映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「マッチポイント」を観た

「マッチポイント」を観た。

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監督:ウディ・アレン

日本公開:2006年

 

ウディ・アレンが監督、脚本を手掛けた作品で、36本目の監督作。多作である。有名どころとしては古くは「アニー・ホール」「マンハッタン」、近作だと「ミッドナイト・イン・パリ」「ブルー・ジャスミン」あたりだろうか。80歳を越えて、いまだに年一本のペースで作品を撮り続けているというのは、やはり並大抵ではない。今回は2006年作品の「マッチポイント」を観た。ウディ・アレン作品の中でも、サスペンスとしてスリリングで面白い作品だった。

 

あらすじ(ネタバレ全開)

主人公クリスは元プロテニスプレイヤーだったが、今は高級テニスクラブでインストラクターをしていた。生徒の1人である大金持ちのトムと親しくなったクリスは、お互いオペラファンという事でオペラを観に行き、そこでトムの妹であるクロエと知り合う。独身のクロエはクリスに一目惚れし、二人は交際を始める。

 

ある日トムの邸宅に招かれたクリスは、そこでトムの婚約者であるというノラと出会うが、女優志望の彼女にクリスは思わず心惹かれてしまう。一方、トムもノラに惚れていたが、トムの母親は彼女がアメリカ人ということもあって、婚約そのものに反対していた。

 

妹クロエは、テニスのインストラクターでは無くクリスをビジネスマンにしたいという事で、父親に頼んで彼が経営する大会社にクリスを雇い入れてもらうことにする。クリスはトムの家族一同にも気に入られ、結婚の話と同時に、会社での出世も約束されていた。

 

だが、それとは裏腹にトムの婚約者であるノラを愛してしまい、苦悩するクリス。そんな二人はひょんな事から一度きり関係を結んでしまう。その後、クリスはクロエと結婚。しかし、トムとノラの婚約は母親の猛反対に押し切られ解消されてしまい、同時にクリスがノラに会う機会もなくなってしまう。

 

しかし、ある日美術館でクリスとノラは偶然に再会。クリスの誘いに今度はノラも応じ、二人は密会を始めることになる。そんな事は知らずに結婚生活を送る妻クロエの悩みは、子供が出来ない事。だが、皮肉な事に関係を続けるうちノラはクリスの子を妊娠してしまう。クリスは中絶を求めるがノラは拒否し、ノラは離婚を迫る様になる。ついには家にも電話をかけてくる様になり、クリスはノラを殺す決断をする。

 

ショットガンを手にしたクリスはノラのアパートへゆき、まず隣人のイーストビー夫人を殺してから部屋から宝石や指輪を盗む。そしてさらに帰宅してきたノラを撃ち殺し、麻薬中毒者の強盗による犯罪と見せかけるという行動に出る。そして、盗んだ宝石を川に投げ捨て、証拠を隠滅する。そんな折、クロエも不妊治療が功を奏してついに妊娠した事が分かる。

 

ノラの死体が見つかり、殺人事件の調査が始まると、警察の捜査の中でノラの日記が見つかり、ノラとクリスの不倫関係が明るみに出る。プライバシーを厳守して欲しいと警察に告げて取り調べに応じるものの、自分の無実を主張するクリス。だが、警察は動機のあるクリスに目を付けていた。

 

しかし、事件は突如解決する。イーストビー夫人の指輪を持った麻薬の売人が、事故による死体で発見されたのだ。クリスが川に捨てたと思っていたイーストビー夫人の指輪が、たまたま柵に当たって川に落ちず、それを麻薬の売人が拾ってその後偶然、事故により死んでしまった。その為、「現場から無くなった指輪を持っていた」という理由から、ノラ及びイーストビー夫人殺人事件の真犯人と判断されたのだ。

 

その後、クロエは無事にクリスとの赤ちゃんを産み、クリスは罪に問われることなく生活を続ける事が暗示され、映画は終わる。

 

感想

なんともウディ・アレンらしい、アイロニカルなストーリーである。マッチポイントというタイトルどおり、この映画はテニスにおける「勝負を分ける最後の一点」をモチーフにしているが、その勝負の勝敗には実力では無く「運」が重要だと言っている。テニスでネットに当たったボールが、どちらのコートに落ちるか分からないように、クリスが川に投げた指輪が柵に当たらずそのまま川に落ちていれば、クリスは逮捕されていただろう。これは「運命」の不条理さを描いている作品だと思う。

 

この映画の主人公クリスは、全く観客の同情を得られないキャラクターになっている。極めて利己的で、勝手な理由から殺人を犯す彼は、本来なら運命によって罰せられるべきキャラクターであるはずだ。だが、むしろ運によって彼の人生は救われる。ここで観客の予想を裏切る為、ネット上でも「納得出来ない」という意見が多いのもわかる。

 

だが、この映画は勧善懲悪な倫理観を問う作品では無く、あくまで運命という人間にとって「不可抗力なもの」を、ドライな目線で描いている。クリスが映画の冒頭でドストエフスキーの「罪と罰」を読んでいるシーンがあったが、あの物語が人を殺した男の苦悩と人の愛による人間性の回復を描いている事からも、このオチに対するウディ・アレンの独特な皮肉感が感じられるかもしれない。

 

またこの映画におけるファム・ファタールであるスカーレット・ヨハンソンの前半と後半の変貌ぶりも怖くて良かった。前半の目線の動かし方ひとつで男を虜にする妖艶キャラはさすがのセクシーさだったし、後半のクリスに離婚を要求する鬼気迫る感じは、同じ人間とは思えない迫力があった。女の業の様なものすら感じさせる、この映画におけるスカーレット・ヨハンソンの役割はとてつもなく大きいと思う。

 

結論、「マッチポイント」は今から10年も前の作品だが、ウディ・アレンの映画では五本指に入るくらいに好きな作品だ。この作品が好きな方は「ブロードウェイと銃弾」や「タロットカード殺人事件」なども良いと思うが、個人的には「ブルー・ジャスミン」は是非オススメしたい。そのうち、再見して感想も書きたいと思う。