次に観るべきオススメ映画10本はこれだ!(2010年代洋画サスペンス編)Vol.1
劇場で大々的に公開された作品や、日本での超有名作ではないけれど、スルーするには勿体ない、強くオススメしたい映画をピックアップしてご紹介していく新企画。今回は2010年以降に公開されたサスペンスジャンルに絞って、10本を紹介していきます!ドゥニ・ヴィルヌーヴやロマン・ポランスキー、ペドロ・アルモドバルなどの名匠作品から、デンマーク出身グスタフ・モーラーのデビュー作までハリウッド映画にこだらず選出、さらに基本的には配信やソフト化されていることを前提に、観やすい作品から選出しています。ぜひ今後の作品選びの参考に!第二弾以降も順次公開していく予定です。
灼熱の魂
「メッセージ」「ブレードランナー 2049」などが有名な、カナダの監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督/脚本を手掛けた初期作。ある日、双子の姉弟ジャンヌとシモンの元に届いた、母からの謎めいた遺言と2通の手紙。その2通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に充てたものだった為、彼女たちは彼らの足取りを追う事になる。意外性のあるストーリー展開で、最後にはまったく予想できなかった結末に連れていかれるという意味では、ヴィルヌーヴ監督屈指の傑作だろう。有名な俳優は出演していないが、とにかく強烈なストーリーテリングでラストには打ちのめされる一本だ。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデット
日本公開:2011年
ゴーストライター
「チャイナタウン」「戦場のピアニスト」のロマン・ポランスキー監督による政治スリラー。元英国首相ラングの自叙伝の執筆を依頼されたゴーストライターの男が、島にあるラングの別荘に招かれ取材に当たるのだが、前任者が不可解な死を遂げていることを知ってしまう。出演はユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナンらで、数あるポランスキーのスリラー作品の中でもツイストのあるストーリー展開とエンディングのキレ味なども含めて、非常に完成度の高い一作だろう。ポリティカルな要素と、先の読めない娯楽スリラーが見事に融合した良作だと思う。
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、オリヴィア・ウィリアムズ
日本公開:2011年
私が、生きる肌
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」で有名なスペインの鬼才、ペドロ・アルモドバル監督とアントニオ・バンデラスがタッグを組んだ、サスペンススリラー。最愛の妻を亡くして以来、完ぺきな肌の開発研究に打ち込む天才形成外科医のロベルは、全てのモラルを捨てて、ある人物を監禁して禁断の実験に取り掛かることになる。本来メロドラマやヒューマンドラマをベースにした作家性のペドロ・アルモドバル作品中、もっとも予想がつかない衝撃的な展開で、エンタテインメント映画としても力強い佳作だ。
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス
日本公開:2012年
プリズナーズ
またしてもドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。ヒュー・ジャックマンを主演に迎えた、監督にとってのハリウッドデビュー作でもある。家族で幸せなひと時を過ごすはずの感謝祭の日、平穏な田舎町で少女が失踪してしまう。焦る父親だったが、手がかりは少なく時間だけが過ぎる中、第一容疑者の男が確保されるが、自白も証拠も得られないまま釈放されてしまったことで、遂に父親は”ある一線”を越えてしまう。ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノといった俳優陣と重厚な演出、これも先の読めないストーリー展開によって、一時も画面から目が離せない。サスペンス好きなら間違いなく満足できるであろう傑作。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノ
日本公開:2014年
マジカル・ガール
スペインの新鋭カルロス・ベルムト監督が手掛けた、ノワールサスペンス。スペイン国内の由緒ある映画祭では、軒並み高い評価を受けている。架空の日本産テレビアニメ「魔法少女ユキコ」にあこがれる白血病の少女と、そのアニメのコスチュームを買ってあげようと犯罪に手を染めようとする父親ルイス、さらにひょんな事からルイスと出会う女性バルバラとその元教師ダミアンの運命が交錯していくノワール作品だ。作品構成が巧みであり、終盤になるとパズルのように各キャラクターの設定が、ストーリーにハマっていく気持ち良さがある。長山洋子のデビュー曲が劇中でかかるなど、一見ポップなタイトルと印象を持つ作品だが、負の連鎖が恐ろしくも惹きつけられる。
