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映画「スクリーム1~4」ネタバレ考察&解説 真犯人当てサスペンス×ホラーの愛すべき定番シリーズ!

「スクリーム1~4」を観た。

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1996年から始まり、現在2011年公開「スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション」の4作目まで公開されているホラーサスペンスシリーズを一気に観た。監督は「サランドラ」や「エルム街の悪夢」などのホラー作家として有名なウェス・クレイヴン。「3」の公開が2000年なので「4」でも11年ぶりの公開、さらに2015年にはドラマ化もされ、なんと2021年には「5」の公開も予定されているという人気シリーズだ。出演はネーヴ・キャンベル、デヴィッド・アークエット、コートニー・コックスなど。今回も全シリーズ通してネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ウェス・クレイヴン

出演:ネーヴ・キャンベル、デヴィッド・アークエット、コートニー・コックス

日本公開:1996~2011年

 

あらすじ

高校生ケイシーとその恋人がマスクをかぶった者によって惨殺されるという事件が起こる。やがて犯人は、ケイシーのクラスメイトで、1年前に母親を殺されていたシドニーに迫る。町には外出禁止令が敷かれ、学生たちは大はしゃぎするが、そんな中を殺人鬼が徘徊。はたしてその正体は?

 

 

感想&解説

いわゆる70~80年代に流行った、「スプラッターホラー」へのオマージュ&セルフパロディ的なコンセプトで、今や超有名なシリーズだろう。ただ、そこに”マスクをした殺人鬼は誰だ?”というサスペンスの要素をうまく入れこんで、どんでん返し的な「意外な犯人」を用意したのが本作の特徴だ。実際にこの「意外な犯人」という要素はシリーズを通じて続いており、毎回ラストの対決では犯人が正体を明かし、動機が語られるというのが”お約束”の展開になっている。この犯人の意外性が、主人公の女の子が単なる殺人鬼から追われるという”普通のホラー映画”との差別化に成功しているのである。

そして、この”フォーマット”がもっとも正しく機能しており完成度が高いのが、やはり96年の一作目「スクリーム」だろう。大まかなあらすじはこんな感じだ。カリフォルニア州にある「ウッズボロー」という町で二人の高校生カップルが、マスクを被った殺人鬼に惨殺されるという事件が発生する。そこから母親を何者かに殺されたという過去を持つ女子高生シドニーとその恋人ビリー、そしてその友人であるテイタムやスチュアートといった、「ウッズボロー高校」の生徒や関係者が次々に殺人鬼に襲われていき、シドニーは女性記者ゲイルや警察官デューイと共に殺人鬼の正体に迫っていくというのがストーリーの概要だ。

 

まず冒頭のドリュー・バリモアが演じるケイシーという女子高生が殺されるシーンから、”ホラー映画あるある”がてんこ盛りで、このあたりはウェス・クレイヴンの真骨頂といった感じだ。間違い電話のふりで語り掛けてくる男が、実はもうケイシーの近くにいて突然襲ってくるという展開から、殺害後に両親に発見される流れまで純粋にホラー映画として良くできている。また劇中でも、「アルコールやドラッグをやると殺される」「セックスすると殺される」「すぐ戻るというセリフは禁句」といった、過去の”ホラー映画における法則”を持ち出して、映画マニア役のキャラクターが禁止事項として解説してくれたりと、かなり映画自体が”メタ構造”になっているのも本シリーズの特徴だ。

 

また「スクリーム」シリーズにおけるすべての主人公はシドニーなのだが、「1~3」における犯人の動機は、この「シドニーの母親」と関連しているのも共通点だ。ただ正直「2」「3」と続くにつれて、脚本の面白さがパワーダウンしているのは否めない。関係のない人間までもどんどんと殺されるのだが、そこに大した理由は存在しておらず、犯人の正体や動機を知っても”驚き”がないのだ。特に「3」における犯人の小物感は半端なかった。その点やはり「1」に関しては「これぞドンデン返し」といった意外性と驚きがあり、犯人の行動にも説得感がある。やはりシリーズ中もっとも完成度の高いストーリーだったと言えるだろう。

 

「2」と「3」は、映画中でも「1」のウッズボロー事件をベースにした、「スタブ」というホラー映画シリーズが作られているという設定になっており、映画の中の住人たちがシドニーをウッズボロー連続殺人事件の生き残りだと認識しているという、「メタ構造化」がさらに進んでいる。「2」の冒頭シーンはこの「スタブ」の試写会で殺人が起こるシーンだし、「3」では「スタブ」シリーズ最新作の「スタブ3」の撮影現場が舞台となり、その監督やキャストたちが「スクリーム3」のメイン登場人物となる。もちろん真犯人もこの中の人物であり、このあたりの「メタ構造化」は、ウェス・クレイヴン監督の94年作品「エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア」を特に彷彿とさせる。

 

そして11年ぶりの仕切り直し作品となる、「スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション」だが、主人公のシドニーも相応に歳を取っているという設定だ。そして当然、「なぜこのゴーストマスクの犯人は殺人を犯しているのか?」「彼らが襲われるのはなぜ?」といった疑問を抱きながら、どんどんと登場人物たちが死んでいくというお約束の展開となる。それでも過去シリーズのキャラクターたちには愛着があるので、生暖かい目で見守るのだが、ほとんど惰性のような展開で、ラスト以外にはあまり見どころがないというのが正直な感想だ。同じくホラーシリーズの「ソウ4」を「薄っぺらい」とディスったり、「ショーン・オブ・ザ・デッド」の一場面が登場したりと映画ネタも相変わらずだが、よりストレートな展開にしてコメディ色を強めた作品というイメージだ。

 

 

ここから「4」のネタバレになるが、ネクスト・ジェネレーション」という事でいよいよ本作で主人公シドニーは死に、準主人公の扱いであるシドニーの”従妹”であるジルがシリーズを引き継ぐのかと思いきや、実はこのジルこそが真犯人という展開は意外性があって良かった。ただ、ある意味でこのオチだけの為の作品だとも言える。悲劇のヒロインである、「あのシドニーの従妹」として扱われることが嫌で、自分こそが事件の被害者になるために企んだ事件だったという、SNS世代の”承認欲求”をテーマにした動機だが、さすがにこれが実の母親まで殺すほどの動機だというのは無理があるだろう。さらにシドニーの最強ぶりには磨きがかかり、いくら”ゴーストマスク”に追いかけられていても、まったく危なげがないのもご愛敬だ。ホラー映画のヒロインとしては、もはや彼女は強すぎるのである。

 

シリーズの産みの親であるウェス・クレイヴンは、残念ながら2015年にこの世を去っているが、続編&リブート作となる予定の最新作「Scream(原題)」は、マット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ギレットのコンビが監督を務め、全米で2022年1月公開予定らしい。しかも主要キャストもそのまま続投しているようだ。いろいろ書いてきたが、「スクリーム」は脚本にユルいところもありつつも、何故か憎めない不思議なシリーズで、その理由はネーヴ・キャンベル、デヴィッド・アークエット、コートニー・コックスといった主要キャストたちの魅力にあると思う。ちなみに個人的に好きな順番としては、1>2>4>3という感じだ。「死霊館」シリーズのようにガチガチの恐怖演出は少ない為、ある程度ホラーが苦手な人でも大丈夫だろう。古き良きサスペンスホラー作品として愛すべきシリーズだと思うので、長く続いてほしいものだ。

6.5点(10点満点)