映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「search/サーチ」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

search/サーチ」を観た。

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監督:アニーシュ・チャガティ

出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ミシェル・ラー

日本公開:2018年


サンダンス映画祭2018で監督賞を受賞し、映画全編が100%PCの画面だけで展開されるという異色作が、日本でも公開となった。監督は今作が長編デビュー作のアニーシュ・チャガティ。プロデューサーは「ウォンテッド」や「ナイト・ウォッチ」を監督したティムール・ベクマンベトフ。このティムール・ベクマンベトフがプロデュースを務めた作品として、2016年に公開された「アンフレンデッド」というホラー映画があるのだが、これがネット画面上の登場人物をひたすら描いた、しかもSNSをテーマにした作品なので、本作の製作に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。主演はJ.J.エイブラムス監督のリブート版「スター・トレック」でヒカル・スールー役のジョン・チョー。今回もネタバレありなのでご注意を。

 

あらすじ

16歳の女子高生マーゴットが突然姿を消し、行方不明事件として捜査が開始されるが、家出なのか誘拐なのかが判明しないまま37時間が経過する。娘の無事を信じたい父親のデビッドは、マーゴットのPCにログインして、InstagramFacebookTwitterといった娘が登録しているSNSにアクセスを試みる。だがそこには、いつも明るくて活発だったはずの娘とは別人の、デビッドの知らないマーゴットの姿が映し出されていた。

 

感想&解説

こういった「珍しい手法」の作品は、大概が駄作に終わる事が多い。それは手法自体の目新しさに終始してしまい、脚本や演出といった映画そのものの面白さを追求していないケースが多いからだ。だが本作「search/サーチ」は、間違いなく今年公開された映画の中でも、屈指のエンターテイメント性とストーリー性を持った傑作だと思う。もちろん今作の「珍しい手法」とは、PCの画面の中だけでストーリーが進むという点だ。実際にはPCのデスクトップが表示され、主人公たちがメッセージで文字のやり取りを行ったり、検索窓やバナーから情報を検索したり、webカメラでのスカイプ通話や、写真や動画を観たりといった行動から、徐々に主人公であるデビッドが新しい情報を入手する。そして観客も、それと同時進行でストーリーを追っていくという構成だ。


よって劇中の登場キャラクターは、非常に少ないと言って良いだろう。主要キャラは5人未満である。だが、それでもスリラー映画として先の読めない展開が用意されていて、細かい伏線をしっかり回収しながら、ストーリーは進む。各キャラクターが常に「本当に信用できるのか?」の揺さぶりをかけてきて、観客はその度に心を動かされる。実際に失踪する娘のマーゴットでさえ、父親デビッドの知らなかった側面が見えてきて、「自ら逃げたのではないか?」という疑問を観客が持つようにミスリードしてくるのだ。


そして脚本の手腕も巧みで、物語中盤、マーゴットと父デビッドの弟であるピーターが、隠れて頻繁に会っているという会話ログを発見してしまうシークエンスがあるが、あれだけ親身になってデビッドを心配していたピーターと娘が恋仲で、更に犯人なのか?と観客が本気で思いかけた瞬間に、実は大麻を一緒に吸っていただけだと判明するシーンなど、序盤にさり気なく提示される「弟ピーターが大麻の常習犯である」という伏線がサラッと回収されていてとても上手い。そしてオチには更なる大どんでん返しが用意されているのだ。正直、「警察が真犯人でした」は若干禁じ手のような気もしないでもないが、ヴィック捜査官の息子が油断ならない人物だという描写は本人の口から語られているし、こちらもクライマックスに向けて、周到に伏線が張られているので、これほど大きなどんでん返しでも素直に驚いてしまうように作られている。


そして本作が傑作たり得ているもう一つの理由は、脚本の面白さと同時に、演出法が新しくて巧みな点にある。あくまで、演者の顔は見せずにメッセンジャーの「文字」を書いたり消したりする様子だけで、デビッドがどんな気持ちでPCに向かって文章を書いているかが手に取る様に解るし、怒りに任せて文章を書きなぐった後に冷静になって文字を書き直したり、メッセージを送るべきか悩んでいる様をしばらくカーソルが止まっている描写だけで示したりと、非常に抑えた演出なのに情報としては雄弁だ。特に後半の「バナー広告に載っている顔」を見て、どこかで見た事のある顔だとデビッドが気付く時の沈黙と間が、一見画面上では何も起こってないのに的確に表現されていて、非常に面白い表現だと思った。


更に親子の愛の物語としても一級品で、冒頭の幸せな家族だったのに病気で母親が亡くなるまでの一連を、PC上の動画とスケジュールで伝えるシーンは思わず涙を誘う。ピクサーの「カールじいさんの空飛ぶ家」の冒頭シーンを思い出させるが、それに勝るとも劣らない素晴らしい演出だった。本作がハッピーエンドで本当に良かったと思う。恐らくこのコンセプトの作品として、これ以上完成度の高い作品はしばらくは出ないだろう。目新しいのに面白いという、奇跡的なバランスを保っているのにも関わらず、誰が観ても満足感が得られるという稀有な作品だ。文句なしにオススメだし、2018年を代表する一作として記憶に残る作品になると思う。