映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

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「スパイダーマン:スパイダーバース」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

スパイダーマン:スパイダーバース」を観た。

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監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン

出演:シャメイク・ムーア、ジェイク・ジョンソン、マハーシャラ・アリ

日本公開:2019年


第91回アカデミー賞長編アニメーション賞と第76回ゴールデン・グローブ賞アニメーション作品賞を受賞した、スパイダーマンシリーズ初の長編アニメーション。実写も含めて、シリーズ史上最高傑作との声が上がるほど評価が高い。監督は本作がデビュー作というボブ・ペルシケッティらの3人。「アルティメット・スパイダーマン(Ultimate Spider-Man)」いうコミックスを映画化した作品だが、表現方法としてかなり前衛的なアプローチをしていると思う。今回は久しぶりに3D IMAXで鑑賞してみたが、結果はどうだったか?ネタバレありで感想を書きたい。

 

あらすじ

スパイダーマンことピーター・パーカーの突然の訃報を受けたニューヨーク。ブルックリンの名門私立中学に通う13歳のマイルス・モラレスは、特殊な蜘蛛に噛まれてスパイダーマンとなるが、その能力をまだコントロールできていない。ある夜、死んだはずのピーターがマイルスの前に現れる。ピーターは闇社会を牛耳るキングピンが歪めた時空に吸い込まれ、異なる次元からやってきたという。マイルスはピーターを師と仰ぎ、真のスパイダーマンになるための特訓を開始する。2人は、様々な次元から集結したスパイダーマンたちとともに、キングピンの野望を阻止し、全ての次元を元通りにする戦いに挑む。

 

感想&解説

映画館に行くようになって約30年が経つが、映画を観ていて映像そのものに感銘を受けるという経験はかなり減ったと思う。振り返れば、1991年のジェームズ・キャメロン監督「ターミネーター2」や1993年のスティーブン・スピルバーグ監督「ジュラシック・パーク」、1995年のジョン・ラセター監督「トイ・ストーリー」や1999年のウォシャウスキー監督「マトリックス」、2009年の「アバター」あたりがふと頭に浮かぶが、この10年くらいで「映像的に」エポックメイキングな作品というと、正直すぐに思い出せない。


だが本作「スパイダーマン:スパイダーバース」は久しぶりに映像そのものに驚き、感動できる作品だったし、恐らくアニメーション映画の到達点の一つとして、これからも後世に残る作品になると思う。まず、この映画はコミックスというメディアに対して、非常にリスペクトを感じる。アメコミを読んだ時の1コマにおける膨大な情報量やスピード感を、映画としてどう伝えるか?に腐心していて、今まで観たことのない本作ならではの独特な表現が多い為、観ていてワクワクする。


キャラクターが考えていることを吹き出しとして可視化したり、あえて「印刷感」のあるドットの表現をしていたり、スパイダーマンの第六感的な「スパイダーセンス」を「波」のように表現したりと、まるでコミックスの中に飛び込んだような特別なビジュアルを次々と見せてくれるのだ。さらに、アニメーションならではの「画が動く気持ち良さ」はしっかりと担保されていて、画面のあらゆるパートがグリグリと、そしてスムーズに動きまくる。こればかりは恐らく文字では伝わらないだろう。


主人公は従来シリーズのピーター・パーカーから、アフリカ系とヒスパニック系のハーフの中学生マイルス・モラレスへと変更されており、ニューヨークストリートカルチャーの匂いが強いのも非常にかっこいい。NIKEのエアジョーダンを履きながら、バンクシーのようにグラフィティアートを描き、チャンス・ザ・ラッパー「Coloring Book」のポスターを部屋に貼る少年が本作の主人公なのである。

 

今までの主人公ピーター・パーカーとはあまりにも違うが、とはいえマイルスも思春期ならではの家族や自分のアイデンティティについて悩む姿が描かれており、誰もが共感できて愛せるキャラクターになっているのも見事だ。サントラも非常にヒップホップ色が強く、ニッキー・ミナージュやジェームス・ブラウン、ポスト・マローン&スウェイ・リーの楽曲が、映像にさらなる魅力を与えていて気分が高揚する。


脚本のフィル・ロードクリストファー・ミラーは大傑作「LEGO(R) ムービー」のクリエイターだが、今作でもスパイダーマンという大きな題材を、家族や仲間といった人間関係をテーマにした普遍的なストーリーとして、見事に昇華させていると思う。正直、時空を歪める装置を破壊させるために、別の次元から様々なスパイダーマン達が集結してラスボスを倒す、というメインプロット自体より、父親が部屋の扉ごしにマイルスに語り掛けるシーンの繊細な演出の方が、この映画では印象深い。しっかりキャラクターが生きているのである。亡くなったばかりのスタン・リーがカメオ出演するのも泣かせるし、エンドクレジットの外したバカバカしさも楽しい。


昨年公開された「ヴェノム」のエンドクレジットで初めて本作のさわりを観たとき、これほどの傑作になるとは全く予想していなかった。今回IMAX 3Dで鑑賞したのだが、この作品に限ってはこの選択は正解だったと胸を張って言える。それほど本作は新しい映像表現に挑戦しているので、出来ればIMAXで鑑賞することをオススメしたい。天才たちのアイデアと努力によって作り出された、アニメーション映画の最新進化形に立ち会えるという意味で、これこそ大きなスクリーンで観る意味のある一作だろう。