映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。劇場公開されている新作映画を中心に綴っていこうと思います。

「マザー!」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

マザー!」を観た。

f:id:teraniht:20180924095432j:image
監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ジェニファー・ローレンスハビエル・バルデムエド・ハリスミシェル・ファイファー

日本公開:未公開


「レスラー」や「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督最新作が、本国アメリカでは2017年に公開され、日本でも2018年1月には公開になると聞いて楽しみにしていたのだが、なんと米スタジオパラマウント・ピクチャーズの意向により公開が中止になってしまった。主演ジェニファー・ローレンスで、ハビエル・バルデムエド・ハリスミシェル・ファイファーなどが脇を固めるサスペンススリラーと言うこともあり、かなり期待値が高まっていたので残念だったが、今回ようやくブルーレイにて鑑賞した。ちなみに本ブログで日本未公開作品を扱うのは初めてである。基本的にダーレン・アロノフスキー作品は非常にクセがあるのだが、今作はどうだったか?ちなみにネット上でもかなり解釈が出尽くしているので、今更感は強いが完全ネタバレありなので、ご注意を。

 

あらすじ

郊外の一軒家に暮らす一組の夫婦のもとに、ある夜、不審な訪問者が現れたことから、夫婦の穏やかな生活は一変。翌日以降も次々と謎の訪問者が現れるが、夫は招かれざる客たちを拒む素振りも見せず、受け入れていく。そんな夫の行動に妻は不安と恐怖を募らせていき、やがてエスカレートしていく訪問者たちの行動によって事件が相次ぐ。そんな中でも妊娠し、やがて出産して母親になった妻だったが、そんな彼女を想像もしない出来事が待ち受ける。

 

感想&解説

ダーレン・アロノフスキー監督の新作が、突然日本公開されないという事は、よほど作品のテーマに問題があるのか、日本人の観客にはヒットしないと思われたのか、どちらだと思ったが、作品を観た所感としては「どっちも」といったところだ。アメリカでも賛否両論が巻き起こっているようだが、個人的には作品のテーマも思ったよりも分かりやすいし、なにより大変に面白い映画だと思った。但し、かなりキリスト教的な宗教観が色濃い事と、一部ショッキングな描写があるのが日本公開を見送られた原因だろう。具体的には赤子殺しとカニバリズムである。


本作はジェニファー・ローレンスハビエル・バルデムの夫婦が、全く場所がどこにあるのかわからない屋敷に二人で暮らしているところから始まる。特にいつの時代かも説明されないので、2018年現在なのか1980年代なのか、60年代なのもよく分からない。屋敷は大きく豪華だが、どうやら一度火事にあって、ジェニファー・ローレンス演じる妻が家の修復をしてきたらしい事が描かれ、夫のハビエル・バルデムは詩人で本を執筆しているがどうやら今はスランプらしい事がわかる。妻は夫と二人きりの静かな生活を望んでいるが、そこへエド・ハリス演じる謎の訪問者が屋敷に訪れる事から、事態は急変していく。訪問者は夫のファンらしく、二人は意気投合して夫は彼を家に泊めると言い出す。


もちろん妻はほとんど見ず知らずの男を泊めるのに不安を感じるが、夫に押し切られてしまう。すると、次の日には何故か、ミシェル・ファイファー演じる訪問者の妻が屋敷に訪れる。彼女はジェニファー・ローレンスに対して非常に横柄な態度を取り、夫婦は家のルールを守らず徐々に屋敷を侵食していく。遂には二人の息子まで屋敷に現れ、ケンカの末に兄が弟を殺してしまうという事件が起こる。すると彼らは家の中で息子の葬式を始め様々な参列者が屋敷を訪れる。そして、妻が修繕してきた家の中を無茶苦茶に破壊していく。ハビエル・バルデム演じる夫はそれでも彼らに寛大だが、遂に妻は怒りを爆発させ、彼らを全て追い出す。


その後、平穏な毎日が訪れ、妻は妊娠に気付き二人には赤ちゃんが出来る。段々とお腹が大きくなり、夫もスランプから脱却し遂に新作が発売される。すると、今度はまたファンだという集団が大挙して屋敷を訪れ、夫が彼らを受け入れた為、再び家の中は混乱していく。何故か戦場や奴隷部屋など悪夢的な状況が家の中に起こるが、その最中に妻は産気づき、夫の前で男の子を出産する。妻は夫に不信感を露わにして子供を抱かせないが、ついウトウトした隙に赤ちゃんを奪われて、群衆の手に渡ってしまう。そして、赤ちゃんは殺され群衆により食べられる。遂に妻の怒りは極限に達し、自ら家に火を付ける。群衆と共に火に飲まれた妻は大火傷を負い死にかけるが、何故かそこに無傷の夫が現れ、妻の心臓を取り出す。すると、その中から宝石が現れ、家の中が何事も無かったかのように元通りになる。そして、またベッドにはジェニファー・ローレンスではない新しい妻が横たわり、夫に呼びかけるところで映画は終わる。


この作品のテーマ/根幹にはキリスト教の教典、聖書が横たわっている。ハビエル・バルデム演じる夫は神や創造主のメタファーであり、ジェニファー・ローレンス演じる妻は、タイトルにもなっている母なる大地である地球。エド・ハリスミシェル・ファイファーは原罪を犯すアダムとイブである。次に現れる息子たちはアダムとイブの息子カインとアベルによる人類最初の殺人の再現であり、子供を授かった事に妻がすぐに気付くのは、受胎告知。よって生まれた赤ちゃんはイエス・キリストだ。夫の書いた書物は新約聖書で、ファンという名の信者たち人間が大挙して押し寄せるが、彼らはキリストを殺し、母なる大地で破壊や暴力を繰り返し、地球を蹂躙し尽くす。そして、怒りの炎によって地球は滅亡するという基本的なお話だ。だがラストがオープニングと循環構造になっている為、この過ちを「神も含めて」人間は何度も犯してしまうという、なんとも皮肉的かつ批判的な視点に貫かれている。


観ている間、非常にストレスが溜まる作品だし、特に熱心なキリスト教の信者ならテーマそのものに反発を覚えるだろう。アメリカでの一般客の評価は散々らしい。いかにもハーバード大学出身のインテリが撮った、頭でっかちな表現だと思うが、映画としては平凡な作品では決して無い尖がった感性に貫かれており、間違いなく「攻めている」映画だ。ここは素直にダーレン・アロノフスキー監督の才能に感服した。面白いという表現は当てはまらないが、観れば必ず心を動かされる一作になっていると思う。良くも悪くも、次回作からも目が離せない監督の一人である。