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映画「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」ネタバレ感想&解説 キャラクターの行動が謎で、前作同様に感情移入出来ない続編!

クワイエット・プレイス 破られた沈黙」を観た。

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”音に反応して人を襲うエイリアン”とある一家との戦いを、エミリー・ブラント主演で描いたスリラーサスペンスの続編「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」が公開となった。前作が2018年の公開だったので約3年ぶりになるが、コロナ禍に劇場公開が延期になっていたことを考えると、かなり早いペースでの続編だと言えるだろう。監督はジョン・クラシンスキーが続投しており現実でもエミリー・ブラントの夫だけあって、本作でも息の合った夫婦役を演じていた。前作は全世界で3億4000万ドルを超える興行収入だったし、エイリアンとの戦いも決着していないので、この続編を期待する声も多かったようだ。今回もネタバレありで感想を書きたい。


監督:ジョン・クラシンスキー

出演:エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプ、キリアン・マーフィ

日本公開:2021年

 

あらすじ

生まれたばかりの赤ん坊と耳の不自由な娘のリーガン、息子のマーカスを連れ、燃えてしまった家に代わる新たな避難場所を探して旅に出たエヴリン。一同は新たな謎と脅威にあふれた外の世界で、いつ泣き出すかわからない赤ん坊を抱えてさまようが、マーカスが罠にかかってしまい、夫の友人だったエメットという男に助けられる。

 

感想&解説

まず一番最初にこれは作品の質とは関係ないのだが、日本の配給会社が付ける「続編モノの邦題全般」に対して、ストーリーとして完全な”続きモノ”であるにも関わらず、なぜ「2」という表記をしないのか?が疑問だ。もちろん続編であることを謳うと、前作を観ていない人が観に来ないからという理由だろうが、原題には「Part2」というタイトルが付いているのだし、本作はそもそも前作を観ていないとストーリーについていけないのだから、そこはちゃんと謳うべきだろう。インディ・ジョーンズ」シリーズのように、いわゆる主人公や世界観だけ踏襲していて続きモノのストーリーでない場合や、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」のように、そもそもが大きなひとつのストーリーを分けて映画化しているパターンなどは良いのだが、本作のような場合にはそこが非常に気になってしまう。特に今年に入って発表となったクリエイティブデザインから、突然「Part2」の表記が取れた気がして、不誠実さを感じてしまう。


また世間の評価とは別に、個人的にあまり相性の良くない作品があるようで、この「クワイエット・プレイス」シリーズはそれにあたるらしい。前作も「音を出したら殺される」という設定のわりには、登場人物の行動の数々が納得いかずにイライラさせられたのと、この”エイリアンに襲われた世界”の設定も細部がユル過ぎて、イマイチ納得感がなく「B級SF」という感じの評価だったのだが、続編である本作もその印象が大きく変わることはなかった。もちろん、前作よりも映画としてのスケールは大きくなってるし、作品世界観の説明は終わっているので冒頭からフルスロットルでエイリアンも登場し、派手な見せ場も多い。だが本作でも登場人物たちの取る行動に必然性がなく、しかもそれが引き金となってピンチに陥るという展開ばかりなので、自業自得感が強くて素直に応援できないのである。


作品の中身の話に移ると、まず映画が始まり「Day1」という表記が出て、エイリアンが地球に現れた日の様子を描いていく。父親のリー、母親エヴリン、聴覚障害を持つ娘リーガン、息子マーカス、それから前作の冒頭で死んでしまうボーの幸せな”普通の生活”が、いきなり壊れていくという描写は引き込まれる。野球場から車に乗り込んで走り出したとたんに突然エイリアンが襲ってくるシーンから、正面のバスに追いかけれつつバックで逆走するシーンの流れはかなりの迫力で、この冒頭一連のシークエンスは相当に良い。このままこのクオリティが続くなら本作はすごい傑作になるなと思いながらスクリーンを観ていると、画面には「Day474」と表示され、まさに前作のラスト直後に時間軸が移る。ここから前作で生き残ったイヴリン、リーガン、そしてマーカスは燃える自宅を出て新しい旅に出るという展開になり、残念ながら映画の勢いも格段に落ちてしまう。


