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映画「炎のデス・ポリス」ネタバレ考察&解説 タイトルのC級感とは裏腹に、しっかり脚本の練られたハイクオリティな娯楽映画!女優アレクシス・ラウダーにも注目を!

「炎のデス・ポリス」を観た。

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監督は「NARC ナーク」「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」のジョー・カーナハンジョー・カーナハンは監督と脚本の両方を手掛け、エンタメ色の強い映画を作るクリエイターという印象だが、本作もまさにその延長線上にある作品だった。砂漠地帯の警察署という、ほとんどワンシチュエーションの中で殺し屋、詐欺師、サイコパス、女性警官という4人の攻防を描いていく。出演は「300 スリーハンドレッド」「エンド・オブ・ホワイトハウス」のジェラルド・バトラー、「THE GREY 凍える太陽」「ブラック アンド ブルー」のフランク・グリロ、「フロントランナー」「ハロウィン」のトビー・ハス、「ブラック・パンサー」「トゥモロー・ウォー」のアレクシス・ラウダーなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ジョー・カーナハン
出演:ジェラルド・バトラーフランク・グリロ、トビー・ハス、アレクシス・ラウダー
日本公開:2022年

 

あらすじ

ある夜、砂漠地帯にたたずむ小さな警察署に、暴力沙汰を起こした詐欺師テディが連行されてくる。マフィアのボスに命を狙われているテディは、避難するためにわざと逮捕されたのだ。しかし、マフィアに雇われた殺し屋ボブが泥酔した男に成りすまして留置所に入り込んだ。新人警官ヴァレリーの活躍によってボブのテディ抹殺計画は阻止されるが、さらなる刺客としてサイコパスのアンソニーが現れ、署員を次々と血祭りにあげていく。大惨事となった小さな警察署で、孤立無援のヴァレリーと裏社会に生きる3人の男たちによる殺し合いが繰り広げられる。

 

 

感想&解説

それにしても、この「炎のデス・ポリス」という日本語タイトルは、どうにかならなかったのだろうか。原題の「Copshop」もイマイチ意味がわからないが、この「炎のデス・ポリス」という酷いタイトルで、かなり観客を限定してしまっている気がする。"C級コメディアクション感"が半端ないのだ。よって個人的には特に注目していない作品だったが、2020年の「コンティニュー」に続くジョー・カーナハン監督の新作という事と、ジェラルド・バトラーフランク・グリロ出演という事を予告で知り鑑賞してきたが、これは”もらい物”の最高に楽しいアクション・サスペンスだった。決して、単純なドンパチだけのアクション映画ではなく、キャラクターの魅力やストーリーの意外性も用意された、ハイクオリティのエンタメ映画だ。これはスルーするのは勿体ない。107分と上映時間も適度だし、素直に面白い映画だったと思う。

まずメインキャラクターの4人がとても良い。ジェラルド・バトラーが主演で他の俳優は脇役かと思いきや、実はまったくそうではなくそれぞれに見せ場があり、むしろ個人的にはジェラルド・バトラーの印象が一番薄いくらいだ。特に若手女性警官ヴァレリーを演じたアレクシス・ラウダーが素晴らしい。過去に「ブラック・パンサー」や「トゥモロー・ウォー」に出演していたようだが、ほとんど記憶にないため小さな役だったのだろう。今作では紅一点、得体のしれない殺し屋たちと戦い続ける意志の強い警官として、激しいアクションシーンから銃撃戦まで、全編見せ場だらけだ。彼女はこれから人気女優になるのではないだろうか。銃の練習は大変だったようで、家にも銃のレプリカを持ち帰り、日常生活の中でも常にレプリカを手にして慣れるようにしたとインタビューに応えているが、その甲斐あって本作のヴァレリーという女性キャラクターは、非常にカッコ良く演出されている。

 

他にもトビー・ハス演じる、殺人鬼「アンソニー・ラム」が最高だ。レクター役のアンソニー・ホプキンスと「羊たちの沈黙」のタイトルを組み合わせた、ふざけた名前のサイコパスなのだが、ニヤニヤしながら躊躇なくサブマシンガンをぶっ放し、警察官たちを、残らず血祭りにあげていく。一見、ただのくたびれたオジサンなのだが、目の表情が異常に怖いのだ。悪徳警官にハンマーで壁を崩させる場面で、「男の憧れである、マイティ・ソーのようにハンマーを振れ」と言うシーンがあるが、「キャプテン・アメリカ」シリーズに出演していた、フランク・グリロへの目配せかなと深読みしてしまった。また突然裏声で歌い出すシーンがあり「いい声だ」と褒められていたが、ラストでもう一回この曲がかかり、実はカーティス・メイフィールドのマネだった事が解るシーンは笑ってしまった。カーティス・メイフィールドは独特のファルセットボイスが特徴の、60~70年代に活躍したアメリカのソウルシンガーだが、本作では73年の映画「スーパーフライ」のサントラとしてリリースされたアルバムから、「Freddie's Dead (Theme From Superfly)」が、ラストでも特徴的に使われている。

 

 

上記のカーティス・メイフィールドの「スーパーフライ」からも示唆されているが、警察署の中、孤立無援状態で戦う白人囚人と黒人警察官といえば、76年の「ジョン・カーペンター要塞警察」からの影響だろうし、オープニング曲は73年「ダーティハリー2」のテーマ曲と同じだ。タイトルのクレジットフォントや画面の色調からも70年代作品へのオマージュを強く感じる。ジョー・カーナハン監督は現在1969年生まれの53歳ということで、リアルタイムではないにせよ70年代作品からの影響は大きいのだろう。とにかく本作は、”良きアメリカ娯楽映画”を観たという満足感が高い。これは脚本とキャラクター設定が上手いからだと思う。最初に思っていたキャラクターの印象から、終盤に映画が進んでいくにしたがって観客の思惑を裏切っていき、誰が途中で死ぬのか?誰が最後まで生き残るのか?の予想がつかない。せっかく手当てして生き残ったキャラクターでも、10分後には撃たれて死んでいたりするから、観ていて気が抜けないのである。

 

ここからネタバレになるが、冒頭に話題に出ていた同僚警官の”娘への誕生日プレゼント”がラストで役に立ったりと、ベタながらも押さえるところは押さえられた展開だし、ラストの語り過ぎないけど明確なエンディングの切れ味も良い。ジョー・カーナハン監督作の中では、やはり「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」がもっとも人気・知名度共に高い作品だったと思うし、作風もあの作品に近いとは感じるが、個人的には本作がぶっちぎりで、監督の最高傑作だと思う。上映館も少ないし、劇場の客入りからもすぐに上映終了してしまう予感しかないが、配信やソフトでも良いので映画ファンにはぜひ観て欲しい一作だ。そして、短く刈り上げたヘアスタイルが最高にカッコ良かった、アレクシス・ラウダーの今後の活躍にもぜひ期待したい。

7.5点(10点満点)

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