映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.360:「現金に体を張れ」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は360本目。タイトルはスタンリー・キューブリック監督による、1957年日本公開作品「現金に体を張れ」。特典映像として「オリジナル予告編収録」と、遠山純生氏による”作品解説リーフレット”が封入されている。巨匠スタンリー・キューブリックが、「恐怖と欲望」「非常の罠」に続いて撮ったハリウッド映画の一作目であり、日本公開1957年の長編3作目だ。物語の主軸となるのは、5年間の刑期を経て出所したばかりのジョニー・クレイトンが企てた、競馬場の売り上げ金強奪計画で、競馬場の会計担当やバーテンといった仲間と共に犯した犯罪の顛末を描いた、サスペンスでありフィルムノワールだ。出演は「アスファルト・ジャングル」「ロング・グッドバイ」のスターリング・ヘイドン、「ベン・ケーシー」のヴィンス・エドワーズ、「勝負に賭ける男」のマリー・ウィンザーなど。

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脚本は犯罪小説家のジム・トンプソンとスタンリー・キューブリックが、基本プロットの話し合いを行ったあと、トンプソンがそれをベースにいくつかのシーンを書き上げ、その後キューブリックはそれらの場面の映像化を具現化し、そのうえで更にトンプソンがダイアローグを執筆するという工程を経て作られたらしい。この作品の特徴である、6人の男たちの行動を絶えず時間を巻き戻しながら描くという構成は、当初の脚本段階から構想されていたようだ。スタジオからは直線的な構成に直してほしいという要望があったようだが、物語の肝がこの構成であることを認識していたキューブリックは、この意向をはねのけたということだが、この時系列を操作するという構成は、この後のクエンティン・タランティーノ監督「パルプ・フィクション」などに代表される幾多の作品に受け継がれており、さすがの慧眼だったと思う。犯罪は栄えないという皮肉なエンディングやファムファタールの存在など、いかにもフィルムノワールといった趣が強く、凝った脚本も完成度が高いためサスペンス映画として非常に面白い。キューブリックの初期作としても、見逃せない一作だと思う。

 

 

監督:スタンリー・キューブリック
出演:スターリング・ヘイドン、ヴィンス・エドワーズ、マリー・ウィンザー、ジェイ・C・フリッペン、テッド・デ・コルシア
日本公開:1957年