映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。劇場公開されている新作映画を中心に綴っていこうと思います。

「ジェミニマン」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

ジェミニマン」を観た。

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監督:アン・リー

出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライブ・オーウェン

日本公開:2019年

 

ブロークバック・マウンテン」や「ライフ・オブ・パイトラと漂流した227日」の監督、巨匠アン・リーがSFアクションを撮っていると聞いて楽しみにしていた本作。主演は「メン・イン・ブラック」や「アイ・アム・レジェンド」のウィル・スミス。本作は、ある意味でウィル・スミス祭りとなっており、20代の若きウィル・スミスがフルCGで再現されているのも話題になっている。いわゆるクローンものという定型的なジャンルの中で、本作はどれくらい過去作品と差別化できているのか?今回もネタバレありで。

 

あらすじ

史上最強とうたわれるスナイパーのヘンリーは政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きをすべて把握し、神出鬼没な謎の襲撃者の正体は、秘密裏に作られた若い頃のヘンリーのクローンだった。その衝撃の事実を知ったヘンリーは、アメリカ国防情報局の捜査官ダニーの協力を得ながら、政府を巻き込む巨大な陰謀の渦中へと身を投じていく。

 

感想&解説

まず最初にお断りをしておきたいのだが、僕の今回の鑑賞環境は「2D字幕」である。これがもっとも上映数の多いパターンだと思うが、どうやら「3D+IN HFR(ハイ・フレーム・レート)」の上映方式で観ると、かなり本作の評価が良くなるらしい。通常は1秒24フレームのところを、1秒120フレームで撮影しつつ更に3Dという事で、映像的にはかなりの没入感らしいのだが、上映館数と回数も限られており残念ながらまだ未見である。今回の感想はその前提なので、ご注意を。

 

クローンをテーマにした映画といえば、古くは2005年マイケル・ベイ監督の「アイランド」や、2009年ダンカン・ジョーンズ監督の傑作「月に囚われた男」、2001年ゲイリー・シニーズ主演そのものズバリ「クローン」など、かなりの数に上る。そういえばトム・クルーズ主演の2013年「オブリビオン」もそうだったと思う。いわゆる「本物」と「クローン」が存在する事による、お互いのアイデンティティのぶつかり合いや、同じ見た目による事での周りの人間との軋轢などを描きながら、最後はどちらかが生き残るのか、もしくは友情が芽生えるのか、というあたりが穏当なストーリーの着地になるが、残念ながら本作もその枠からはみ出してはくれない。はっきり言えば、ストーリーの観点で本作には語るべきポイントはないと言えるだろう。

 

ウィル・スミスとその若きクローン、さらにクライブ・オーウェン演じるクローンの育ての親との三角関係をベースにお話は進むのだが、クライブ・オーウェンがクローンを軍事目的に利用しようとしていた悪玉だったといえば、もうこれ以上の説明は必要ないと思う。若きウィル・スミスと、年老いたウィル・スミスのガチンコ対決も、何か年齢を重ねているが故のウィークポイントや、逆に知識があるが故に有利になる展開もなく、ただ単純な殴り合いに終始してしまう為に、格闘シーンとストーリーが有機的に機能することも無く退屈だ。

 

それよりも本作の大きな特徴は、中盤でのバイクシーンだろう。バイクチェイスからの単車を使った格闘シーンは、カット割りから得られるスピード感や豪快なアクション演出含めて、かなりフレッシュなシーンとなっていると思う。追う追われるのそれぞれの一人称視点の映像を織り交ぜたり、逆に同じカットの中に高低差のある追っかけっこを見せたりと、その編集テンポも含めて手に汗握る。さらにこの若きウィル・スミスもフルCGとは思えないほどの質感で、その昔2001年に公開された、坂口博信監督「ファイナルファンタジー」で顕著になった、CGなどの映像表現で「ほぼ忠実の一歩手前」までリアル度が上昇すると、人間はとたんに嫌悪感を抱くようになるが、さらに忠実度が上がり実物と見分けが付かないほどリアルになると、人は一転して好印象を抱くという「不気味の谷現象」を思い出してしまった。それくらいに「ファイナルファンタジー」と本作「ジェミニマン」では、CG技術に隔世の感がある。今作のフルCGウィル・スミスには、十分に感情移入が可能なリアリティがあるのだ。

 

ブロークバック・マウンテン」や「ラスト、コーション」、「ライフ・オブ・パイ」といったアン・リーフィルモグラフィー上では、かなり特殊な立ち位置の作品だと思うが、過度な期待を寄せて観なければ、そこそこの良作だと思う。特に前述したバイクシーンは、この作品の見どころの全てが詰まった名シークエンスだと言えるだろう。残念ながら全米での興行も大コケで、80億の赤字という報道もあったが、これは明らかに制作費の使い過ぎによるものだと思う。B級アクション映画と割り切って観れば、まずまず楽しい作品だった。