映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は458本目。タイトルはイ・チャンドン監督による、2004年日本公開作品「オアシス」。特典映像としては「日本版予告編」のみ。「シークレット・サンシャイン」「ポエトリー アグネスの詩」「バーニング 劇場版」など、アジアを代表する映画作家イ・チャンドン監督が放った長編第3作目。韓国で公開された2002年の第59回ヴェネツィア国際映画祭においては、「監督賞」「新人演技賞」「国際批評家協会賞」などを受賞し高く評価された作品だ。出演は「力道山」「監視者たち」「1987、ある闘いの真実」などのソル・ギョング、「大統領の理髪師」「お嬢さん」などのムン・ソリ。この二人はイ・チャンドン監督による、2000年の作品「ペパーミント・キャンディー」でも共演している。2019年の「バーニング 劇場版」公開にあわせて、日本公開から15年の時を経て4Kレストア・デジタルリマスター版が公開された事により、本ブルーレイが発売された。
ひき逃げ事件を起こして刑務所から出たばかりの青年ジョンドゥは、いつも社会と歯車が合わない青年であり、家族のもとへ戻るものの明らかに皆から煙たがられていた。そんなある日、被害者家族のアパートを訪れたジョンドゥは、部屋でひとり取り残されている脳性麻痺の女性コンジュと出会う。コンジュは障害のために他者とうまくコミュニケーションが取れなかったが、ジョンドゥはそんなコンジュに惹かれ、同じ時間を過ごすうちに互いの距離を詰めていく。純粋な愛を育む二人だったが、家族も含めた周囲の人間からはまったく理解されず、遂にはある悲劇的な事件が起こってしまう、というストーリーだ。世間から疎外され社会不適合者のレッテルを貼られた男性と、脳に障害を持つ女性の純粋な愛を真っ向から描いた作品で、脳性麻痺のコンジュを演じたムン・ソリの演技も含めて、まったく映画の表現として”逃げていない”のは見事だろう。実際に重度の脳性マヒの障害をもつ女性から、ムン・ソリは1年もの間、演技指導を受けたらしい。「『オアシス』はただのラブストーリーだ。特別なきっかけがあったわけでもなく、以前から愛の物語を作りたかったし、そんな愛をしてみたいという内なる欲望があった。 また、絶望の中でも愛することができることを見せたかった。」というのは監督のコメントだが、ラストシーンにおける暖かな日差しの中にいるコンジュの姿が、目に焼き付いて離れない。韓国映画史に残る、普遍的な恋愛映画だと思う。
監督:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、チュ・グィジョン、リュ・スンワン
日本公開:2004年