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映画「死霊館3 悪魔のせいなら、無罪。」ネタバレ感想&解説 まるで恋愛映画のような後味!ホラー度は低いが、シリーズの新規軸としては良作!

死霊館3 悪魔のせいなら、無罪。」を観た。

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実在の心霊研究家エド&ロレイン・ウォーレン夫妻が調査した事件の映画化である、「死霊館」シリーズ(事実上の)ナンバリングタイトル第3弾。「死霊館」シリーズは、「アナベル」や「死霊館のシスター」などスピンオフ作品が他に5作品ありユニバース化しているが、本作はその第8作目にもあたる。シリーズ全体の主人公であるエド&ロレインの「ウォーレン夫妻」を演じるのは、おなじみパトリック・ウィルソンとベラ・ファーミガ。シリーズ興行収益2,200億円越えのユニバース最新作「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」は、全世界32カ国でNo.1スタート、2億ドル突破の大ヒットらしい。前作まで監督を務めたジェームズ・ワンはプロデュースに回り、「エスター」のデビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックが脚本、「ラ・ヨローナ 泣く女」のマイケル・チャベスが監督を務めている。今回もネタバレありで感想を書きたい。


監督:マイケル・チャベス

出演:パトリック・ウィルソン、ベラ・ファーミガ、ルアイリ・オコナー

日本公開:2021年

 

あらすじ

過去に多くの悪霊や怪奇現象と対峙し、恐怖に苦しむ人々を救ってきた心霊研究家のウォーレン夫妻。彼らが次に向き合っていたのは1981年、家主を刃物で22回刺して殺害したという青年アーニー・ジョンソンだった。彼は悪魔に取り憑かれていたことを理由に無罪を主張しており、ウォーレン夫妻はアーニーを救うため、悪魔の存在を証明するべく立ち上がる。だが警察に協力しながら調査を進める夫妻の前に、邪悪な存在が立ちふさがっていく。

 

パンフレット

価格820円、表1表4込みで全24p構成。

縦型オールカラー。パトリック・ウィルソン、ベラ・ファーミガ、マイケル・チャベス監督のインタビューの他、映画評論家の柳下毅一郎氏、清水節氏によるコラムや過去のシリーズガイド、プロダクションノートなどが掲載されている。

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感想&解説

今や「ワイルド・スピード」や「アクアマン」といったブロックバスター超大作を手掛けているジェームズ・ワンだが、そもそもは2004年「ソウ」で鮮烈にデビューし、その後も2010年「インシディアス」などの低予算ホラーをヒットさせる名手であった。そんな彼が2013年に発表した「死霊館」は、制作費約2,000万ドルに対して全世界興収約3億2,000万ドルという大ヒットを記録し、その後ユニバース化するほどにシリーズ作品が作られることになる。本作はその8作目になるのだが、劇中で登場した恐怖の人形「アナベル」をメインに据えた3作品や、「死霊館 エンフィールド事件」での印象が強烈な悪役ヴァラクの起源が語られる「死霊館のシスター」などのスピンオフとは違い、本作は「エンフィールド事件」に続く、ナンバリングタイトルの3作目という位置づけになる作品だ。よってヴェラ・ファーミガパトリック・ウィルソンの2人が演じる、ロレインとエドの「ウォーレン夫妻」が主人公となる。

ただ正直本作は、前作までのコアなファンにとっては”期待外れ”と感じてしまうかもしれない。今までの作品とは、”構造”がやや違うからである。いわゆる「呪われた一軒家」を舞台にしたホラー作品というよりは、呪いをかけられ殺人を犯してしまった青年を助けるべく、「誰が/どこで」この呪いをかけているのか?を探っていくミステリー作品の要素が強いためだ。ロレインとエドの二人も様々な場所を訪れて謎を解いていくという構成になっており、前作までのような”恐怖要素”はかなり少ない。いわゆる”ホラー映画”として観ると物足りないのである。特に2016年の「エンフィールド事件」は恐怖演出も優れており、「ヴァラク」のようなアイコンキャラクターも生まれた傑作ホラー映画だったので、その正統的な続編としては分が悪い。冒頭のデイビッド少年の悪魔払いのシーンが、一番従来シリーズを踏襲した魅力的な恐怖シーンとなっており、冒頭のシークエンスがホラー映画としてもっとも引き込まれる作りなのは、やや残念ではある。


