映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイレビュー&感想Vol.330:「黒い罠 完全修復版」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は330本目。タイトルはオーソン・ウェルズ監督による、1958年日本公開作品「黒い罠」。特典映像としては「よみがえる悪」「修復への道のり」「オリジナル予告編」で、計40分が収録されている。「よみがえる悪」では、撮影監督のアレン・ダヴィオーが「本作は20回以上観たね。撮影の技術はもちろん、編集技術の宝庫なんだ。どの世代の撮影監督にも『黒い罠』は影響を与えたと思うよ。」と言い、また主演のチャールトン・ヘストンは、「悪役をオーソンが演じると聞いて、”彼は名監督でもあるから、兼任させては?”と提案したんだ。彼が描いた脚本だと、私の役は”メキシコ人犯罪捜査官”だったから、髪と生やした口髭を黒く染め、浅黒いメイクをしたよ。ある日、オーソンが車中での会話を車を走らせながら撮影したいと言い出した。史上初の試みだったね。フロントガラスを外してカメラを置くと言うんだが、車の中に撮影スタッフは乗せられない。すると”俳優にカメラの操作を教えればいい”と言われたよ。自分で”アクション”と言い、車を走らせ演技もする。そして自分で”カット”と言って撮影終了さ。あれは初めての監督体験だったね。」と語っている。

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またヒロインを演じたジャネット・リーは、「原作では、妻がヒスパニックで夫がアメリカ人だったけど、私が配役された時は逆になっていたの。ジョセフ・コットン演じる検視官は脚本になかった役だしね。本作の冒頭のショットは前例のないもので、3分半かけて4ブロックほど移動する間に、ヤギや警官が登場し車も行き交うという、仰天のショットだったわ。」と言い、映画監督のピーター・ボグダノヴィッチは「マレーネ・ディートリッヒいわく、彼女の映画人生で最高の瞬間が『黒い罠』のラストシーンらしい。ただ、ラッシュで彼女を観たスタジオ関係者が、”なぜ彼女が出ている?”と仰天したらしいよ。オーソンは白黒映画を愛し、作品の大半がモノクロだった。彼は”モノクロは俳優の友だ。どんな俳優も白黒の方が演技がはるかに映える。”と言っていたよ。」と語っている。


作品としては、「市民ケーン」で鮮烈なデビューを果たしたオーソン・ウェルズ監督による、フィルム・ノワールオーソン・ウェルズ自身も”クインラン警部”という、映画を牽引する強烈な悪役で出演している。出演は「ベン・ハー」「猿の惑星」のチャールトン・ヘストン、「サイコ」でゴールデングローブ「助演女優賞」を獲ったジャネット・リーなど。公開当時こそ興行的にも批評的にも失敗したらしいが、現在では冒頭の3分20秒に及ぶ長回し撮影を含めて評価が高く、その芸術的価値を認められたことでアメリカ国立フィルムに登録されている。1998年には監督が残したメモに基づいて、再編集を施したディレクターズ・カット版が公開され、本ブルーレイはそのバージョンが収録されている。フランシス・フォード・コッポラの1974年公開「カンバセーション…盗聴…」などにも影響を与えた映画であり、65年前の作品とは思えない驚異的な撮影技術の数々が素晴らしい。特典映像も充実している一本だ。

 

 


監督:オーソン・ウェルズ

出演:オーソン・ウェルズチャールトン・ヘストンジャネット・リー、ジョセフ・カレイア、マレーネ・ディートリッヒ

日本公開:1958年