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「ゴールデン・リバー」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

「ゴールデン・リバー」を観た。(完全ネタバレ&解説アリ)

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監督:ジャック・オーディアール

出演:ジョン・C・ライリーホアキン・フェニックスジェイク・ギレンホールリズ・アーメッド

日本公開:2019年


2015年「ディーパンの闘い」のジャック・オーディアールが監督を務め、第75回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した作品。パトリック・デウィットの小説「シスターズ・ブラザーズ」を原作にしている。最初に予告を観た時から、豪華な役者陣だしサスペンス要素が強そうだったので、公開を楽しみにしていたが、実際に観終わると予告の印象とはかなり違う事に驚いた。東京の劇場は公開館数が少ない為か、年配の方を中心に超満員だったのだが、いわゆる「西部劇」を期待して観に来ていたのかもしれない。映画が終わった後の微妙な空気感が印象的だった。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

ゴールドラッシュに沸く1851年アメリカ。最強と呼ばれる殺し屋兄弟の兄イーライと弟チャーリーは、政府からの内密の依頼を受けて、黄金を探す化学式を発見したという化学者を追うことになる。政府との連絡係を務める男とともに化学者を追う兄弟だったが、ともに黄金に魅せられた男たちは、成り行きから手を組むことに。しかし、本来は組むはずのなかった4人が行動をともにしたことから、それぞれの思惑が交錯し、疑惑や友情などさまざまな感情が入り乱れていく。

 

感想&解説

監督のジャック・オーディアールはフランス人なのだが、フランス出身の監督がアメリカが舞台の西部劇を撮るとこうなるのか、と変な感心をしてしまう。とにかく西部劇の「お約束」を外しまくって作られた作品で、予告編やポスターを観て感じた「金を巡って、4人の男たちがお互いを騙し合ったり殺し合うサスペンス西部劇」だと思っていると、実は全く違う作風の映画で驚かされた。予告編に見事に騙された訳だ。本作は、実はもっと牧歌的なロードムービーであり、サスペンスの要素などは微塵もない、ストーリーも意外性はあるが割とシンプルなヒューマンドラマであった。


シスターズ兄弟という変わった名前の殺し屋兄弟(ジョン・C・ライリー&ホアキン・フェニックス)が、一帯を仕切る提督の命令により、黄金を河から見つけられる「予言者の薬」の化学式を発見したという化学者ウォーム(リズ・アーメッド)を追っている。提督の連絡係であるモリス(ジェイク・ギレンホール)は先に科学者ウォームと接触していたが、ウォームの「暴力のない理想郷を作る」という思想に魅力されて、ウォームと二人で金を見つけて逃げる事を選ぶ。という訳で、ストーリーとしては二組の追うコンビと追われるコンビの逃走劇になる。


ただそれもつかの間で、モリスとウォームが提督からの別の追っ手から襲撃を受け、それをシスターズ兄弟が助けたことと、父親へのトラウマという共通点により、4人の間には友情が芽生える。そして4人で黄金を探すために河を塞き止める作業を開始する。遂に河に薬品を入れて、川底の黄金が光り出すとそれを必死に集める4人。だがその薬品は劇薬で、長い時間は河に入っていられず、たまに水で薬品を洗い流しながら作業を進めなければならないのだが、欲に目が眩んだホアキン・フェニックス演じる弟が、もっと金が見つかりやすくする為に、薬品を大量に河に入れてしまう。


その影響でウォームとモリスが死んでしまい、更に弟も大怪我をして腕を切断するハメになってしまうという状況に陥る。そんな時にも、裏切った兄弟を追いかけて、提督の追っ手は命を狙いにくる。なんとか彼らを撃退しながら、地元であるオレゴンに提督を殺しに戻るシスターズ兄弟だが、戻った時には提督はすでに寿命で死んでいた。そして兄弟は母親の元に帰り、そのまま幸せな時間を過ごして、映画は終わる。


実はこのタイトルになっている「ゴールデン・リバー」についての描写はほとんどなく、この邦題には予告編に続いて違和感が残る。この作品は、99%「シスターズ兄弟」について語った映画で、やはり原題の「THE SISTERS BROTHERS」の方がしっくりくるだろう。それにしても、変なバランスの作品である。重要人物だと思っていた、ジェイク・ギレンホールはあっさりと死んでしまうし、映画の大半はこの兄弟たちの痴話喧嘩と友情をこれでもかとコッテリ描く。その中で、ジョン・C・ライリー演じる兄が特にコメディリリーフとして良い味を出しているし、傷ついた愛馬を看病する姿など魅力的に描かれている。いわば一番ルックス的には華がないが、ほとんどジョン・C・ライリーが主人公の作品だと言って差し支えないだろう。


映画のラストシーンは、兄弟が母親の元に帰る場面だ。弟は風呂に入り、兄はベッドに横になっているシーンで、突如「THE SISTERS BROTHERS」とタイトルが表示されて、映画は終わる。弟が強い憎悪から父親を殺した事が劇中で語られるが、この余りに唐突なシーンは、今まで数えきれない程の罪を犯した彼ら兄弟は母親への胎内回帰を願っているのだと感じた。この辺りのセンスもフランス人監督っぽい。とにかく、西部劇ならではの決闘シーンや派手なアクションシーンはほとんどなく、意図的にカタルシスを遠ざけた作風の為に、退屈だと感じる人も少なくないだろう。ただ、観終わった後の余韻は悪くない。ジョン・C・ライリーの台詞や演技も良かったし、もう一度観るともっと好きになる気がする、かなり独特な作品だった。