映画を観て音楽を聴いて、解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンが綴る、映画ブログです。劇場公開されている新作映画を中心に綴っていこうと思います。

映画「交渉人」ネタバレ感想&解説

「交渉人」を観た。

f:id:teraniht:20200326233103j:image

アメリカではコロナ騒動で新作映画が封切られず、さらに撮影自体もほぼストップしているとの事で、映画業界はかなり厳しい状況に追い込まれているようだ。ここ日本でも、いわゆるブロックバスター大作の公開は軒並み延期されている。昨今は都内でも外出自粛の流れもあるため、今回はオンデマンドなどでいつでも鑑賞できる過去作品の中から、特に僕が好きな作品の紹介をしたい。今回は1999年の公開作品F・ゲーリー・グレイ監督の「交渉人」である。F・ゲーリー・グレイといえば、「ストレイト・アウタ・コンプトン」や「ワイルド・スピード ICE BREAK」など、常に手堅く良作を手掛ける監督というイメージだが、個人的には本作が彼の最高傑作だと思っている。今回もネタバレありで。


監督:F・ゲーリー・グレイ

出演:サミュエル・L・ジャクソンケヴィン・スペイシーデイヴィッド・モース

日本公開:1999年

 

あらすじ

ダニー・ローマンは、シカゴ警察東地区で抜群の腕を持つ人質事件の交渉人。だが年金にからむ汚職と殺人の濡れ衣を着せられたローマンは、内務捜査局のオフィスに乗り込んだ挙句、捜査局員を人質に篭城してしまう。これまでの経験から人質篭城に関してノウハウを知っているローマンは、西地区の凄腕交渉人クリス・セイビアンを窓口役として逆指名する。ローマンの要求はただひとつ、真犯人を探し出せということだった。

 

感想&解説

公開年を確認すると、本作はなんと今から20年以上も前の作品だが、今回改めて観直してみて全く古さを感じない事に驚いた。主演のサミュエル・L・ジャクソンケヴィン・スペイシーの外見はもちろん若いのだが、それが彼らにとってプラスにもマイナスにもなっていない。「若い方がカッコよかった」という感じではなく、ただ単純に若いというだけなのだ。ケヴィン・スペイシーは、2017年の少年へのセクシャルハラスメントによって、今はほとんど活動休止状態だが、サミュエル・L・ジャクソンに関しては「ニック・フューリー」と化した彼が20年前と全く遜色ないのは、良い年の取り方という事なのだろう。そして、20年前の二人は本作でも圧巻の演技を見せている。


ストーリーの大枠としては優秀な交渉人である二人の男が、「ビルに立てこもった誘拐犯」と「人質の救出を担当する交渉人」というそれぞれの立場で対決するというサスペンスである。だが本作が上手いのは、「誘拐犯(サミュエル・L・ジャクソン)」も警察内の横領事件に巻き込まれて、実は無実の罪でハメられているという、多層的なストーリー構造にしているところだ。よって「サミュエル・L・ジャクソンVSケヴィン・スペイシーVS警察組織の戦い」と「警察汚職の真犯人は誰なのか?」の二つが同時進行で絡まり合いながら進んでいく事により、無類の面白さを生んでいる。


更に各キャラクターの設定が素晴らしい。冒頭でサミュエル・L・ジャクソン演じる交渉人ローマンが立てこもり犯と対峙するシーンから、端的にこのローマンが優れた交渉能力を持っており、さらに高潔で愛妻家でもある事が描写される。また、このローマンを救おうとするケヴィン・スペイシー演じるセイビアンも、冒頭で家族思いである事と、交渉人として非常に優秀な男である事が描かれるため、観客は素直にこのローマンとセイビアンの無事を祈れるし、真犯人が捕まることを望む。要はストーリーの構造は凝っているのだが、シンプルにキャラクターに感情移入して楽しめる作りになっているのだ。


このローマンの口を封じようとする警察組織は人質を救出するという名目で、ローマンと彼に誘拐されているニーバウムという男の命を執拗に狙う。この警察側に本当の黒幕がいるのだが、このあたりの演出も上手く、ローマンを最初から敵視しているデイヴィッド・モースが演じる、SWAT隊長のベックという男がきわめて怪しいという演出になっているが、これが巧妙なミスリードになっているし、真犯人が最後に解るという構成とその意外な犯人も素直に楽しい。ラストの展開も、「交渉人」というタイトルらしくツイストの効いた展開で「してやったり感」もある。しかも、ハッピーエンドで気分も良い。総合に非常によくできた脚本だと言えるだろう。


シカゴの高層ビルを借り切って撮影したらしいが、ヘリはバンバン飛ばすし、エキストラや車両の規模もすごいしで、CGに頼らない90年代のバブリーな画作りも今観ると良い。20年前の作品だろうが、映画の面白さに必要な要素がかなりの密度で詰まっている本作は、今の目で観ても十分に楽しめる傑作だと思う。もし、まだ未見の方がいれば、F・ゲーリー・グレイ監督の「交渉人」は強くオススメしたい一作だ。

採点:9.0点(10点満点)