山雅治、チャン・ハンユー、桜庭ななみ
日本公開:2018年

 

男たちの挽歌」や「フェイス/オフ」のジョン・ウー監督最新作。久しぶりに、ジョン・ウーの作品を劇場で観た気がする。日本での単独監督作としては、2009年の「レッドクリフ Part2」以来なので約9年ぶり。今回の「マンハント」は、ジョン・ウーの集大成みたいなアクション映画であった。主演は福山雅治と中国の俳優チャン・ハンユー。オール日本ロケの作品としても期待が高かったが、出来はどうだったか。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

国際弁護士のドゥ・チウ(チャン・ハンユー)は過去に弁護を担当していた製薬会社のパーティーに出席した後、突然何者かの策略で罠にはめられ、女性秘書の殺害容疑をかけられてしまう。無実を証明しようと警察から逃走したドゥ・チウを追跡するのが、刑事の矢村(福山雅治)と部下の百瀬(桜庭ななみ)。ところが、矢村は捜査を続けるうち、殺人容疑の状況証拠に疑問を抱き始め、ドゥ・チウは殺しをやっておらず、何者かの罠にはまった事を知る。やがて追う者、追われる者だったはずの2人は協力して事件の真相追及に乗り出すことになる。そして、新薬を巡る製薬会社の悪事に迫っていく。

 

感想&解説

西村寿行による長編小説「君よ憤怒の河を渉れ」の2度目の映画化。不勉強ながら僕は未見だが、1度目は高倉健主演による1976年の日本映画で中国では大ヒットし、今でも多大な影響がある作品らしい。その証拠に前作のセリフが冒頭からかなり頻発し、最初は(このセリフはなんだろう?)と面食らった。だが、そんな事が気になるのは少しだけで、後はジョン・ウーお得意のスローモーションと、ケレン味たっぷりのガンアクションが始まるので、思わず満面の笑みがこぼれるだろう。

 

正直ストーリーは、人に投与すると超人化する薬を作っている製薬会社の社長が悪玉という、過去に何回観たか分からない話で、新鮮味はない。ツッコミどころは満載で、お話の推進力も弱い。日本国内であれだけ銃のドンパチをやる事のリアリティなどは、当然言いっこなしである。しかし、はっきり言ってアクションシーン以外の演出が、全編に渡って「ダサい」。特に「あべのハルカス」で撮影されたという、製薬会社のパーティにおけるダンスシーンなど、音楽の使い方や編集など含めて、こっちが恥ずかしくなるような「時代錯誤感」満載なシーンになっている。これは、はっきりジョン・ウーの加齢による感覚のズレの様な気がする。

 

ちょいちょい挟み込まれる、会話シーンでの意味不明なスローモーションや止め絵演出には辟易させられるし、キャラクターが死んだ時のリアクションなど、悪い意味で全体的に70〜80年代の日本映画やドラマを観ているような、平板な画作りと演出なのである。大阪、兵庫、岡山などで撮影されているので、もちろん日本作品の雰囲気が出るのは理解出来るが、同じ大阪を舞台にしていた1989年リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」と比べると、その世界観の差は歴然だろう。特にラストの製薬会社の研究センターでの、人体実験シーンの演出などは陳腐というほかない。

 

だがさすがジョン・ウー監督、打って変わってアクションシーンは素晴らしい。福山雅治も良く動いており、監督の真骨頂が堪能できる。もちろん二丁拳銃の進化版、2人での回転撃ち、白い鳩のお約束は守りつつ、刀アクションなどのバリエーションも入れていて、飽きさせない。また「フェイス/オフ」のジョン・トラボルタニコラス・ケイジのボート追跡シーンを彷彿とさせる水上バイクシーンや、牧場に殺し屋たちが来るのを迎え撃つシークエンスなどは、素直にカッコいいと思う。個人的なお気に入りは、冒頭での女殺し屋たちによるガンアクションシーンだ。

 

監督はアルフレッド・ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」型の巻き込まれサスペンスを目指したそうだが、残念ながらそれよりも、ジョン・ウーのアクション映画集大成として観るのが良いと思う。日本人の役者も大挙して出演しているが、近作「三度目の殺人」も素晴らしかった福山雅治を始め、「哭声/コクソン」の國村隼が流石の演技を見せていたし、またちょい役ではあったが、斎藤工が独特の色気があり良かった。とにかく、こういった完全に中国資本の映画に、日本人スタッフや俳優が多数出演して、ジョン・ウー監督作品として世界のマーケットで戦える映画が公開される事は、良い事だと思う。

 

この作品のターゲットは、40歳以上のアクション映画好きだろう。「男たちの挽歌」が好きなジョン・ウーファンならアクションシーンは楽しめると思うし、80年代の日本刑事ドラマを彷彿とさせるダサい感じも、40歳以上なら懐かしがれる世代だと思う。とにかく期待し過ぎずに、素直にジョン・ウー監督の復活作として楽しむのがオススメの作品だ。2002年の「ウインドトーカーズ」以降はちょっと停滞ムードが強かったが、ハリウッドに移ってからの初期作「ブロークン・アロー」位の面白さは担保されている佳作だと思う。