映画を観て音楽を聴いて、感想を書くブログ

会社員バンドマンが綴る、映画と音楽のブログです。過去の名作から、新作まで綴っていこうと思います。音楽についても書くかもしれません。

「プリズナーズ」を観た

プリズナーズ」を観た。

f:id:teraniht:20161001121615j:plain

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

日本公開:2014年

 

新進気鋭のカナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの傑作である。特にサスペンス/スリラーが好きな方には強くオススメだ。脚本のクオリティが高く、153分と長尺な映画ではあるが全く飽きさせない。テーマが子供の誘拐事件だし、全体的に宗教色が強いのでダークで重い作品だが、後味は悪くない。「灼熱の魂」や「ボーダーライン」の完成度といい、ドゥニ・ヴィルヌーヴは今後絶対に注目するべき監督だと思う。

 

あらすじ

ある年の感謝祭。近所で親しくしている黒人一家のバーチ家と感謝祭を祝おうと、彼らの家に訪れた白人一家のドーヴァー家。楽しい時も過ぎ、気が付けば長い時間が経っていた。だが、少し前に外出したはずの末娘の姿が見えない。近所の為、先に帰宅でもしているだろうと家に帰ってみても娘たちの姿はなかった。長男が怪しい白い車が停まっていた事を思い出すと、すぐさま父親のケラーは警察に連絡する。

 

敏腕刑事ロキの捜査の結果、暗い雨の中すぐにその白い車は見つかる。だが、娘たちの姿はどこにもなく、その車の持ち主アレックス・ジョーンズが容疑者として逮捕される。だが、アレックスは10歳児程度のIQしかない障害者で、満足な取り調べも出来ない。更に証拠となる物証も少なく、事件は暗礁に乗り上げる。

 

父親ケラーとロキ刑事の必死の捜査は続くが時間だけが経過し、あくまで容疑者であったアレックスは証拠不十分で釈放となってしまう。それを知り激昂したケラーは警察署を出るアレックスに歩み寄ると、娘たちの行方を怒鳴りながら尋ねる。すると、アレックスは彼の耳元に誰にも聞こえない声で「彼女たちは大人しく、まったく泣かなかった」と意味深な発言をする。ケラーは彼の発言を聞き、アレックスが真犯人だと確信する。

 

警察にアレックスが犯人だと訴えても、証拠が無い為に事件が進展しない事に業を煮やしたケラーは、遂にある決断をする。アレックスを今は空家となっているケラーの祖父の家で監禁し、暴力によって娘の居場所を吐かせようというのだ。だが暴力を繰り返され、熱湯で攻められても証言しないアレックスに敬虔なクリスチャンであるケラーは、良心の呵責に押し潰されそうになる。

 

一方、事件を追い続けるロキ刑事は、新たな容疑者に辿り着いていた。子供服を買い漁る不審な男テイラーが捜査線上に浮かんできたのだ。早速、男の身辺を調査し家に向かうロキ刑事。そこには、家中の壁に書かれた迷路の絵と血だらけの子供服があり、そこらを蛇が徘徊する異様な空間であった。テイラー緊急逮捕し、取り調べを進めるロキ。子供達の場所を教えると描きだした絵には、不可解な迷路が描かれていた。捜査が進まない焦りから、ロキはテイラーに掴みかかる。だが、その隙に拳銃を奪われて、テイラーに自殺されるという痛恨のミスを犯してしまう。

 

八方ふさがりになったと思われた事件。苦悶し、疲労していくロキ刑事。だがテイラーが描いた迷路の絵と、街で26年前に起こっていた誘拐事件を接点に、事件は思わぬ方向に転がっていく。果たして真犯人は誰なのか?娘たちは、無事に保護されるのか?そして、アレックスと父親ケラーの運命は?

 

感想 

ネタバレ無しの思わせぶりな「あらすじ」である。だが、映画ファンなら観ておいて絶対に損は無い作品なので、オチは是非ご自分で確かめて頂きたい。映画全体に伏線とミスリードが張り巡らされており、ストーリーは時系列と各エピソードが複雑に絡み合うので、若干複雑な構造の映画ではある。だが、解消されない伏線は無いし、真犯人の意外性も含めて鑑賞後の満足感は高いだろう。

 

特に映画冒頭にサラッと説明されるだけの「あるアイテム」によって、終盤で運命が変わるキャラクターが居たりと、脚本の上手さには舌を巻くし、映画のビジュアルも寒々しい田舎町と事件が及ぼす影響を、ダークなトーンで表現していて、本当に気が滅入る(褒め言葉である)

 

映画の雰囲気は、デビッド・フィンチャー監督の95年作品「セブン」に近いかもしれない。作品全体の宗教色、雨、特定出来ない容疑者、画面の暗いトーンなど、スリラー/サスペンス映画の金字塔として名高い、あの作品からの影響は強いだろう。「子供をさらう」という行為によって神と対峙する犯人、フリーメイソンの指輪をはめて犯人を追う刑事ロキ、テイラーの家にいる蛇、拷問を行う度に神に祈りを捧げるケラー。そして、タイトルにある「プリズナーズ」=「囚人達」という複数形の意味。

 

もちろん囚われているのは少女達だけでは無くアレックスもだから、という意味もあるだろう。だが、本当の意味での精神的な拘束から逃れられないのは誰であろうか?映画の最後に現実に刑務所に行くのは誰か?考えるとなかなか深いタイトルだと思う。

 

さて、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の次回作は2017年日本公開で「メッセージ」というSFらしい。監督作だと「複製された男」というシュールレアリズムな作品があったが、その系譜かもしれない。どちらにしても、映画ファンにとっては今後のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作は全て必見だろう。「メッセージ」の次はいよいよ「ブレードランナー」の続編だ。

 

www.teraniht.xyz