映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「モリーズ・ゲーム」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

モリーズ・ゲーム」を観た。

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監督:アーロン・ソーキン

出演:ジェシカ・チャスティン、イドリス・エルバケビン・コスナー

日本公開:2018年


スキーのトップアスリートから高額ポーカー・ゲームの経営者へと転身した、実在する女性を描いた物語である。2014年に刊行されてベストセラーとなった、モリー・ブルーム本人の回想録がベースとなっている。脚本/監督を手掛けたのは「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞脚色賞を受賞した、アーロン・ソーキン。過去にも「スティーブ・ジョブズ」など、実在の人物を描くことで高い評価を得ており、今作が初監督作品となる。主演は「ゼロ・ダーク・サーティー」や「女神の見えざる手」のジェシカ・チャスティン。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

父親から厳しい英才教育を受け、モーグルのオリンピック候補まで成長したモリー・ブルーム(ジェシカ・チャスティン)は、選考をかけた大会で大怪我を負い、アスリートの道を諦める。空いた時間をロサンゼルスで気ままに過ごすことにしたモリーだったが、夜のバイトでアンダーグラウンドな業界の社長と知り合い、そのままポーカー・ゲームのアシスタントを頼まれる。そこでは、ハリウッドスターや大物プロデューサー、大企業の経営者らが巨額の掛け金でポーカーに興じていた。やがて彼女はその才覚で、自らゲームルームを開設するのだが、10年後、違法賭博の運営を行なったという理由でFBIに逮捕される。FBIはギャング組織の情報を聞き出そうとしていたのだ。彼女を担当した弁護士ジャフィーは打合せを重ねるうちに、モリーのある意志の強さを知っていく。

 

感想&解説

実在した、レオナルド・ディカプリオトビー・マグワイアなどのトップスターも利用していたという、超高額ポーカールームが舞台となる本作。その経営者であるモリー・ブルームは、26歳の元トップアスリートで違法なポーカー・ゲームを運営していたという理由でスキャンダルの的となった。そのモリーの栄光と転落、そして顛末を描くというのがメインのお話であるが、その語り口が面白い。脚本家のアーロン・ソーキンが初監督しているだけあって、冒頭のスキーシーンから膨大なセリフによる状況説明と感情吐露が行われ、それを細かいカットで繋いでいく。それによりテンポ感が生まれ、起こっている状況が理解できる作りになっている。

 

2010年のデヴィッド・フィンチャー監督「ソーシャル・ネットワーク」の冒頭シーンで、ジェシー・アイゼンバーグルーニー・マーラの印象的な大口論シーンがあったが、そのセリフの量とスピード感に当時圧倒されたのを思い出す。また、あの作品の中でもあのシーンはとてもキレが良く、面白いセリフの応酬だった。この脚本を担当していたのがアーロン・ソーキンなのだが、この演出方法は、この脚本家兼監督の面目躍如だと言えるだろう。また「マネー・ボール」「スティーブ・ジョブズ」と、実在する人物たちを描き続けているのもアーロン・ソーキンの特徴である。

 

本作は大きく3つのストーリーで進行していく。父親との確執を描きながら、スキーのアスリートを目指している幼少期、ポーカールームの運営者としてドラッグまみれになりながら働く栄光期、そしてFBIに逮捕され、文無しになりながらも弁護士のジャフィーと裁判に臨む没落期である。この3つのパートを時系列を入れ替えながら映画は進むのだが、正直この中で一番面白いのは、モリーが男たちを相手に果敢に立ち回る栄光期だ。だだ、もちろんマフィアに命を狙われたりといった起伏はあるのだが、映画序盤で結局最後はFBIに逮捕される事が描かれる為、ここでのストーリー展開の推進は弱いと言える。

 

また裁判の結果自体も、実在のモリーが存命しているので有罪になっても、それほど重い罪ではない事が分かっている為、最終的なストーリーの着地にもそれほど興味が持てない。また基本的には会話劇の為に、映像的に眼を見張る様な手法がある訳でも、演出がある訳でもない。そういう意味では、この映画はモリーが様々な局面に陥った時に、どう判断して、どう行動するか?のプロセスをアーロン・ソーキンの脚本によって楽しむ作品だと言える。映画としてのストーリーというよりは、各場面のセリフ回しや会話が魅力的な作品なのだ。

 

映画の終盤、ケビン・コスナー演じる父親との邂逅があり、二人は和解する。モリーがポーカールームで行っていた「強い男との戦い」は、この父親への反発心が影響していた事が描かれ、彼女の心のわだかまりが一つ解れる。また顧客情報の入ったハードディスクを司法の手に委ねて減刑をするか?その秘密を守り続けて実刑を受けるか?が、ストーリーの大きなポイントになるが、モリーは秘密を守る選択をする。ここに彼女の倫理観が現れており、ジェシカ・チャスティンの強いイメージと共に、このモリーというキャラクターを魅力的にしている。また弁護士役のイドリス・エルバも良い。後半の検察に対してモリーを守るために放つ長セリフは、力強く感動的だ。

 

ラストシーン、実刑になる事を覚悟したモリーだったが、結局は社会奉仕と20万ドルの罰金を言い渡され解放される。その裁判長の口ぶりから、ゲームに参加していた権力者の後ろ盾があった事が示唆されるが、もちろんハッキリとは描かれない。たが、ハードディスクを渡さず更に犯罪を認めている被告人に、裁判長が減刑する理由が無いだろう。グレーなニュアンスを残すラストだと言える。

 

ポーカーのルールなど、多少わかりづらい専門用語も多いし、ストーリー的に何か特別な面白さがある作品ではない。また、とにかくセリフの応酬なので、好き嫌いは分かれる映画なのは間違いない。上述の様に、各場面のセリフ回しや会話劇を楽しむ、玄人向けの作品かもしれない。個人的には少し物足りなさを感じたのは事実であった。