映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「オーシャンズ8」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

オーシャンズ8」を観た。

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監督:ゲイリー・ロス

出演:サンドラ・ブロックケイト・ブランシェットアン・ハサウェイ

日本公開:2018年


スティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー主演の第1作目「オーシャンズ11」が公開されたのが2001年。それから2004年「オーシャンズ12」、2007年「オーシャンズ13」とシリーズは続き、11年ぶりに新作が公開となる。なんと今回は、ジョージ・クルーニー演じていたダニー・オーシャンの妹が活躍する、女版オーシャンズという事で、同じくメインキャストを女性にしたリブートの2016年「ゴーストバスターズ」を思い出させる。主演は「スピード」サンドラ・ブロック。他にも「ブルージャスミン」や「キャロル」のケイト・ブランシェット、「プラダを着た悪魔」「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイらが脇を固める。監督は「ハンガー・ゲーム」のゲイリー・ロス。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

5年の刑期を終え、晴れて仮出所を果たしたデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)。ダニー・オーシャンを兄に持つ、生粋の強盗ファミリーの一員だ。出所して早々、刑務所の中で考え抜いたプランを実行に移すべく、デビーの右腕となるルー(ケイト・ブランシェット)と共に個性豊かな犯罪のプロたちに声をかけ新たな「オーシャンズ」を新結成するデビー。集まったのはいずれも一流の才能を持ちながら冴えない生活を送っているハッカー、スリ師、盗品ディーラー、ファッションデザイナー、宝飾デザイナーたち。彼女たちのターゲットは、世界最大のファッションの祭典「メットガラ」でハリウッド女優(アン・ハサウェイ)が身に付ける1億5000万ドルの宝石だ。しかしそこには、網の目のように張り巡らされた防犯カメラ、屈強な男たちという世界一厳しいセキュリティが立ちはだかる。たった一秒の狂いが命とり。しかも祭典の模様は、リアルタイムで全世界に生配信されるという高すぎるハードル付き。世界中が注目する中で宝石を盗み取る、前代未聞で型破りな計画は果たして成功するのか?

 

感想&解説

今にして思えば、いわゆるスター映画として2001年の「オーシャンズ11」は良く出来た作品だった。主演のジョージ・クルーニーを中心としてブラッド・ピットマット・デイモンアンディ・ガルシアドン・チードルなどが、互いの仲の良さを見せつけ合う様に嬉々として各キャラクターを演じており、撮影時のインタビューなどは良いオトナがふざけ合って、インタビュアーを困らせているのが微笑ましかったのを覚えている。これはひとえにリーダーであった、ジョージ・クルーニーの業界内での人望や統率力の賜物に他ならないだろう。本来、映画は監督のビジョンを具現化したものだが、本シリーズに関してはキャストのアンサンブルが、映画最大の魅力になっていたと思う。


「The Ratpak (ザ・ラットパック)」という言葉がある。これは50年代から60年代当初にフランク・シナトラが結成した「仲良し軍団」の事で、シナトラはピーター・ローフォードやディーン・マーチンらとハリウッドやラスベガスで常に一緒にショーを行っていた訳だが、「オーシャンズ11」のリメイク元でありオリジナルである、1960年公開「オーシャンと十一人」が、このラットパックが出演した映画だった為、「11」の公開当時クルーニー達の仲の良さからラットパックとよく比較されていた。正にオーシャンズシリーズは、男たちの「仲良し感」が作品の肝だった訳である。


思えば公開当時、「オーシャンズ11」は大ヒットしたが正直、作品としての完成度はそれほど高くはなかった。ガンアクションなどに頼らない、集団強奪もの(ケイパーもの)という作風だったが、シナリオのアラが多く突っ込みどころも多々ある作品で、特にシリーズ二作目「オーシャンズ12」はその傾向が顕著だったと思う。ただ、高級カジノやホテルが舞台なだけに豪華なセットと洒落た演出、そしてデビッド・ホルムズの手掛けたジャジーでスムースなサントラの功績、そして何より役者たちのスター性により、いわゆる完成度の高い映画では無いが、娯楽大作としてはそこそこ満足度の高いシリーズとなっていたと思う。


そこで本作、シリーズ4作目の「オーシャンズ8」だが、前述の「オーシャンズらしさ」はかなり感じられる作品だと思った。これは、プロデューサーにクレジットされているスティーブン・ソダーバーグが空気感をコントロールしたか、監督のゲイリー・ロスが前シリーズをかなり勉強した成果だろう。キャストは女性になり一新したにも関わらず、画面演出やテンポ感からオーシャンズ最新作を観てるという感じは強い。ところが残念な事にシナリオのアラや展開の強引さ、「完成度の高くない感じ」までも前シリーズから引き継いでしまっており、決して褒められた出来の作品ではないのである。


サンドラ・ブロック演じるデビーは、刑務所の中で5年もこの計画を立てていたらしいが、これが何とも「運頼み」のプランで、大女優に落ち目のファッションデザイナーをわざわざ世界最大のファッションイベントで使わす為の策があれだけ?とか、3Dプリンターがいくらなんでも万能過ぎるだろとか、リアーナ演じるハッカーは何でもハッキング出来過ぎとか、「VOGUE」の編集部に簡単に入り込め過ぎ、しかも重要な情報に対してセキュリティ甘過ぎとか、宝石を外す為の器具をリアーナの妹が簡単に用意出来すぎとか、余りにも都合が良い展開が続き過ぎる。よって彼女たちがどんな局面に立たされても数分後には簡単に乗り切れてしまっているので、ほぼ劇中のドキドキは無いに等しい。


そして何より、過去シリーズの様なキャスト同士のケミストリーが起こっていないのが、今作における最大の問題だろう。ケイト・ブランシェットアン・ハサウェイの二人だけはかろうじてキャラ立ちしているが、他のキャラクターは魅力不足だし、特に主演のサンドラ・ブロックはほとんど見せ場がない。なんとか同じ画面内に収まってはいるが、出演者たちが「本当に気の合う仲間たち」には見えず、前シリーズほどのアンサンブルは起きていないと感じた。これがオーシャンズシリーズ最大の魅力だというのにである。逆に言えば前シリーズにおける、ジョージ・クルーニーブラッド・ピットの画面支配力が凄まじかった事の証明だが、やはりサンドラ・ブロックがプロ犯罪者集団のリーダーでは、あまりに華が無さすぎだろう。


もちろん退屈する事はない程度には楽しめる作品だし観て損はないが、この夏は他にも観るべき作品が多い為、鑑賞すべき優先順位はそれほど上げなくても良いと思う。恐らく今後は9、10とまた三部作の構想があると思うが、次はサンドラ・ブロックがもっと活躍するシーンを願わずにはいられない。最後に音楽についてだが、これは引き続き良かった。今作はデビッド・ホルムズからダニエル・ペンバートンにバトンタッチされているが、60~70年代ソウルミュージックを基調に、素晴らしい選曲とスコアを聴かせてくれる。カーティス・メイフィールドがさりげなく使われていたりと、全体的にセンスが光る選曲だったと思う。