監督:カルロス・ベルムト
出演:ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ
日本公開:2016年
女神の見えざる手
「ゼロ・ダーク・サーティ」「インターステラー」のジェシカ・チャステインが主演した社会派サスペンス。個人的に近年公開の作品で、”上手い脚本”と聞いて思い出すのは、この映画だ。特定の団体の利益をはかるため、政治家にも働きかけ、マスコミや世論も動かす”ロビイスト”のエリザベス・スローン。彼女が銃擁護派団体に反発し、少数の部下と一緒に銃規制法案を可決させるべく奔走する様を描いていく。132分の上映時間だが計算し尽された緻密な組み立てと、立て続けに起こる衝撃的な展開は、まったく飽きさせない。”ロビイスト”という日本では聞きなれない職業のため、難しそうな映画だと思いきや、誰が観ても楽しめる超一級の娯楽サスペンスに仕上がっていると思う。
監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、サム・ウォーターストン
日本公開:2017年
ノクターナル・アニマルズ
2009年「シングルマン」で映画監督デビューした、世界的ファッションデザイナーであるトム・フォードの長編監督第2作。オープニングから衝撃的で不穏な映像が流れ、エンディングまでその勢いが落ちることはない。主演はジェイク・ジレンホールとエイミー・アダムス。アートギャラリーのオーナーとして成功を収めたスーザンのもとに、20年前に離婚した作家志望の元夫エドワードから、彼が書いた小説が送られてくる。「スーザンに捧ぐ」と書かれたその小説は、暴力的かつ衝撃的な内容だった。そしてスーザンはこの小説の内容にのめり込んでいく。小説内の世界と現実世界を交互に見せながら進行する構成を取りながら、遂に辿り着くラストの展開には唸らされる。トム・フォードらしいアート的な崇高さと、優れたミステリが持つ推進力が組み合わされた非凡な作品だ。
監督:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン
日本公開:2017年
THE GUILTY/ギルティ
緊急通報指令室のオペレーターにかかってきた、電話から聞こえる声と音だけで誘拐事件を解決するという異色のサスペンス。元々はインディーズのデンマーク映画を、アントワン・フークア監督/ジェイク・ギレンホール主演でハリウッドリメイクもされている。ほとんど展開に変更はないのでお好みで選択して頂ければと思うが、これだけ限定的なシチュエーションにも関わらず、車の発進音や通話者の声、かすかな環境音など電話からの情報を頼りに、犯人を限定していく展開には否応なく引き込まれる。いわゆるドンデン返しの展開もあり、88分というタイトな上映時間もあって満足度の高い小品だろう。
監督:グスタフ・モーラー
出演:ヤコブ・セーダーグレン、イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセン
日本公開:2018年
ゴーストランドの惨劇
カルトホラー「マーターズ」を撮った、フランス人監督パスカル・ロジェの2019年作品。絶望的な惨劇に巻き込まれた、あるシングルマザーと姉妹の運命を、鑑賞者の「定石」を外してくるようなストーリーテリングと、数々の伏線とミスリードで描いたホラーサスペンス。ホラー要素が強いので、映画全体に張り付いている強烈な「絶望感」には気が滅入ってくるが、全てが解ったうえで観ても楽しい映画である。いわゆる”二回目の鑑賞”が楽しいタイプの作品だろう。またセットの美術も美しく、芸術的な観点からも楽しめる。
監督:パスカル・ロジェ
出演:クリスタル・リード、エミリア・ジョーンズ、アナスタシア・フィリップス
日本公開:2019年
ルース・エドガー
学校で一番の優等生である17歳の高校生ルース・エドガーとは、いったい何者なのか?実は恐ろしい存在なのでは?白人の義理父母と暮らす黒人ルースの内面に迫っていく本作は、多面的な解釈が可能な作品だと思う。ただ、あまりセリフでは状況を説明しない映画なので、各シーンに込められた意図を解釈しながらの鑑賞が楽しいタイプの映画だ。現代アメリカが抱える問題という、メッセージ性とエンタメ性がうまく融合した傑作に仕上がっていた本作。特にあの”ラストシーン”は忘れられない印象を残すだろう。
監督:ジュリアス・オナー
出演:ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー、ケルヴィン・ハリソン・Jr
日本公開:2020年