しばらく歩き、鉄工所らしき工場跡地にたどり着く一同。三人は破れたフェンスの穴をくぐって敷地内に入るが、マーカスが足元に仕掛けられていた”トラばさみ”のトラップを踏んでしまい、足に大ケガを負ってしまう。痛みのあまり大声を上げるマーカスにエイリアンが襲い掛かるが、リーガンはポータブルアンプからエイリアンの弱点であるノイズを起こし、イヴリンがショットガンを撃つことで撃退する。工場の中に入るとさらに新しいエイリアンが現れるが、突然登場した”覆面の男”がボイラーに案内することで、彼らは逃げ切ることに成功する。その男は夫リーの友人エメットだったが、家族を亡くした彼は生きる希望を失っていた。マーカスの傷を手当するイヴリンと一同だったが、そこに突然ラジオから「ビヨンド・ザ・シー(海を越えて)」という曲が流れてくる。どうやら他に生存者がいるらしいことが解り、リーガンは曲を発信している島のラジオ局まで行き、ノイズを放送してエイリアンを倒す方法を提案するが、マーカスは危険すぎると反対する。だが一夜明けると、リーガンは家族たちを置いて行動に出ていた。ケガをしているマーカスと赤ん坊の世話があるイヴリンはエメットに、リーガンを連れ戻してほしいと懇願する。


島への途中の道でエイリアンに襲われているリーガンを救出したエメットだったが、リーガンに強い意志に負けて結局ラジオ局のある島まで一緒に行くことになる。さらに工場に残ったイヴリンも、マーカスの足の痛みがひどくなる前に治療薬が必要であることから、マーカスに赤ん坊の世話を任せて単身で町に向かう事にする。だが、その場を離れるなと忠告されていたにも関わらず工場の中を探索していたマーカスは、エメットの妻の死体を見たことで大きな音を出してしまい、エイリアンをおびき寄せてしまう。マーカスは必死でボイラーの中に隠れるが、自らのミスで完全にボイラーのカギがしまってしまい、赤ん坊と共に閉じ込められる。かたやリーガンとエメットは海までたどり着き船で海を渡ろうとしていると、数名の男たちが武器と共に現れリーガンを連れ去ろうとする。エメットの機転によってエイリアンを呼び出すことで、なんとかその場を切り抜けた二人は、船で島に到着するとそこには大きな焚火が起こされ、人々が平和そうに過ごす集落があった。エイリアンは水を渡ることができないという情報を得た二人は、そこで束の間の休息を得る。


ここからネタバレになるが、必要な物資を調達したイヴリンが工場に戻ると、マーカスが呼び出してしまったエイリアンに襲撃される。なんとか攻撃をくぐり抜けて、ボイラーの中で酸欠で気を失っているマーカスを助けるイヴリン。だがエイリアンに致命傷を与えられない為、ボイラーのすぐ外にはエイリアンがいるという危険な状況に置かれてしまう。かたや安息の場であった島にも、船により渡ってきたエイリアンが上陸してしまい、大混乱に陥っていた。島のリーダーが車でエイリアンをおびき出し、一緒にラジオ局まで車を走らせるリーガンとエメット。ラジオ局についた途端にエイリアンによってリーダーは命を落とすが、なんとか放送にノイズを乗せることに成功したリーガンによって、エイリアンの撃退に成功する。そしてボイラーの中でエイリアンに襲われていたイヴリンとマーカスも、ラジオから流れるノイズのおかげでマーカスがエイリアンを銃で撃退し、九死に一生を得たところで映画は終わる。


