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「ターミネーター:ニュー・フェイト」を観た(完全ネタバレ&解説アリ)

ターミネーター:ニュー・フェイト」を観た。

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監督:ティム・ミラー

出演:アーノルド・シュワルツェネッガーリンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイビィス

日本公開:2019年


ジェームズ・キャメロンが生み出した、1984年のSFアクション「ターミネーター」と、その続編1991年「ターミネーター2」は大傑作だったが、本作はシリーズ通算6作目。キャメロン自らがプロデューサーに名を連ねている。ジェームズ・キャメロンがこのシリーズに携わるのは「2」以来ということもあり、本作は「ターミネーター2」の正当な続編として位置付けられていて、「3」以降の作品はいったん無かった事になっているという面白いシリーズだ。監督は「デッドプール」のティム・ミラーリンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーも28年ぶりにシリーズにカムバックし、シリーズの顔であるT-800を演じるアーノルド・シュワルツェネッガーももちろん出演している。今回もネタバレありで。

 

あらすじ

人類滅亡の日である「審判の日」は回避されたが、まだ危機は去っていなかった。メキシコシティで父と弟とごく普通の生活を送っていた21歳の女性ダニーのもとに、未来から最新型ターミネーター「REV-9」が現れ、彼女の命を狙う。一方、同じく未来からやってきたという女性戦士グレースが、ダニーを守るためにREV-9と壮絶な戦いを繰り広げる。何度倒しても立ち上がってくるREV-9にダニーとグレースは追いつめられるが、そこへ、かつて人類を滅亡の未来から救ったサラ・コナーが現れる。

 

感想&解説

ターミネーター」シリーズにおいて、ジェームズ・キャメロンの名前は、観客にとって絶大なる信頼を得られる要素だろう。しかもリンダ・ハミルトンまで再登場するという事で、本作の予告編を最初に観た時の興奮は忘れられない。戦うサラ・コナーの勇姿に、今年の4月に公開された「ハロウィン」におけるローリーを思い出し、ジェイミー・リー・カーティスリンダ・ハミルトンの姿が重なったものだ。そういえば、デビッド・ゴードン・グリーン監督の「ハロウィン」も、1978年に公開された初代の正当続編ということで、他のシリーズ作はスルーされていた事を思い出す。


とにかく、キャメロンにとっては名実共に初期の代表作であり、思い入れのある「T2」の正当なる続編を、いよいよ自らの手で作りたかったのかもしれない。前作の「新起動/ジェネシス」は批評家や観客からの評判も散々で、リブート3部作シリーズとして予定されていたが、その続編も立ち消えになったという「ターミネーター」作品としては黒歴史になっている。確かに、過去作の細かいオマージュが散りばめられていて、楽しいシーンもあったが、設定がメチャクチャ過ぎていて「トンデモ映画」というイメージが強いのは確かだ。


それから4年を経て、遂に真打ち登場といった感じで「ニュー・フェイト」が公開となった訳である。ポスターには、監督名よりも上に「ジェームズ・キャメロン製作復帰」の文字が踊り、シュワルツェネッガーよりも大きく、リンダ・ハミルトンの姿がデザインされている。本作における重要人物が誰なのかは、これからも明らかだ。あの溶鉱炉に親指を立てて消えていったT-800が救った、「審判の日」以降のターミネーターが見られる訳で、これは期待値が上がっても仕方ないだろう。


ところが、いきなり映画冒頭から衝撃のシーンが訪れる。「2」であれほど苦労して生き残った少年ジョン・コナーが、あの戦いから3年後にアッサリと違うT-800によって射殺されてしまうのだ。そしてストーリーはそれから22年後が経過し、REV-9という新たなターミネーターが襲来してきた事を描く。REV-9の標的はダニーという女性で、そのダニーの前に彼女を守ろうとする、グレースという女性が未来からタイムスリップしてくる。グレースの話からREV-9はスカイネットによるものではなく、新たな人工知能「リージョン」というAIによって作られたという事がわかり、ここからは改造人間グレースと、過去にジョンを殺されて怒りに燃えるサラ・コナーが、ダニーを守る為に共闘していくという流れになる。


この後は、ジョンを殺してしまった後で家族を持った事により、「人間性」に芽生えたT-800がサラ達と合流して、ひたすら襲ってくるREV-9との追っかけっこが続くのだが、何故ダニーが襲われるのか?と言えば、「将来ダニーがレジスタンスのリーダーになるから」らしい。T2のジョンと同じ立場になるから、未来からターミネーターを寄越して殺そうとしているというのだ。


ここまで観た時、正直この展開に逆に驚いてしまった。何という既視感だろう。T2の正当な続編というより、本作はあまりにT2の完全なる焼き直しに過ぎないからだ。主要キャラクターを女性陣に変えたりしているが、描いている内容があまりにターミネーター2クリシェに溢れていて、全くストーリーに意外性がないのである。自己犠牲による相討ちというオチも含めて、全く新鮮味がない。また今回のシュワルツェネッガー演じるT-800の魅力の無さにも、呆れるしかない。


ジョン・コナーを殺した後、自分も家庭をもって子供の尊さを知ったみたいな事を言っていたが、こんなヒューマニズムあふれるロボットが相手なら、そもそも未来で戦争など必要なく、もっと話し合いで解決出来てしまうのでは?と思ってしまう。あれほど旧作では、近づくだけで犬に吠えられていたターミネーターだったのに、犬と戯れている姿など見たくないのだ。T2では、そもそも未来のジョンが過去の自分を護るため、ジョンの指示に従う様にT-800を再プログラムして送り込んだという設定だったので、ジョン・コナーと友情が芽生えるのもまだ納得できたが、本作のT-800はそもそもジョンを殺しに来た別個体のターミネーターである。だとすれば、彼は本当に人間との触れ合いの中で自分の意思で改心したという事になり、「1」ではあれだけ会話不能の凶悪なキャラクターだったのに、その設定自体がブレていると思う。本作のシュワルツェネッガー演じるT-800は、T2以降の「善良感」を維持したい為に、明らかに作品世界観の足を引っ張っているのだ。


アクションシーンも、シュワルツェネッガーが全く動けないので仕方ないだろうが、現代のレベルのアクションシーンとしてはお粗末だと言わざるを得ない。逆にマッケンジー・デイビィスが活躍する前半は、それなりに楽しめるのだが、「デッド・プール」を手掛けたティム・ミラーでさえこうなってしまうのかと驚きを隠せない。とにかく続編ありきのシナリオで、「みんなT2が好きなんだから、おんなじ話をもう一度やればいいんじゃない?」という意志しか伝わってこない残念な凡作だと感じた本作。アメリカの興行的にもかなり厳しいらしく、80から90年代にかけて、ハリウッドのブロックバスター超大作だった「ターミネーター」も、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーの加齢と共に、過去の遺産になったと思わざるを得ない。本作によってジョン・コナーが死んだ事で「T2」の価値すら下げた感のある「ニュー・フェイト」は、シリーズ再起動どころか遂に「ターミネーター」シリーズに終止符を打つ作品になってしまったと思う。