映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「お嬢さん」を観た(感想&解説アリ)

「お嬢さん」を観た。

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監督:パク・チャヌク
出演:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ
日本公開:2017年

 

オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」「渇き」のパク・チャヌク監督最新作。R18+作品である。韓国でも19歳未満は閲覧不可だが、それでも観客動員が400万人を超えるという大ヒット作となり、カンヌ映画祭を始めとして世界中で高い評価を受けている。原作は「このミステリーがすごい!2005」で1位を獲得したサラ・ウォーターズのミステリー「茨の城」。本作はたぶん万人ウケはしないだろうが、強烈な個性で観る者を揺さぶる「傑作」だと思う。これはハリウッドでは作れない作品だ。やはり韓国映画、恐るべしである。今回はネタバレ無しで。

 

あらすじ

舞台は1930年代の日本統治下の朝鮮半島。一人の貧しい朝鮮の少女スッキが日本人の資産家、上月家に小間使いとして雇われる。その屋敷には秀子という令嬢と叔父が住んでいて、スッキは秀子の世話係として奉公する。だか実は、スッキは詐欺集団に育てられた孤児であった。スッキは藤原伯爵と名乗る詐欺師と組んで、伯爵と秀子を結婚させて、その財産を奪うという詐欺を計画していた。

 

感想&解説

まずは冒頭から、この映画が持つ独特の空気感に、いきなり巻き込まれる。この叔父と秀子が住む屋敷のセットとライティングが素晴らしい。まるで怪奇映画のようなオドロオドロしい雰囲気に「この屋敷は絶対にヤバい」と、直感的に感じるし、それでいて美しさもある。まるで江戸川乱歩の世界観の中で、ド変態のキャラクター達が闊歩する。そして、エロティシズムは全開である。お嬢様と世話係のスッキが見せる「百合」シーンはかなり強烈だ。とはいえ、もちろんこの作品はそれだけが特徴の単なるポルノ映画ではない。

 

この作品、とにかく笑える。役者たちが話す、摩訶不思議なイントネーションの日本語と、セリフ回し。ハ・ジョンウの「この果実はもうずいぶん熟れているようだ」のセリフの後、桃の汁を飛ばしながらかぶり付くシーンは、本気で爆笑してしまった。この日本語に関しては、あまりの不自然さに、映画に集中出来ないという意見もあるだろう。だが、この不思議さを堪能出来るのは、日本人の特権とも言える。とにかくカタコトで真面目な顔をしながら、淫語と放送禁止ワードを連発する姿は、なんだかコメディを観ている気分になる。

 

また、この作品のもう一つの大きな魅力はストーリーだ。映画全体が大きく三幕構成になっており、第1章はおおよそ観客の想像どおりに進行する。だが1時間を越えたあたりの第1章のラストで、いきなりストーリーは予想を超える展開を見せる。これには正直、驚いた。そして第2章は、その第1章のラストに至る裏側を、時系列をさかのぼって描いていく。この第2章が、この映画のメインとなるのだが、主役だと思っていたキャラクターが入れ替わる感覚で、見事に騙される。

 

この映画に登場する男性キャラクターは、ほぼ全員がろくでなしの変態である。逆に女性キャラクターは真摯に「愛」に生きる。1930年代のほとんどの女性が、抑圧された人生を送っていた事は想像に難くないし、事実この作品でも男たちの前で官能小説の朗読をさせられたり、簡単に性の対象として扱われている。そんな女性キャラクター達が、第3章で起こす行動には素直に喝采を送りたくなるし、映画的なカタルシスがある。

 

とにかく不可思議な世界観の作品だが、映画のクオリティとしてはとても高く、かつ面白い。R18+という事で、直接的な性表現シーンもあるが、不快になる演出にはなっていない。映画的なビジュアル、世界観、ストーリー、女優の体当たりな演技とパク・チャヌク監督の映画作りのセンスが爆発している。本作「お嬢さん」は、好き嫌いは分かれるかもしれないが、決して観ても損はない作品だと思う。