とにかく前作の最後で、主人公一家は「エイリアンにノイズを聞かせて弱ったところを銃で撃つ」という唯一の撃退方法を知ってしまったので、続編はどうやって映画の緊張感を作るのか?は本作の見所であった。逆に冒頭の「Day1」はその撃退方法を知らないし武装もしていないからこそ、あの緊張感を保てていたのである。ところが本作では、それらを「子供たちの暴走」という一点の要素だけで作り出そうとしているように感じる。耳の不自由なリーガンはなぜ信頼している母親に一切の相談もせずに、単身で島のラジオ局に向かうのか??リーガンは賢い子だという設定だったはずで、耳の不自由なリーガンにとって単独行動がどれほど無謀なことかは、本人も少し考えればわかるだろうし、マーカスがケガをしているという事情はあるが、エメットもこの工場には食料も水もないと言っている為、人のいる可能性のある場所に向かうことに対して大人が反対する理由はないはずなのだ。あそこでのリーガンの単独行動は謎すぎる。


また街に向かったイヴリンに残されたマーカスも赤ん坊を寝かしたとはいえ、なぜか武装もせずに工場内をウロウロして大きな音を出す始末だし、挙句の果てにはボイラーに閉じ込められて酸欠になる展開には、本当にイライラさせられる。ケガをしたら、全く我慢する様子もなく大声でわめき散らすし、子供とはいえ、”音を出したらエイリアンに瞬殺される世界”で、実の家族を二人も殺されて一年以上もサバイブしてきた人間の行動とは、とても思えないのである。終盤の島で車に乗ってエイリアンを誘い出す展開でも、わざわざリーガンを車に乗せるエメットの行動も謎で(なぜ子供をそんな危険に巻き込むの?)と思ったが、そのあとリーガンがラジオ局に行く”展開”を作る為だと解る。とにかくお話にスリルを生む展開のためだけに、本作のキャラクターたちはとんちんかんな行動を取るように見えてしまうのだ。イヴリンが結婚指輪をリーとボーの簡易のお墓に置いていくシーンも、理由が解らずに悩んだ場面だが、まさかイヴリンはエメットとくっ付くつもりなのか?と怪しんでしまったほどだ。


島に向かう船のところにいた男たちはなぜ安全な島に向かわないのか?とか、エイリアンが島に上陸できた件はまさか船を運転してきたの?とか、エイリアンは泳げないということが解っているならもっと人間側ももっと対処の方法あるのでは?とか、侵略されて一年以上も経つのに、エイリアンがノイズに弱いことを本当にこの家族以外知らないって世界はどうなんだ?とか、前作でも思ったが世界中の軍隊は何やってるんだろう?とか、でもどこに行っても電気だけは付いているなとか、本作における「人間側」の様子があまりに描かれないため、作品の世界観が狭く感じてしまう。もちろんあえてこのエミリー・ブラントが演じる、「イヴリンの家族」という小さな単位を物語の中心として描くことをコンセプトにしていることは理解できるが、そろそろこの世界全体がどんな状態なのか?も描いてくれないと、この小さな家族との状況の比較が生まれないため観ている間中いろいろな疑問が浮かんでしまい、それがノイズになるのだ。そもそも前作でも思ったことたが、このエイリアンもなぜ「人間が立てる音だけ」に反応するのか?の設定も曖昧だ。滝の音には集まってこないことに何か理由があるのだろうか??


本作はまた世界中でヒットしているようだし、ラストも完全にブツ切りの展開で終わるため、恐らく三作目があるのだろう。本作ラストの展開は”子供たちの成長”を描きたかったのだと思うが、弱っているエイリアンにとどめを刺したというだけで、正直たいした成長にも繋がっていないように思えてしまう。次作は思い切って10年後の世界くらいにして、完全に戦士として成長したリーガンとマーカスの姿がみたいと思ってしまった。細かいツッコミはこういう作品には無粋だと頭では分かっているのだが、どうしてもキャラに感情移入が出来ず、気持ちが盛り上がらない本シリーズ。ただ映画として「音を出さない」というコンセプト自体は面白いと思うので、個人的にはもう少し素直にストーリーに夢中になれる三作目を期待したい。

4.0点(10点満点)