とはいえ、死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」が決してつまらない作品になっていないのは、プロデューサーのジェームズ・ワンが映画の方向性をしっかりコントロールしているからだろう。シリーズ8作品目ということもあり路線変更はかなり難しかったと思うが、個人的には上手くいっていると感じた。少年デヴィッドの家の床下から、魔女が悪魔を召喚するときに使う「呪いのアイテム」を見つける流れや、まったく別で進行していたと思われたデンバー市で行方不明になっている女子学生ジェシカの事件が、この「呪いのアイテム」の発見によって関連付く展開、遺体が安置されている葬儀施設で置いてある死体の一つがいきなり襲ってくるシーンなど、良い意味で本作はゲーム的な展開が多く、より「エンタメ感」が強まったという印象だ。これはこれで、シリーズの方向性としてはアリだと思う。


そして本作はエンタメ性を追求しながらも、決して安っぽい映画になっていないのだが、これはキャラクターの「内面と愛情」を描きつつ、それらがストーリーにしっかりとリンクしているからだろう。ここからネタバレになるが、本作ではウォーレン夫妻の過去の馴れ初めが初めて描かれ、30年に亘る2人の愛情の深さを知ることができる。「エドがいるところが私にとって家よ」というロレインのセリフがあるが、この夫婦の愛情にはまったく揺らぎがなく、エドも常に命を張ってロレインを守り抜く。この揺るぎない前提があるからこそ、悪魔に操られたエドがロレインを襲うクライマックスシーンでは、「悪魔の呪いよりも最後は愛が勝つ」というお決まりの展開なのに、観ている観客には強いカタルシスが生まれるのだ。観客それぞれが持つ、「ウォーレン夫妻がこれしきの敵に負けるはずがない」という気持ちを成就してくれるのである。


そしてそれと並行して、悪魔に憑りつかれ殺人を犯したアーニーとその彼女デビーという、もう一組のカップルの苦難が平行して語られる。こちらも終盤で、悪魔に操られたアーニーが自殺しようとするのをデビーが命がけで止めるシーンがあるが、心から愛し合う若い二人も将来ウォーレン夫妻のような関係になれそうな予感を感じ、観客はやはり彼らを応援したくなる。この年代の違う2組のカップルの存在が、この作品を風格ある存在に高めていると思う。ラストでロレインがペンダントの中から薬を取り出すシーンには、どれだけ愛情が深いんだと思わず涙してしまった。こういうさり気ない場面から、ロレインのエドへの深い愛情が演出できているのは上手い。だからこそラストのキスシーンなどベタな場面のはずなのに、クオリティの高い恋愛映画を観たような充実感を覚えてしまうのである。


ただし、もちろんいくつか残念な点もある。まず悪役の存在感の無さだろう。本作においてのヴィランはあくまで”人間”なので、今までのシリーズに感じていた、悪霊に対する”どうしようもない絶望感”はかなり薄い。この点ではやはり、前作までにおける「アナベル」や「ヴァラク」のような存在感とは比べようもないほどに地味な悪役で、正直ラストの展開も盛り上がりに欠ける。この敵の設定も、本作がホラー映画としてインパクトが弱いことの一因となっているかもしれない。またもう一つの欠点は、サブタイトルだ。「悪魔のせいなら、無罪。」は内容として間違っているうえに、史実をベースにしている割には軽すぎると思う。そもそも悪魔憑きの殺人であることは、実際の裁判では「非科学的だ」と認められず、実際に刑期が5年と短くなったのは、アーニーの服役中における態度が良かったことが理由なのだ。という意味では、悪魔憑き殺人の裁判として弁護側は敗訴だったわけで、ここに盛り上がりは作りづらい。だからこそラストは、事の顛末をエンドクレジットで説明するという演出を選択していると思うので、映画を観終わった後だと特にこのタイトルは違和感が残る。これはマーケティング優先の日本版タイトルだと感じてしまった。


黒人刑事が車の中で、「エルヴィス・プレスリーに会ったことがあるか?」とロレインに聞くシーンがあるが、それに対して「生前も死後もある」と答える場面で、かかっている曲はマーク・ジェイムズの楽曲をプレスリーがカバーした「suspicious minds(疑う気持ち)」だ。ロレインは霊的な能力を疑う刑事に向かって「この曲のタイトルと同じね」と答えるが、本作は愛した相手を、疑わずに最後まで愛し抜く者たちを描いた作品だと言える。死霊館」シリーズとして新境地に踏み出した一作だと思うし、改めてロレインとエドの二人が本シリーズの主人公であると宣言した事によって、次作以降がますます楽しみになった本作。もしかすると、これからは二人の過去にも踏み込むのかもしれない。ホラー映画ながらほとんど残虐な描写はないし、ユニバースとしてより”大衆性”の上がった内容になっているので、広い層の観客にアピールできる作品になっている良作だと思う。

7.0点(10点満点)