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映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」ネタバレ感想&解説

「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」を観た。

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スター・ウォーズ 最後のジェダイ」で賛否両論を巻き起こしたライアン・ジョンソン監督が、次に選んだ題材はなんとミステリーだ。アガサ・クリスティーに捧げて執筆したという、ライアン監督のオリジナル脚本は、92回アカデミー脚本賞にノミネートされ高評価を得ている。主演は「007」シリーズのダニエル・クレイグ、「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンス、「ブレードランナー2049」のアナ・デ・アルマス、そしてクリストファー・プラマージェイミー・リー・カーティスといった豪華キャストが顔をそろえている。今回もネタバレありなので、ご注意を。

 

監督:ライアン・ジョンソン

出演:ダニエル・クレイグクリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、クリストファー・プラマー

日本公開:2020年

 

あらすじ

世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが彼の豪邸で開かれた。その翌朝、ハーランが遺体となって発見され、依頼を受けた名探偵ブノワ・ブランは、事件の調査を進めていく。莫大な資産を抱えるハーランの子どもたちとその家族、家政婦、専属看護師と、屋敷にいた全員が事件の第一容疑者となったことから、裕福な家族の裏側に隠れたさまざまな人間関係があぶりだされていく。

 

感想&解説

推理ミステリーのジャンルに「Who done it」=「誰がやったか?」という、犯人当てにフォーカスしたジャンルがある。いわゆる雪の山荘などに登場人物たちが閉じ込められると、そこで殺人事件が起こるといった定番展開のアレだ。個人的にミステリーは好きなジャンルで、様々な推理小説を読んできたが、本作に「本格推理もの」に代表される、奇想天外なトリックやガチガチのロジック、意外な犯人や動機といった面白さを求めるとガッカリしてしてしまうだろう。本作はもっとライトに、アガサ・クリスティ原作の「名探偵ポワロ」や、コナン・ドイル原作の「シャーロック・ホームズ」が描いた、探偵とクセモノ揃いの登場人物、古風で奇抜なお屋敷といった「ミステリーの世界観」を楽しむくらいの気持ちで鑑賞した方がいい。


なぜなら本作は、いわゆる殺人事件の真犯人当てでは無くて、中盤で既に死因はハーランの自殺と明白だし、その自殺の動機もアナ・デ・アルマスが演じる家政婦マルタの投薬ミスを庇うためであり、マルタが疑われなかったのは、ハーランが推理作家というスキルを活かして、彼女の為にアリバイ工作を指示したからだと描かれるからだ。さらに、マルタの「嘘をつくと吐き気を催してしまうため、真実しか語れない」という設定が、あまりに荒唐無稽過ぎて、本格推理ものを期待していると興を削がれる。


では、本作が何故アカデミー脚本賞にノミネートされるほど評価されているかと言えば、これは現実の「移民問題」を上手くこのミステリーの中に忍ばせているからである。マルタはウルグアイ系移民なのだが、金持ちのハーラン亡き後、その遺産が誰の手に渡るかとその息子や娘たちが固唾を飲んで、弁護士が語る遺言書に耳を傾ける。すると父の遺産が自分たちではなく、なんとマルタに相続されることが分かる。途端に以前は優しかった家族たちが態度を豹変させ、マルタを脅迫し相続を放棄させようとしてくるのだ。


本作の主題はある意味で、この移民VSアメリカの遺産相続をめぐるパワーゲームだとも言える。そもそもこの家族は移民に対して差別意識があることが描かれていたが、移民である家政婦が遺産という力を持った途端に、徒党を組んで潰そうとする家族たちはまさに現代のトランプ政権=「アメリカ」を象徴していると思う。だからこそ、ラストシーンのマルタが家のベランダから「MY HOUSE」のコーヒーカップを持ちながら、家族たちを見下ろすシーンには強いカタルシスが生まれている。


主演のダニエル・クレイグを筆頭に、クリス・エヴァンスやアナ・デ・アルマスなど、役者陣はすべて魅力的キャラクターを演じていたし、映画の構成や伏線の張り方なども上手い。総じて、悪くない作品だとは思うが、個人的にはもっと本格サスペンスを期待していただけに、そこは不満だった本作。せっかく名探偵ブノワ・ブランという魅力的なキャラクターが生まれたので、次回作ではもっと本格ミステリーファンを唸らせる作品を期待したい。

採点:6.0(10点満点)